みんなに感謝

言いたいことはたくさんある


何で無茶ばかりするのとか


私を守ってくれるのとか


でも、一言だけ言わせて


ありがとう





++++++





警察の人や小五郎のおじさん、蘭に和葉が到着し、事件が解決しようとしている中私はその場から動けずにいた


痛くて、苦しくてたまらない





「あの、悠姉ちゃん・・」





新一がコナンの口調で困ったように私に話しかけてきた


わかるよ


だって、新一が落下するのを抱き留めてから私が地面に座り込み、きつく抱き締めているんだから新一からしたら困ったものだろう


新一がコナンの口調になっていると言うことは蘭や和葉が近くにいるということ


でも、私は新一を放すことができなかった





「くどっ・・コナンくん。そろそろ離れんと」


「平次、子供相手に何をムキになっとんねん」


「む、ムキになんかなってへんわ!とにかく、一旦離れよか」


「えっと、あの・・悠姉ちゃ・・ん?」





新一がかける声が、ぼんやりと聞こえる


いつまでたっても、反応しない私に不思議に思ったのか新一が顔を覗き込んできた





「悠姉ちゃん!!?おい、悠!!」





新一の叫ぶ声に返事をしたくてもできなかった


痛くて、痛くて反応したくても、できない





「どないしたんや!?」


「分からない。でも悠姉ちゃんの様子がおかしいよ」


「おい、悠!!」





平次が私から新一を引き離すと、私は痛みに顔を歪める


そんな私を平次は支えながら、焦りに焦っていた





「悠、大丈」


「・・近づかんといて」


「は・・悠?」


「お願いだから、これ以上近づかないで」





私を支える平次の手を振り払う


振り払われた本人は手を宙に泳がせたまま固まって、傷ついたような瞳で私を見つめていた


それを見たら私まで胸が痛くなって、視線を反らしてしまう





「もう、平次と一緒にいるのは無理や。堪えられへん」


「悠なに言ってんの!服部くんは悠のこと助けに来たんだよ?」





蘭の焦った声に、拳を握る


助けに来たなんてわかってる


─────けど





「助けになんて来んでよかった。そんなこと頼んでへんわ!!」





最低だ


皆が私の為に来てくれたのに


でも、来てほしくなかった


私のせいで傷つく姿が目に浮かんで、そんな姿見たくなくて来ないでと願っていたのに平次は来てしまった





「私は、来るなって言ったやろ!!それなのに何で・・・」





平次が顔を歪める


傷つく彼を見ながら胸が苦しくなる


それでも、止まらなかった





「もう嫌なんよ。平次が傷つくなんて・・堪えられへん」 




私がいるせいで平次が傷つくなら


私が一緒にいたらいけないなら


平次から離れるしかない


今だって体は悲鳴を上げているはずなのに、私に気を使っているのか、強がっているのか平然なフリをしている


でもそれが逆に辛い





「私は、平次の荷物になりたなかった・・なのに、結局足引っ張ってしもうた」





そう言って下を向く


痛くて、痛くてたまらない


傷もそうだけど、何より胸が痛かった


足引っ張って、平次を危険な目にあわせて


私さえいなければ、こんなことにならなかったのに


それなのに・・何で平次は私を守るの


泣かないようにと唇を噛み締めた





「アホか、お前は」





ハァとため息をつく平次に、怖くてぎゅっと目を瞑る





「・・・・・っ」


「誰もお前のこと足手まといなんて思ってへんわ。弱いとか、荷物とか、誰が言ったんや」





優しく私に話す平次に、私は何も言えなくて黙ったまま俯いた





「怪我しようが知ったこっちゃないわ。俺は悠を助けたいと思ったから来ただけやから」


「・・・・・」


「だから」





俯いていた私の頭に優しく平次の手が触れる


ビクッと小さく体が震えた





「近づくななんて・・一緒に入れんなんて言うな」


「!!」





顔を上げ、交わった視線


その視線が、顔が、あまりにも優しくて私の中にあったモヤモヤとしたものが全て消えていくような気がした





「・・・アホやないか」


「な、なんじゃと!?おまっ」


「かっこよすぎるやろ」





目の前でぽかーんとしている平次に私はおかしくて仕方なかった


かっこよすぎるよ


そんなこと言われたら何も言えなくなっちゃうじゃんか


そんな私を見て平次が呆れたように笑うと安心して、忘れていてほしいことを思い出してしまった





「ほな、帰るか」


「ああ・・平次。私、忘れてたんやけど」


「ん、なんや?」


「これ・・・・」


「ちょっ、なあああああ!?」





服を捲ってお腹を見せようとすると、平次は顔を赤くして腕で顔を隠した


いやいや、そうじゃなくて、と思いつつ苦笑いする





「ちょっと、それどうしたん!?」


「・・・・!?」





お腹の傷を見た和葉が声を上げると顔を反らしていた新一と平次がゆっくりと私の方を見る


蘭に至ってはあまりの衝撃に、声も出ていなかった





「っ!?その傷、あの時の傷が悪化したんか!?」


「いや、悪化したんならこんな腫れ方しないよ」


「じゃあ・・・・」





新一の言葉に、まさかという顔で私を見る平次に苦笑いをする





「一回目は平次が襲われ時で、二回目は捕まった時、三回目は・・あの部屋に閉じ込められたときや」


「なっ!やっぱり、殴られとったんか!?」





あの部屋に逃げ込んだときから平次には気付かれていたから、゙やっぱりな゙と平次は額を押さえる


平然と答える私に蘭が顔を歪めて服を下げてくれた


まるで、自分のことのように顔を歪める蘭





「悠、一度病院で見てもらわないと」


「大袈裟やな、蘭は。どうせ内臓に異常はないんやから大丈夫やって・・・でもな、痛くて立てへんのや。蘭、肩貸して?」





呆れたようにため息をつく蘭


京都に来てから、何度その顔を見たことか


ホント、すまんなぁ





「だから、お前はアホなんや」


「はあ!?それ、どういう・・・ぅわ!?」





私がすべて言い終わる前に、平次が私を横抱きにした


いわゆるお姫様抱っこ状態


あまりに突然だったから、反応ができなくて少したってから急に恥ずかしくなった





「ちょ、何すんねん!!下ろして!!」


「暴れんな。落っことすで」


「マジで、重いから!それに、平次怪我しとるんやから無理したらあかんやろ!!」


「こんなん怪我のうちに入らんわ。それに、お前一人くらい楽勝やって」





すたすたと歩く平次に、私は何も言い返せなくて大人しくすることにした


落ちないようにと平次の首に手を回す


あまりにも近い平次との距離


心臓が潰れるんじゃないかと思うほどバクバクと音をたてていた


ちらっと平次の顔を見ると、心なしか赤いような気がした





「・・ったく、あいつ今度会ったらただじゃ済まさへんからな」


「・・・アホ」





ぶつぶつと西条さんの愚痴を呟く平次に、私は小さく笑うしかなかった





2011.03.07

<<>>

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -