夜空を見上げて | ナノ

≪褒美に歓喜したのは誰か≫



放課後。智草は欠伸をしながらトイレから出た。
HRがやけに長く気を失いそうになった。
この後は、明彦とシャガールで勉強会をすることになっている。
普段は図書館でやることが多いが、今から行っても席が空いていないことを見越してだった。

ふと、廊下で大好きな友人を見つける。


「あ、美鶴!」
「智草か。こうして会うのも久々な気がするな」
「美鶴とはクラス違うからなぁ…残念」
「ふふ、私も残念だ」


微笑む姿は美しい。
智草はにっこりと笑って、素直に愛情を伝えた。


「美鶴大好き! あ、ところでどうよ期末テストは」
「もちろん抜かりはない。それは智草だって同じだろう?」
「あはは、でもあまり勉強はしてないからどうだろう」


けれど、神社へはお参りに行ったのだと告げる。
美鶴は懐かしそうに目を細めた。以前、明彦と同じように誘われたことを思い出していたのだ。


「また神社へ行ったのか?」
「うん。今回はアキくんも連れて行ったんだ」
「明彦と…? 意外だな、アイツが神社で神頼みとは」
「あ、でもお参りはしてないよ」
「そうか。アイツらしいな」


頭の固い同じ仲間に苦笑いすら浮かぶ。
それは智草も同じようで、肩をすくめていた。


「だよね。そういえば言い忘れてたけど、この間はお疲れ様。無事に終わった?」
「あの時は悪かったな」
「ぜーんぜん! むしろ美鶴が大変だったでしょ」


生徒会の仕事。宗家としての仕事。色々と多忙な中で、ようやく二人でお茶をする時間を取れたのが数週間前。
だが、当日になって呼び出しを美鶴が食らってしまったのだ。
終わったと連絡が来たのが遅い時間だったため、大分心配をした記憶がある。


「いや、他の方の意見が聴けて勉強になったさ。今のうちにいろいろ学んで、来年にも今後にも活かさなければな」
「あ、生徒会長の件でしょ? その時は私も、生徒会入っちゃおうかな〜なんて」
「ふ、それは心強い」
「ま、冗談だけどね。私にはそういうの向いてないし。でもでも、いろいろ大変な時にはサポートしたいな」


これは紛れもない本心だった。
懸命に前を向き頑張り続ける彼女を、支えてあげたい。
その直向きな想いは、美鶴にも確かに伝わっていた。


「ありがとう、助かる。智草にはいつも世話になっているよ」
「言うほど何もしてないけどね。けど美鶴お嬢様のお手伝いができてるならなにより!」
「礼と言ってはなんだが、今度ウチに来ないか。また君の夕食も食べたいしな」
「え、いいの?」


美鶴と明彦が住んでいる寮への出入りは厳しい。
それは他の寮でも同じことなのだが、ここだけはどうやら特別らしかった。
智草も立ち入ったことは数回しかない。


「あぁ。とはいえ、あまり理由もなくホイホイ呼べる場所じゃないからな。今行っているテストの成績次第……ということにでもしておこうか」
「ふんふん、任せておいて。美鶴と夕食を共にするためにも、残り数日気合入れるから」
「ふ…楽しみにしていよう」
「それじゃ、付け焼刃もしちゃおっかな! また明日ね、美鶴!」
「あぁ、帰りは気を付けろよ」
「そっちこそ!」


今回は神社へ神頼みをして、後は時の運に委ねようとしていたのだがそうも言っていられない。
智草はうきうきとしながら真田と合流をした。すると、既に美鶴から連絡がいっていたらしい。


「聞いたぞ、智草。テスト終わりは夕食を振る舞ってくれるそうじゃないか」
「一応、成績次第ってことにはなってるけどね」
「お前に関してはその心配はしてないさ。俺もご馳走になっても構わないか?」
「もちろん。2人の為に作るんだから、むしろ食べてくれないと困る!」
「そうだ、買い物に行く時には声をかけてくれ」
「荷物持ってくれるの?」
「作ってもらう身だしな。それぐらいはするさ」
「ん、ありがとう!」
「あぁ」


ふ、と思い出す。
昔はあの寮に三人がいたけれど、今はその三人目が別の人物なのだ。


「そう言えば、岳羽さんもいるんだよね。どうしよう、一緒に食べてくれるかな?」
「声を掛けてみる。無理強いはしないぞ」
「分かってますー! これを機会に仲良くなれたらいいなぁ」

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