TOX2 | ナノ

XILLIA2

23▽ 情報屋を尋ねて

海から囁く漣の声に、流れてくる潮風。
心地良いこの港で男と何かと対話をしていた。


「ふむふむ、束縛される生活に嫌気がさし、自由を求めて旅に出たと……。気持ちは分かるが、浮世の風は冷たいぞ……。」


男、イバルは首を静かに横に振る。
視線の先には――


「ナントカ三世としゃべってる!」
「うわっ! そのコ捕まえて!」
「えぇっ!?」
「にゃぁああ!」


既に逃げていくユリウス(猫)の姿。


「あ〜ぁ……。」
「…はぁ……。」
「…………うっ、」


流れるのは、あまりにも気まずい雰囲気。


「あ〜あ、せっかくチャンスだったのに〜!」
「レイアが逃がしたからでしょ?」
「また探そうよ。」


落胆するレイアを宥める一方で、イバルが新たな武器をルドガーに手渡していた。
なんでも、「猫もまっしぐらに逃げ出す新装備」……とのこと。
ルドガーの手におさまったのは、ハンマーだ。これもクラン社の支給品なのだろう。
私は一度も使ったことはないが、使い手によれば結構イイらしい。


「使い方は、分かっているんだろうな!」
「ナマエは使ったことあるか?」
「ううん、ない。」
「俺に聞け! 俺に!!」
「とりあえずイバルにぶつけちゃってみて。」
「大丈夫かな……?」
「彼、頑丈だから。」


分かった、と素直に頷くルドガーがなんというか可愛らしい。
彼はそのままハンマーを握りしめると、イバルに思いっきり一叩き。


「うぐッ!?」


彼は懐を抑えて、自らの武器をしまった。
その顔は歪みに歪んでいる。


「き、基本はわかったようだが、ひとつ言っておく……街中で、遠慮なく振り回すな!」
「ふふん。」
「まったく、人の迷惑を考えろ……。」


今のルドガーの顔が、すごくいい笑顔。
ナイススマイル、ルドガー。そう肩を叩くと、満足気に頷かれる。


「新しく武器手に入ったのは良いけど、猫どうする?」
「逃げられちゃったよね……。」


次は人から猫捜しか――この間の地獄の5日でも猫捜し続けたんだけど。
文句は言っていられない、やるか。と、気合を入れると思わず声があがった。


「俺が捕まえといてやるよ。ここで商談の約束もあるし。」
「アルヴィン、得意そうですもんね。」
「どんなイメージだよ? あ、ティポをエサにすればすぐ捕まるかもな。」
「いやー!」
「どーしてそういうこと言うんですか!」
「じゃあ二人でお願い!」


むっ、とするエリーゼと悪戯に笑みを浮かべるアルヴィンとの間にレイアが割り込む。
うん。ティポの顔が本気で涙ぐんでいる。涙、流れるのだろうか?


「いいですけど……ティポをエサにはしないですよ。」
「分かってるよ。したら、行こうぜ。」
「そっちは任せたよアルヴィン、エリーゼ。」
「ぼくもいるぞー!」
「ん、ティポもね。」


そしたら、猫捜索は任せますか。
なんだかんだ上手くやってくれるだろう。


「そしたら私たちはドヴォールに行こ。」


私たちはドヴォール行きの列車に乗り込んだ。
そんなに遠くはない。少し雑談していればつく距離だ。
列車に揺られて、向かい合うように座る。


「それにしても、ナマエと会えるなんてびっくりだよ!」
「ナマエ、いっつも皆に会うたびおどろかれてる……。」
「だって、一度も連絡無いんだもん。ナコルからの手紙にくっついてるんじゃないかなって何度も確認しちゃった!」
「あぁ、それ分かる。僕もそうだったし。」
「……ねえ、」
「言わないでエル。分かってるから。」


もう、何か凄く申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
ルドガーまで眉を下げているじゃない。伝染病なのこれ?


「ね、ナコルって人もジュードたちの友だち?」
「そうだよ。」
「へー……もしかして、会えたりするのかな?」
「ナァ?」


こてん、と首をかしげるエルにルル。
同じことを思っているのか分からないけど、あまりに動作が一緒でちょっと笑ってしまう。


「会える会える! エル、気になるの?」
「べ、別に! ジュードたち、オモシロイ友だちたくさんいるから……。」
「ナコルは、いいお兄さんって感じの人だよ! 明るくて、面白いし。」
「ふぅん。その人が、レイアのトクベツなの?」


エル、結局はそれなのね。


「え? 確かに特別な仲間だけど?」
「じゃー、ナマエのトクベツ?」
「エル、話を引きずるね。」
「まあね!」


胸張って言うことでもないんだけど……。


「で、どーなの?」


助けを求めようとジュード君を見ると、にこにこ表情。
ダメだと判断してルドガーを見ると、そわそわした態度。
どうなってるの、これ。なんで誰も助けてくれようとしないの。


「ナコルは、……トクベツだよ。」
「おおっ!」
「!」
「!?」
「でも、エルのいう恋人って意味じゃなくて、友だち…親友……? なんていうか、ナコルがいなかったら今の私はいないから、そういう意味でトクベツ。」
「……?」


エルは腕を組んで、上体をサイドに反らした。
体全身で疑問をぶつけているようだ。


「難しい? でも、エルにも分かる日が来ると思う。」
「ん〜そうなのかな?」
「そうだよ。ね、レイア。」
「え? うんっ!」
「ふーん……じゃあ、できたら教えてあげる、トクベツに!」
「本当? 嬉しいわ、ありがとうエル。」


ふふん、と上機嫌なエルの頭をそっと撫でて、小さな小窓から景色を眺める。
青々とした海が見えるマクスバードの姿はなく、住宅街が並ぶドヴォールの街並みが流れて行った。
「まもなくドヴォール。ドヴォールです。」とアナウンスがそれを告げ、降車の準備をした。


「僕は、どうなんだろう……。」
「ジュード? どうかしたの?」
「な、なんでもないよ、レイア。」
「ね。あれからナマエと進展は――」
「……うっ。」
「うん、言わなくていいや、やっぱり!」


(ドヴォールなんて、ナコルに会ったきりだな。)
(まだ、いるのかなぁ。)




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