この想いに鍵をかけて

 


義経と静御膳は


別れた後一生会えなかった


別れてる間二人は


どんな気持ちだったんだろう


好きな人の隣にいれないって


どんなに悲しいんだろう





++++++





─五条大橋─





コナンは一人、五条大橋に来ていた


義経と弁慶に関係がある場所ということで来たのだが、大きな手がかりは何一つ見つからないまま時間だけが過ぎた


残念そうにため息をつき、その場を後にしようとするコナンに影が近づく





「京の五条の橋の上、大の男の弁慶は長い薙刀振り上げて、牛若目掛けて斬りかかる!」





自分に近づいてきた気配と声にコナンは素早く反応し勢い良く飛び上がった


だが、その相手を確認すると顔をひきつらせる





「は・・・服部!?」


「お前とここで会うとは、神さんも洒落たことしてくれるやないけ」


「は?」





意味がわからないという表情で平次を見ていると子供達が駆け寄ってきた


どうやら、その子達からわざわざ竹刀を借りたようでコナンは呆れている





「それよりお前、こんなところで何してんねん?」


「お前こそ何やってんだよ」


「ん?俺は」


「ちょっと、着いてこんといて!!」





突然聞こえた大きな声に二人が視線を向けると揉めている男女の姿が見えた


状況から見て女の方がナンパされているようだ





「ナンパかよ。やっぱ何処にでもいんだな」





呆れたように言うコナンが平次を見ると鋭い目付きをして男女二人を見ている





「おい、服部?」


「・・何で悠がここにおんねん!?」


「は、悠って・・おい!!」





コナンの声すら聞こえていないのだろうか一目散に駆け出す


そんな平次にコナンは目を丸めた





「服部の奴、こんなに離れてんのに良く気が付いたな」





++++++





「ホンマに私急いでんねん!」


「ちょっとだけ付き合ってくれるだけでええよ」


「今日じゃなきゃアカンの?また今度にしてくれへん」


「大丈夫やって!」


「ちょっ・・!!」





しつこい目の前の男に呆れてため息しか出ない


今日は蘭と園子を案内すると約束した日なのだが・・運悪く寝坊してしまった


和葉から電話がきて急いで準備をして出てきたのだが、ここでも運が悪いことに足止めされることになった


今日は厄日か?


こんなにの嫌なことが重なるなんてそうとしか思えない


振り払おうと腕を引くが男と女では力の差があり、びくともしなかった





「ホンマ、いい加減にしてくれへんかな」





余りにもしつこいそいつを私は思い切り睨み付ける


柔道と剣道を得意とする私なのだから、どうにかすることくらい簡単


だが、それをしなかったのは周りにいる人に迷惑をかけてしまうからだ


それなのに、いつまで経っても腕を離そうとしてくれない男


もう、仕方ない


これじゃいつまで経っても和葉達のもとに辿り着けなくなってしまう





「何してんねん」





ふと聞こえた声に振り返るとそこには平次が立っていた


突然の登場に何も言えずに目を丸めていると平次はため息をついた


そして、私の腕を引っ張って自分の背中へと隠す





「悪いけど、こいつは俺の連れや」


「なんや、男連れかい」





平次を睨み舌打ちをしていく男


その言葉を聞いて"ナンパ"と言う文字が頭に浮かんだ


もしかしたら私はナンパされていたのかもしれない


今更気がついたところでどうなるわけでもないが、思わず呆れてしまった





「んで、何でお前がここにおんねん?」


「何でって・・今日は蘭が京都に来る日やから案内したるって約束してたんよ。たぶん新一も来てるはずやで?」





"会いに行かへんの?"というと平次ははぁとため息をついた





「もう会ってるわ、ボケ」


「ボケって・・いきなり何なん!!」


「そのままの意味やろ。お前がボケナスっちゅーことや」


「なんやて!?平次にだけは言われたないわ!!」


「ちょ、やめろよお前ら!!こんな人がいるとこで」





私達の言い合いを止めたのは小さな男の子


その姿を確認して私は苦笑いをした


久しぶりに見た小さな姿に何だか気が抜けたのかもしれい





「なんや、会う約束してたんか」


「偶然や、偶然。工藤がこっち来てるなんて聞いとらんしな」


「あれ?言うてへんかった」


「初耳や。ちなみにお前が京都に来んのも初耳やで」





"そうやったっけ"と苦笑いをする





「それより、久しぶりやなぁ。状況は相変わらずのようやけど」


「・・・うるせェ」





同じ目線になるようにしゃがみこみながらコナン君を見る


視線を反らしてボソッと呟くその姿が凄く可愛くて思わず笑顔になった


中身は高校生だが、外見は小学生なのだ


私は彼の頭を撫でながらニコニコと微笑んだ





「小さくて可愛いなぁ、コナン君は」





コナン君と言うと呆れた表情をする彼


それも可愛いと思ってしまう私は重症かもしれない





「あのなァ・・それより、いいのかよ。今日は悠と会うって蘭が言ってたけど」


「やばっ、忘れてたわ!?」





こんなところで呑気に話している場合じゃなかった


急いでいた目的を思い出して慌てて立ち上がる





「なんや、送ってこうか?」


「あ〜・・ええよ。平次は忙しいやろ」


「は?何の話や」


「隠さなくてもええって!この前も言ったけど今更やん」





そのことに私の言いたいことが伝わったのか、気まずそうな顔をする平次


そんな彼に私は笑うしかなかった





「ほな、またゆっくり話そうな!」





そう言って急いで和葉達のもとへと向かった





私は上手く笑えてたやろか?


平次の初恋相手の話を自分からしておいて、こんなこと言うのもおかしな話やけど・・・





++++++





「おい、服部。何の話だよ」


「いや、あいつが俺が初恋相手を探してるって知っててな」


「初恋!?」





平然と口にする平次にコナンが驚きの声を上げる


それもそのはずだ


なんたって、平次の初恋の話を聞くのは初めてなのだから





「お前が初恋って」


「あんな、俺やて人の子やで?初恋くらいするわ」





そう言ってコナンを見ると、はははと苦笑いをしていた





「8年前の桜が咲いてたころに一回だけ見たんや。手鞠歌を歌う女の子を」





思い出すように話す平次に耳を傾ける





「風が吹いて目を閉じたら居なくなってしもうて、急いで探しに行ったらこれが落ちてたんや。夢みたいな話やけど、ほんまの話なんや。いつかまた、巡り会えるちゃうかと」


「くく・・」


「おい、何わろとんねん!!」


「悪い悪い、続けて」


「京都に来るときはいつも持ち歩いてるんや」





そう言って差し出した物をコナンはまじまじと見つめた





「水晶玉か・・ん、どっかで」


「ホンマか!?誰が同じもん持ってたんか」


「いや。そんで、悠はいいのかよ?」





水晶玉をしまいながら平次は顔を歪めた


平次は、このことを悠には黙っているはずだった


どうしても知られたくなくて隠していたのだが、雑誌のインタビュー記事を悠が見たお陰で全て知られしまったのだ





「悠は、きっと俺が今でもその初恋相手を好きだと思ってんやろな」


「だろうな。あの様子からだと相当誤解してるぜ」


「そうやろ!!でも、あいつは好きなやついてるって和葉が言うてたし・・」


「ってことは、お前は?」


「初恋は初恋や。今は・・・」





浮かない顔をしながら言う平次にコナンは呆れたように笑っていた





++++++





蘭と園子、和葉の三人は清水寺に来ていた


あまりにも綺麗な景色に蘭と園子は京都を満喫している様子





「悠、遅いね」


「まったく、何してんだか。こういうところは変わってないわよねぇ」





まだ来る様子のない悠に園子は愚痴を溢し、それに蘭は苦笑いをしていた


グチグチ言っている園子だが、彼女も悠との再会を楽しみにしているのだ


なかなか会うことの出来ない距離な為に、今日は久々に会う


蘭も園子も早く会いたくてしかたないのだろう


ふと和葉に視線を向けると浮かない顔をしていた


遅刻している悠に怒っているというわけではなさそうで、二人は近づいていく





「和葉ちゃん、服部君と喧嘩でもしたの?」


「・・私やなくて、悠が・・」


「悠?」





より一層暗い顔をする和葉に蘭も園子も首を傾げた





「実は平次、ある事件調べに京都に通ってて・・それに京都には平次の初恋の人がいてんねん!!」





++++++





「雑誌のインタビュー記事!?」


「そう!関西ではめっちゃ人気の雑誌でな。この本で平次初恋について聞かれてて・・」





そう言って雑誌を差し出す和葉


その雑誌には水晶玉を持ちながら笑顔で写っている平次の姿があった





「小学3年生の時に会って、ちょっと年上の女の子・・?」


「そうなんよ!!しかも、その子に纏わる大事な品や言うてこんな写真まで撮らしてんねんで!!」





余程気に入らないのか和葉は声を大にして話をする





「何なの、これ?」


「ただの水晶玉!!その女にもろたんとちゃう?」


「え、和葉ちゃんはその子の事・・」


「知らんよ。会うたことないわ」


「んじゃ、悠は?」


「知ってるわけないやん!!」





園子の質問に更に声を張り上げる和葉


それには蘭も園子も驚き目を丸める





「平次は変なところで鈍感やから悠がどんな気持ちでいるかもまったくわかってないし」


「推理はすごいのにね」





苦笑いをして言う蘭のその言葉に和葉は大きくうなずく





「悠は悠で顔には出さないでいるから、見ててこっちが辛いねん」


「ああ、あの子の悪い癖ね。人にはガツガツ言うくせに自分のことは全部溜め込むの」





腕を組ながら話す園子に誰もが納得した


自分のことは他人事のように流してしまい、辛いことや苦しいことは全て内に溜め込んでしまうのだ


だから、彼女が弱音を吐いたことなど一度もなかった


長い間一緒にいた和葉や蘭ですら聞いたことがない


他人を助けるばかりで自分は一番苦しんでいるなんて悲しすぎるのに


しかも、周りはそのことに気付いているのに本人は気付いていないのだ


無意識に全てを溜め込んでしまうその性格


それが余計に和葉や蘭、園子は辛かった





「平次も会うたんはその時だけみたいで、京都に来るたんびに探してるみたいやから・・」


「それで、水晶玉を写真に・・・」


「もしかしたら、その子が記事を読んで連絡をくれるかもしれないと思って・・」


「ホンマに無神経すぎるやろ?」


「ねぇ、悠と服部君って付き合ってるの?」


「付き合ってないよ」





聞こえたその声はその場にいる三人のものではなく、やっとのことで到着した悠のものだった





「ちょっと、遅いじゃない!?」


「ごめんごめん?」





手を合わせる悠に園子も"まったく"と呆れた


でも、蘭も園子も自然と笑みが溢れていた





「ってか、なんの話してんの。私は別に平次とはなんもあらへんから」


「そんなことないやろ!?だって悠、平次のこと・・・」


「ホンマになんもないって!平次の初恋相手は知らんけど、必死で探してるようやから私は応援してるんやで?」





和葉の隣に腰を下ろすと笑いながら手を振り否定する


その様子に和葉は渋い顔をして悠を睨み付けた





「なんなん?その怪しんでる顔は」


「だって・・・」


「あれ?もしかして、これその頃の服部君?」


「わっ、可愛い」


「わかるわかる!!その頃の平次めっちゃ可愛・・和葉、何か食べよっか?」





雑誌の幼い頃の平次に反応した悠を和葉が目を細めて見つめる


その視線に気が付いた悠は慌てて話を変えるがまったく意味はなかった





「やっぱ、そうやったんか!?」


「今のは違うって!!だって、普通に可愛いいやん、この頃の平次!!」





"な?"と雑誌を指さす悠


それには、和葉も蘭も園子も言葉に詰まる


確かに幼い平次は可愛いいと皆思っているのだ





「でも、悠は平次のこと好きやろ」


「好きやで。もちろん和葉も蘭も園子も好きやし」


「そういう意味やなくて!!」





怒鳴る和葉の隣で悠はのんびりと水を飲んでいる


そのことに和葉はわなわなと震えていた





「ちょ、ちょっと悠」


「ん?なぁに、蘭」


「悠!!」


「ああ、もう分かった!もし仮によ、仮に私が平次を好きだとする」





悠が話し出したことにより、和葉も黙り話に耳を傾ける





「いくら私が大好きだって、平次を想ってたって、平次は違う人を想ってんやで?」





笑いながら話すが、本人以外の人は顔を歪めた


無理に笑っているようで見ていて悲しくなる





「だから、私は何も求めてへん。ただ、友達として一緒にいたいって思う」


「・・・悠」


「あれ、何で蘭がそんな顔してんの!言ったやろ、仮にって」


「でも・・・」





悠の心が苦しそうだから





口には出さなかったが、蘭はそう思っていた


そんな蘭の心情を察してか悠はニコリと笑う





「あー、こんな辛気臭い話はやめ!おばちゃーん、ぜんざい4つ!!大急ぎで頼むな!」





無理に明るくしているような悠を蘭は哀しそうに見つめた


きっと、蘭は一番悠の気持ちに気付いているのかもしれない


会いたくても会えない


想っているのに伝わらない


どちらも苦しくて、悲しい





2011.01.30

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