語られた真相

 


何で私は弱いの


何で私は守られてるの


何で私は・・迷惑ばかりかけるの





++++++





私が叫んだと同時に西条さんは電話を切った


そして舌打ちをすると、私の携帯を投げ捨てる





「何をしてんのや!?」


「っぅ!!」





西条さんの仲間の一人が苛立ち、何回目か分からない私のお腹に蹴りを入れる


尋常じゃない痛みに咳込み、意識が飛びそうになった





「げほっげほっ・・ふざけんなや」





蚊の鳴くような小さな声で呟きながら、必死に痛みに耐えた


何で、毎回毎回同じところを殴るのか


しかも、狙ってるかのように的確に同じところだなんて


あまりにも痛くて、声を出すことも出来なかった


出そうとすれば傷が電撃のように痛みを発するから





「大丈夫や、奴なら必ず来る。お前が何をしても無駄や」





西条さんはそう言って勝ち誇ったように笑い、部下に命じて私に再び目隠しをした





「っあんたの、思い通りには・・ならんで・・?」


「それはどうやろなぁ?」





不適に笑う西条さんに、不安が込み上げてきた





平次・・・ホンマ、来たらあかんよ


お願いだから


もう傷ついて欲しくないから


・・・来ないで





ぎゅっと強く目を閉じて、涙が出そうになるのをこらえた






「時間になるまで、大人しくしとくんやな」





西条さんは仲間を連れて部屋から出ていった





++++++





「本当に何処行っちゃったんだろう、あの二人」


「まったく、まだ怪我治ってへんのに。悠も電話に出ぇへんし」





病室から抜け出した平次とコナンを探して仏光寺に来た蘭達だが、二人は見つからず、悠とも連絡が取れずにいた


さすがに何かあったのではないかと、蘭は心配になって顔を歪める





「あれ?これって・・・」



「ん?玉龍寺?」




蘭が仏光寺の入り口で立ち止まると石碑があり、そこには『玉龍寺跡』と書かれていた





「もしかしたら、2人ともここにいるのかも」


「でも・・あ、すみません!この玉龍寺、今何処にあるかわかります?」


「鞍馬山の奥の方ですよ。けど、随分前に廃寺になったって聞いてますけど・・・」





通りすがりの親子にお礼を言うと、蘭と和葉は顔を見合わせた





「蘭ちゃん、どうする?」


「私行ってみるよ。和葉ちゃんは一度山能寺戻ってみて?もしかしたら帰ってるかもしれない」


「わかった。あたしはこっちで悠探して見るから、蘭ちゃん気ぃつけてな!!」




蘭は玉龍寺へ、和葉は山能寺へと向かった


まさか玉龍寺に悠までいるとは知らずに・・・





++++++





「時間や」





扉が開く音と、西条さんの声が聞こえた


どうやら約束の時間になったらしく、目隠しをされたまま私は腕を引っ張られて立たされる


随分荒々しく捕まれて、勢いよく引っ張るものだからお腹の傷が痛んで私は顔を歪めるが、西条さんも仲間の人たちも誰一人としてそのことには気づかなかった





「(・・・マジで、痛いねんって)」





声を出すことも出来なくて、心の中で訴えることしか出来なかった


外に出ると目隠しを取られる


日もすっかり沈み山の奥にあるこの場所は薄暗かった


私は後ろ手に縛られ、その腕を西条さんに掴まれているが、そんなことよりも傷が痛んでしかたない





「・・・遅いな」


「・・罠やとわかってて、そう簡単に・・来るわけないやろ」





傷の痛さでかすれた声を出す


今はこれが精一杯


だが、そんな私の様子の変化に気づかず西条さんは鼻で笑った




「そうかな。臆病風に吹かれたのかもしれへんやろ?」





こいつはアホだ


平次はお前が思ってるほど弱くもなければ、臆するなんてこともない


でも、今回だけは平次が臆病風に吹かれてほしくってたまらない


あれ程の怪我を負って、安静にしていなければいけないはずなのに、こんな所に来て怪我なんてしたら


私のせいで、平次が・・・死んでしまったら


私は唇を噛み締めて願うしかなかった


どうか来ないで


私のために・・・傷つかないで





「・・・来たか」


「っ!?」





人影がひとつ、門を潜り真っすぐ歩いて来る


後ろで笑っている西条さんとは反対に、私は苦しくて苦しくてしかたなかった


なんで来てしまったんだ


殺されるかもしれないのに


なんで、たった一人で来たの





「てめえ、悠に手ぇ出してねぇやろな!」





・・・・ん?





平次の声を聞いて、違和感を感じた私はぎゅっと瞑った目を開けて彼を見る


平次だけど、平次じゃない


確信できる何かがあるわけじゃないけど、目の前の彼が平次ではないと言える自信はあった


ずっと平次だけを見てきたから、それだけは分かる


あの人は平次じゃない





「だ、大丈夫やで・・っ」


「悠?」


「大丈夫やっ!」





本当は大丈夫なんかじゃなくて、お腹の傷がズキズキと痛んで、今にも倒れてしまいそうだった


目の前の彼も私の様子に気づいたみたいだが、心配かけまいと"大丈夫"を押し通した





「あんたがほんとに欲しかったのは、これやろ?この水晶玉を取り戻すために、あんたは昨日この山で俺を襲ったんや!失敗したみてぇやけどな」


「!?」





平次が隠していたことはこれだったんだと理解した


この男に・・・西条さんに襲われて、それを私に言わなかった


全部一人で解決しようとして、私を事件から遠ざけて


知らない間に怪我をしている平次に心配で、不安でしかたないのに


平次は私や和葉に心配かけまいと秘密にして・・・


私は、守られてばかりだ





「そうやろ、西条大河さん!・・・いや、武蔵坊弁慶と言ったほうがええかもな」


「・・・流石は浪花の高校生探偵服部平次やな」 




そういって能面を外す西条さん





「あんさんといい、お嬢ちゃんといい・・・ホンマに頭の回るやっちゃな」


「なんやて・・・?」


「嬢ちゃんには、会うた瞬間にばれてもうたがな」


「くっ・・・!!」





私の腕をつかむ力を強める西条さん


目の前の彼も、まさか私が犯人の正体に気づいていたとは思わなかったようで驚いていた






「さあ、もうお喋りは終いや。その水晶玉を渡してもらおうか!!」





西条さんは見せ付けるように私を引き寄せる


私はそんな彼に向かって顔を歪めた





・・・だから、痛いっちゅうねん!!





「渡す代わりに悠を離せ!」


「ええで。仏像の隠し場所、教えてくれたらなぁ?」


「何!?」


「いっ・・・!!」





西条はぐいっと更に私の腕を締め上げた


痛みに耐え切れず声を漏らすと、小さな声は彼にも聞こえたようで一瞬迷ったものの西条の質問に答えた





「この寺ん中だ!」


「何やと!?」


「灯台下暗しって所かな?」


「嘘つけ!この寺はとっくに調べてある!何処にも・・・」


「嘘じゃない!!」





彼の迫力に押された西条さんは押し黙って、数秒探るように彼を見ていたがすぐに私の背を押した





「!?」





振り返ると彼の許へ行くよう促す


怪しく思うが、大人しく彼の言う通りにした


彼のもとへ歩きだすが、おかしいと思った私はバッと勢いよく後ろを振り返る


その後ろでは西条さんがニタリと笑っていた





「悠っ!走れ!!」


「・・・・・っ」 




迫りくる銀の刃に、奥歯を噛み締める


こいつは殺人犯


素直に交渉に従う気なんて、はなっからなかったんだ





「ホンマ、最低な人間やなっ」





私は後ろで腕を縛られているため自由が利かなかったけど、目の前の人物への怒りから蹴り飛ばそうと構える





「バカか、お前は!!」





だけど蹴りとばす前に彼が間一髪で木刀で受け流した





「何やってんだよ、こっちだ!!」





焦ったように怒鳴る彼に連れられて門へと走るが、待ち構えていた西条さんの部下達が行く手を阻む





「俺のかわいい弟子達や・・・お前らは手ぇ出すな!」





西条さんは刀を握り素早く彼に振り上げると木刀は簡単に切られてしまった


彼は私を後ろへ追いやると西条さんの斬撃を必死にかわす


その背中を見て、私は目の前の彼が誰なのかはっきりと分かった


知ってる


この人は・・・・





「っ・・止めて!この人平次とちゃうから・・新一!!」





懐かしい彼の姿に、必死に叫ぶと帽子が薙ぎ払われた


西条さんもようやく彼が平次では無いことに気づき声を荒げる





「だ、誰や!誰なんや、お前は!?」





彼は汗の滲む額を腕で拭うと、その腕をゆっくり下ろして西条さんを見据えた





「工藤新一・・・探偵さ」





2011.02.01

<<>>

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -