謎の男の襲撃

 



守られてばかりじゃなくて


私も守りたい





++++++





不満はあったが大阪に戻る為に平次のバイクに乗り込んだ


ぶつぶつ文句を言いながらも大人しく後ろに乗りながら平次に引っ付いてる





「おまっ、近いすぎるやろ!?」


「掴まらんと落ちてまうやんか!!」


「せやけど、もうちょい離れろや!!」





そんなに私がくっついてるのが嫌ですか?


そう言ってやろうとしたが、脇道から出てきた怪しげなバイクに言葉を飲み込んだ


ヘルメットをしていて顔は見えないけど、男だというのはわかった


不気味と思いつつ、平次がその脇道を通り過ぎるとまるで後を追いかけるかのように後ろについた





「なあ、平次。あの男おかしない?」


「ああ、まるで俺たちをつけてるようや」





平次も不審に思っていたようで、小声で話しながら男をちらっと見る


するとその男は一定の速度になるよう五百円玉をアクセルの溝に挟むと立ち上がった


何をするのかと目を凝らすと手には弓矢が握られていた





「っ!?平次!!」





私が叫んだのと同時に男は矢を放ち、その矢は真っ直ぐに平次のバイクのサイドミラー突き刺さった





「なんやっ!?」





ミラーは粉々に壊れ、私たちの脇を追い越していく一台のバイク


私は狙われてる意味も、あの男が何者なのかも全くわからなかった


でも、平次はそうじゃないようだ


目の前で逃走するバイクを平次は追いかけるようにスピードを上げる


公園に入ると立入禁止のポーンと木材があり、男はその上をまるでジャンプ台のようにして逃げていった





「悠!手ぇ離すなよ!!」


「え、ちょっと待って平次!?」





私の言葉なんて全く聞こえていないかのように、平次は木材の上を通りバイクは高く飛び上がった


突然すぎて叫び声もでない


綺麗に着地すると平次は男の後を追った


これで着地が失敗してたら、平次をぶっ飛ばしていたかもしれない


若干目の前の平次を睨み付けていると、乗り捨ててある男のバイクがあった


平次は素早くバイクから下りた





「悠、お前はここにおれ!!」


「平次!!」





そう叫んで走って行った平次


私は一人残された


ああ、また置いていかれた


何でも一人で解決しようとして私には何も教えてくれない


平次は隠してたけど、私はなんとなく気づいてた


あの頬の怪我はあの男と何かあったからなんじゃないかって


あの男はこの事件の犯人なんじゃないかって


何故平次を襲ってきたのかわからないけど、私は黙ってここにいるだけじゃ駄目だ





「・・・私は、守られてばかりのお姫様やない」






この先に行くのは怖くない


でも平次が危険な目に合うことはとても怖い


だから





「待ってるなんて一言も言ってへんし、約束もしてへんから」





怒らんといてな


私は平次の後を追いかけた


暗い林の中だったが平次の姿はすぐに見つかった


ただ、見つけた平次はピンチで私はとっさに靴を脱いで、靴下に石を数個つめる


そして、平次に迫る能面の男目掛け投げつけた


見事命中し、男ははずみで短刀を地面に落とす





「それ以上平次に近づかんといて!!」


「悠っ、お前・・待っとけって言うたやろっ!」


「説教やったら後にしてや。今はこいつの相手せなあかんから」


「アホっ、早よ逃げんかい!!」


「うっさいわ、ボケ!!」





木に寄りかかりながら座り込む平次の前に立ち、構える


男は今、武器になるものは何も持っていない


生身なら私にだってどうにかできるはずだ





「あんた、誰やねん。何で平次のこと狙うん・・っ!?」





男は私の問いかけに答えないばかりか、構えている私に向かって突っ込んできた


なかなかの腕の持ち主だったが、男だからという性別のハンデがあるからそう見えるだけで目の前の男の型は我流だった


ふと何か違和感があるような気がして、私は顔を歪めた





「・・・あんた、私と会うたことあるやろ」


「・・・!?」


「何、やて・・・?」





私の言葉に男が少しだけ反応した


図星か、ということは・・・





「・・・っう!!」





そんなことを考えたせいで、お腹に一撃食らってしまった


苦しくてお腹を抱え込む





「くっ・・・」


「悠!!!」





平次の声と、男の足音が聞こえる


徐々に近づく男





「おい、悠に手ぇだすな!!お前は俺に用があんやろ!?」





すると、男は私に向かっていた足を止め、平次へと向かって行った


何で私を守ろうとしてんだと叫びたかった


私は痛むお腹を押さえながら立ち上がる





「そんなゆっくりとしてる暇はないで。さっき電話で110番したから、そろそろ刑事さんが到着するはずやで?」





遠くからこちらを照らす明かりに゙ほらな?゙と言うと男は木刀を拾ってその場から逃げ去った


ホッとしたのか、全身から力が抜けていくのがわかった


ふう、と大きく息を吐き急いで平次に駆け寄り背中を支える





「アホっ・・・なんちゅう無茶すんねん」


「それはこっちの台詞や!何で一人で来たん!?平次、ぼろぼろやないか」





痛々しい平次を見ながら、顔を歪めると痛みをこらえてハハハと平次が笑う





「お前こそ、腹と・・足怪我しとるぞ」


「足・・・あ」





そういえば、靴下を投げたせいで私は裸足であることを忘れていた


裸足で動き回れば、そら怪我もするわ


足に滲む血を見て苦笑いを浮かべる





「お前、何処でそんなもん覚えたんや・・恐ろしい女やのうっ」





平次は裸足で血が滲む片足と、その近くに転がる靴下を見て何をしたのか理解し意識を手放した





「平次っ!?」





意識を手放した平次を何度も呼ぶが答えは返ってこない


私は急いで携帯を取り出し救急車を呼ぶ


早く救急車が来てと祈りながら、平次の手を握り締めた





2011.01.30

<<>>

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -