夜空を見上げて | ナノ

≪08/06(木) 覚悟の拳≫



>巌戸台北外れ

地下施設へと潜り込み、明彦たちは謎の男たちと遭遇した後、施設内部で閉じ込められた。
同時にそれは大型のシャドウが動き出す始まりで、リーダーである有里を中心に歩を進める。


「オイ有里」
「はい?」
「今回のシャドウ戦は俺を連れて行ってくれ」


湊は静かに明彦の視線を見据える。
常々好戦的で力強い瞳をしているが、今日は何かが違っていることくらい容易に受け止められた。


「今夜だけは誰にも譲れん。もしもメンバーに外すと言っても、俺は単独でも行くぞ」
「……分かりました」
「すまないな」


断る必要はない。理由を聞くこともしなかった。
明彦は口元を微かに緩めて小さく礼を告げる。
前の前にシャドウが出現し、二人で駆け出した。


「ねえ。今日の真田先輩いつもと様子違くない?」
「だよなだよな! ゆかりッチもそう思う?」
「順平ですら気づいてるってことは、よほどね…」
「ちょ、それ酷い!!」


目の前のシャドウを撃破する。
よし、と気合を入れる背後から気配が近づいた。


「――明彦」
「美鶴。悪いが反論を聞くつもりはないぜ」
「いや、むしろお前が行かなければ征伐を下すところだ。……有里。悪いが私も加えてくれ。今夜の戦い、私たちには特別意味がある大事な一戦なんだ」
「分かりました。そしたら今日は僕と先輩方2人、後は……」
「はいはいはーい! 俺ッチが頑張っちゃおうかな!」
「アンタは足引っ張るだけでしょ」
「さっきから扱い酷くね!?」


大型シャドウの気配が近づいてきている。
周辺に沸くシャドウも確実に強くなっているが、これを感じさせない程に明彦と美鶴の働きはいつも以上に躍動していた。
なんのバフも掛けていないのに、やけに攻撃力が高く集中力も増している。

むしろどこか――


「なんか先輩たち、怖くない…?」
「有里くんが浮いてる気もしますよね……」
「つか順平がマジで役に立ってないよ」
「シャドウの攻撃によって転倒しているであります」


まさに目の前のシャドウを、明彦の拳が貫いた。


「にしても、なんでまたこんなに気合入ってるんだろ。コンディションが絶好調なのかな?」
「でも真田先輩、昨日まで風邪気味でしたよ?」
「……うーん。さっきの男たちに腹立ってとか?」
「心拍数より、怒りに満ちた行動ではないであります」
「ま、先輩方があれだけ気合入ってれば今夜は楽勝かもね」
「ですね。私もサポート頑張ります!」


更に地下へと進んでいく。
風花が確実に大型シャドウの気配を察していた。
地面にくっきりと残るキャタピラの跡を踏む。


「明彦、先に言っておくが」
「なんだ」
「私たちがシャドウを撃破したとしても、彼女の母親の状態が必ず治るとは言い難い。良くても口が利ける程度かもしれないということを、念頭に置いとけ」
「分かっているさ。だが少しでもいいんだ。アイツの顔を見て、例え喋れなくても口を開いてくれれば」
「……そうだな」


≪これが、キャタピラの跡の正体!?≫


「よし、行くぞ!」
「任せろ! 遅れるなよ、お前たち!」
「了解」
「はっ、はいっす!」


――待ってろ…絶対にコイツを、倒す!

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