過去の記憶

あれから、全ての事件を無事に解決することができた


もちろん行方不明だった薬師如来像も見つけ、平次と新一があるべき場所へと返すことに成功


そして、東京へ帰る新一や蘭を見送るために私達は京都駅に集まった





「はい、次は歩美ちゃんどうぞ!」


「わぁーい!」





阿笠博士と共に来た少年探偵団が綾小路警部のシマリスと一緒に遊ぶ姿


その隣には見送りに来た千賀鈴さんや綾小路警部もいて、ものすごく目立ちすれ違う人がチラチラとこちらを見ているような気がした


気になるよな


こんな大人数の軍団が駅にいたら


思わず乾いた笑いがでた





「悠お姉さんも、どうぞ!!」


「え、私もええの?」





歩美ちゃんに向けられた言葉に目を丸めて、綾小路警部へと視線を向けると目があい、首を縦に振った





「かましまへん。いくらでも触ってやってください」


「ホンマですか!?うわぁ、可愛い」





歩美ちゃんから受け取ったシマリスはふわふわしてて、私の体をちょこちょこと動いていた





「もしかして私のこと覚えてくれてるんかな?」


「覚えとりますよ」





独り言のように小さく呟いた私の声に綾小路警部が答えた


まさか返事が返ってくるとは思わなかったから、目をぱちくりさせでえっ゙と言葉をもらす





「久しぶりに会えて嬉しがっとります」


「そっかそっか」





本当にシマリスの気持ちがわかっているのか


それとも私に気をつかってくれているのか分からなかったけど、なんとなく嬉しくなった


゙私も嬉しいよ゙とシマリスに頬を近づけていると、平次が驚いたように声を上げた





「ちょ、待ちや。お前、この警部さんといつから知り合いなん!?」


「うわっ、そんな勢いよく来んでも」


「んなこと言っとらんで、早く教えんかい!!」





あまりの勢いに一歩下がるが、平次の必死な顔に゙なんだこいづと思いながら首を傾げ綾小路警部に視線を送る


なんせ、ずいぶん古い記憶だから私もあやふやなわけで自信がない





「確か、私が小学生のころやったっけな」


「一人で歩いていた悠さんに私が声をかけ、家まで送ったんどす」


「そうそう、たしか私が平次を探しに・・・」


「それやったら、あたし覚えてるで!!」


「わっ!!びっくりしたぁ」





いきなり参加してきた和葉に肩がビクッとした


今までいなかったのに、どこで聞き耳たててたのかと思いながらも彼女の話に耳を傾けた





「小学生の時、悠が平次を捜しに行ったときの帰りやろ?」


「俺?」


「覚えてへんの?京都の親戚の家に遊び行った時、あたしらの仕度が待ちきれんかって、どっか行ってしもうたやろ?」


「ああ、あん時か。覚えてるわ。でも何で悠が?」





何がなんだか分かんない平次は首を傾げながら、目をぱちくりさせていた


覚えているわけないよね


ってか知ってるわけない


結局あのときは平次のこと見つけられなかったわけだし





「私平次のこと探しに神社まで行ったんよ。せやけど、見つからんかったから鞠ついて帰ろうとした時に綾小路警部に会って家まで送ってもろたん」


「神社で、鞠・・?」


「そうや。親戚のおばさんに手鞠歌教えてもろうてん。まるたけえびすにおしおいけ、よめさんろっかくたこにしきってな!」


「ん?嫁さんやのうて姉さんやなかったっけ」


「え、嘘!!私八年近く嫁さんで覚えとったわ」





和葉に指摘されるまで自信満々に歌っていたのが間違ってると気付いた


でも、八年近く歌い続けてきたわけで私的には愛着もわいていて悲しいような、恥ずかしいような複雑な気分





「うわ・・え、何で教えてくれなかったんですか!!綾小路さん、私が歌っててもなんも言わんから」


「いや、悠さんがあまりにも楽しそうに歌ってはって。そやから何も言えなかったんどす」





神社から出たとき偶然あった綾小路さんは親切に小さな私を家まで送り届けてくれた


送ってもらってる最中もシマリスと遊びながら覚えたての手鞠歌を歌っていたわけだが、その時からすでに間違っていて


綾小路さんは気を使ってくれて間違ってるとは言わないでくれたみたいだけど、できればあの時言ってほしかった


おかげで間違いを八年間も貫いてしまったわけだから





「それにしても、平次にも見せてやりたっかたわ」


「ん、何がや?」


「桜や、桜!!花びらが舞っとって、めっちゃ綺麗やってんで?」





大きな桜の木があって、風に揺れて花びらがひらひら舞ってた


その下で私は鞠を付いて歌っていた


また行きたいとは思うけど、これまた記憶があやふやでぼんやりとしか思い出せない





「ん〜、なんて神社やったっけ」


「もしかして、山能寺とちゃうか・・?」


「そや、山能寺!!って、何で平次が知ってんねん?」





不思議で首をかしげていると、平次は驚いたように目を見開いていた


いや、私のほうがびっくりなんだけど


平次にこのことを話したのは今日が初めてで、神社の風景も何も話してないのに


話した事といえば桜が舞っててきれいって事くらいだし


もしかしたら、平次も山能寺の桜見たかったのかもしれない





「平次がいれば三人で桜見ようと思うてたんやで?せっかく着物まで着せてもろたのに」


「ホンマや!悠の着物姿めっちゃ可愛いかってん!!」


「いや、和葉の方が可愛いかったで」





当時のことを思い出しながら、私と和葉は互いに褒めあう


女子特有のやり取りだと思ったけど、本気であの頃の和葉の着物姿は可愛かった


赤い着物に髪を上げて少し化粧をしている


平次がそれを見たらきっと惚れてしまっていただろうと思うほどに可愛かったから





「ちなみに、あたしと悠はお揃いの赤い着物やってんで。あたしは置いてかれて山能寺には行けへんかったけど」


「う・・それは、申し訳ありません」





棘のある言い方に頭を下げる


でも、あの時はどうしても平次に見てもらいたくて、まだ着付けてもらってる和葉を置いて行った


まあ、結局平次は見つからないかったし、和葉には怒られるしで言いことはなかったけど


そんなことを思っていたら平次が私にこれでもかという程の視線を向けていることに気がついた


驚いたような、喜んでいるようなその表情に首を傾げるしかない





「ん?どないしたん平次?」


「・・やっと会えたっちゅうわけか」


「は?」





平次の一言に頭が真っ白になる気がした


2011.05.24

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