夜空を見上げて | ナノ

≪09/19(土) 理解を否定する≫



「……ゴメン」
「だから謝る必要はないと言ってるだろ。好きで来たんだ、気にするな」
「でも、……」


翌日、昨夜の言葉通り酷い天候のなかで、明彦は智草の家を訪れていた。
もちろん、ビショ濡れ状態である。
タオルではどうもならないくらいだったので、風呂に入ってもらったのだが……


「で、なぜさっきから目を合わせない」
「……別に…」
「?」


上半身だけ裸は、そろそろやめて頂きたい。
智草は父親のシャツを明彦へと押し付けた。


「っそういえば課題やった?」
「課題? あぁ、化学のレポートか。それなら昨夜のうちに終わらせたな」
「そ、そっか…!」
「なんだ、まだ終わってないのか?」
「えと…そう、そうなんだ〜! 最後の考察がイマイチ分からなくってさ!」
「あれなら――」


嘘なのだが。
智草は目を泳がせながら、自身の頬へと手を当てた。熱く火照っているのが分かる。

明彦の試合で見たことはあるが、自分の部屋で、近場で、明彦の上半身を見ると恥ずかしさが込み上げてきていた。
鍛えられた筋肉、身体に残された傷が男の子だと自覚せざるを得ない。


「…おい、聞いてるのか?」
「え、あ、うん…!」
「まさかお前まで風邪引いたというんじゃないだろうな?」
「え? 誰か風邪引いたの?」
「あぁ、ウチのリー……有里がな。寝込んでる」
「湊くんが?! …大丈夫かな……」


校内でも顔を合わせるし、今ではバイト仲間でもある。
頑張り屋さんの彼が体調を崩しても可笑しくはないが、こんな天気に可哀そうだと、智草は心配した。
そんな彼女の横顔を、明彦が黙って見つめる。


「……お前、いつのまに…」
「ん?」
「……いや……」
「どうかした? アキくんまで、風邪じゃないよね?」
「風邪に負ける俺ではない。ところで智草の方こそ――」
「私は大丈夫だから!!」
「そ…そうか…?」
「うん、だから、えっと、…ここ!」
「あぁ、…そこはだな――」


既に終わっている課題をもう一度何故やっているのか。
けれど、これをやらないと間が持たない。
智草は明彦に教わりながらペンを走らせ、課題を再度終わらせた。


「そろそろお昼ご飯の時間だね。何か食べようか」
「いいのか、ご馳走になって」
「当然でしょ? せっかく来てくれたのに、何も出さないわけがないじゃない」
「悪いな」
「ううん。それにこの間シンちゃんに料理教えてもらってね?
 その成果を、早く誰かに食べてもらいたいんだよね〜!」
「…そうか」


智草は立ちあがって、大きく身体を伸ばす。
材料は事前に買っていたため、後は教えてもらった通りに作るだけだった。


「私キッチン行くけど、アキくんはどうする?」
「もう少し、ここにいていいか?」
「いいよー。見られて困るものもないしね」

「シンジに料理を…か。今までだってあったことじゃないか。なんで俺はこんなに、苛ついてるんだ? なんでこんなに焦ってる……?」

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