夜空を見上げて | ナノ

≪雨天決行≫



  真田ショートドラマrain後(荒垣参戦後〜)

「せっかく制服着たのに、学校休みかぁ……」


窓を叩きつける雨がうるさい。
連絡網で学校近くの水道管が破裂し近くが氾濫。
よって学校が休みになったのだが……。


「……急に休みになると暇だなぁ。本屋にでも行って何か買う? ん〜…こんな雨風酷い中で外に出るのはなぁ……っひゃ!」


ガタンッと大きく窓が揺れた。
素直に体が反応してしまう。


「っ…びっくりしたぁ…もう、この音本当に心臓に悪い」


――ワンワンッ


「ん? 犬の鳴き声……?」


――キューン……
――わーったから落ちつけ、大丈夫だ
――ワンッ


「…え、この声!!」


窓を開ければ勢いよく雨風が入ってきた。
暗い雲の下、視界には傘もささずに歩く長身の男子と白い犬が……見覚えしかない。


「シンちゃん!? コロちゃん!?」
「! おま、なんで…」
「ワンッ!!」
「なんでこんな天気に外出てるのよ!! ほら、こっちおいで!」
「あー別にいい。ただ散歩してただけだ」
「こんな天気で散歩する馬鹿がどこにいますか! コロちゃんも、家の中の方が温かいからおいで」
「ワンッ!」
「あ、コロお前…!!」
「玄関そっちだから、今行くね」


玄関から迎えた長身はあまりにも濡れていた。
コートを脱がせ、着替えを渡そうとしたがこれは断られる。
コロマルは激しく身を震わせ、一気に玄関まで大雨になった。


「…まったく、びしょ濡れじゃないの…」
「お前、学校どうした」
「この天気でしょ? 見事に休講になった」
「休講……こりゃ、出てきて正解だったな」
「え?」
「いや…少しアキのやつと今朝話しててな。説教が長引きそうなんで出てきただけだ」
「アキくんと? というか、珍しいね。シンちゃんって朝苦手じゃなかったっけ?」
「…アイツに起こされたんだよ、ったく」


思い出したのか。真次郎の眉間に深いしわが寄った。
また口喧嘩でもしたんだろう。智草にとっては、呆れることもなく喜びだった。
昔に戻ったような。


「キューン…」
「ああごめん! 寒いよね。…はい、タオル。今拭いてあげるから、じっとしててね」
「ワンッ!」
「んもう、言ったしりから暴れないの! シンちゃんもこれで拭いて」
「ん? あぁ、悪ィ」


後で話は聞ける。
智草は足りなくなったバスタオルを奥から引っ張ってきた。
ある程度落ち着くと、ホットドリンクを差し出す。


「それにしても酷い天気……」
「そういえば、お前も雷苦手だったよな」
「う……だって、凄い音するんだもの。コロちゃんだって嫌だよね? 雷」
「ワンワンッ!!」
「ふふ、だよね〜…よーしよし」
「キュ〜ン…」
「んー可愛いなぁ、もう…!」
「コロマルも満更じゃねーって顔だな」
「ワンッ!」


も、というのはどういうことなのか。
早速なので今朝の話も含めて聞こうとすると、自分のお腹が鳴った。
コロマルは首を傾げ、真次郎は笑いをこらえている。
智草はむっと口を尖らせた。


「そういえばご飯食べた?」
「あー…いや、そういやまだだったな。コンビニで買おうとしてたんだが……」
「せっかくだし何か作るから、寛いでて」
「おい、コロマルの飯はどうすんだ?」
「ふふ、実はあるんだよね〜…」
「は? …なんでお前ん家に犬の飯があるんだよ…」


呆れた真次郎に、智草は得意げにほほ笑む。


「よくコロちゃんと遊ぶから! で、コロちゃんのお友だちとも遊ぶから!」
「ワンッ!!」
「あー…そういうことかよ。ったく、親御さんに迷惑かけんじゃねぇぞ」
「はいはい分かってますよ。んーとパスタでい?」
「俺も手伝う」
「え、いいよそんな」
「いいんだよ、俺がしたいだけだ」
「…ありがとう」
「おぅ」


二人でキッチンに並ぶ。
スパゲッティとサラダを作ることに落ち着き、鍋を取り出した。


「ね、シンちゃん」
「あ?」
「……私、今凄く嬉しいよ」
「んだ、突然」
「シンちゃんがいて、アキくんも美鶴もいて。今年は可愛い後輩たちといっぱい知り合いになれて、嬉しい。……このまま、一緒だよね?」
「……一生変わらねェものなんかねぇだろ」
「そう?私は一生大好きだよ、シンちゃんのこと」
「ばっ……何言ってんだテメェは」


料理なんて手慣れているはずが、鍋から水を溢れさせた。
智草は成功したと言わんばかりに口元を緩める。


「ふふ、そういう反応大好き!」
「…っち」
「ワンッ!」
「あぁごめんねコロちゃん! 忘れてなんかないからね」
「ワンワンッ!」


それから、他愛のない話をしながら手を進めていく。
今朝の明彦との話を聞いても、きちんと答えてはくれなかった。
ただ、昔の話をしていたらしい。


「あ、オイ。茹ですぎじゃねーか?」
「っとと、大変。…ソースはー?」
「できてる」
「さすが! 今度別の料理教えてね、シンちゃん」
「……いつか、な」
「ん?」
「いや…ほら、さっさと皿寄越せ」
「はいはい。どーぞ」


自分で作るよりも、艶がある。


「コロの飯は?」
「大丈夫、もう用意してあ…って、コロちゃん食べるの早い! ストップ!」
「クゥーン……」
「コロ、もう少し待て」
「ワンッ!」
「んもう…さ、こっちで一緒に食べようね」
「ワンッワンッ!」


料理をリビングへと運んでいく。
ほかほかの湯気が、外の悪天候を忘れるほど身を癒した。


「そうだ、美味しいクッキーの作り方教えてよ」
「は? 誰だって作れるだろ」
「シンママのクッキーを伝授してほしいの!
「シンママ言うな。…ったく、アキにでも送ってやるのか?」
「アキくん以外にもね、寮の皆に作ろうと思って。仲良くなれたお近づきの印っていうのかな?」
「…お人好しもほどほどにしとけよ」


シンちゃんには言われたくないけどね。
と、いいかけて口を閉ざしたそんなお昼時。

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