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XILLIA2

22▽ 新聞記者 レイア

――交商特区 マクスバード

一定金額を返済し、遂にマクスバードへの通行許可が下りた。
ここではユリウスさんを執拗に探っている人物がいるという。
さすがに一人の人物を捜すとなると大変だろう……と、いうことで。


「うっし、したら捜すか。」
「はい。早く見つけましょうね。」
「ねー!」


アルヴィンとエリーゼも同行してくれることに。
心強いと私たちは頷きあい、エレン港へと出た。

海が広がり、以前まで当然のように存在していた断外殻が消えている。
綺麗な水平線だ。


「なんか変な人がいるー!」
「え?」
「……ははは……。」


エルがいち早く、それらしい人物を見つけたようだ。
積み上げられた荷物の傍にしゃがみ込んでいる黄色い衣服を着た女性、だろうか。
静かに近づくと、突然ジュード君が分かりやすく苦笑し出すから謎の既視感が生まれる。
ルドガーとエルがその人物に近づくと、その人は気が付いて立ち上がった。


「あ! 怪しい者じゃないですよ!?」


それは羞恥に顔を染めて弁解している――


「……何してるの、レイア?」
「ジュード!?」
「レイア!」
「よっ、久しぶり!」
「エリーゼ! アルヴィンも!」
「ティポもいるよー!」


まさかの、レイアの姿。
彼女もまたエレンピオス独特の衣装に身を包んでいる。
ベレー帽がちょっとしたアクセントになっていて、とても愛らしい。


「久しぶり、レイア。」
「えぇっ!? ナマエ〜!?」
「うん。」
「やだ、生きてたの? 久しぶり〜もう全ッ然連絡無いから心配してたよー!」
「あ、はは……ごめん。うん、その件に関してはごめん。」


なんで皆して「生きてたの」なの。
会うたびに言われるその言葉に苦笑すると、下方から何とも言えない視線が届いた。


「……ナマエ、これ、なんどめ?」
「……そうみたい。」
「そろそろ連絡してあげなよー。」
「ごもっともです。」


 にゃぁぁ……


「……?」
「ネコと遊んでるの?」


どうやら、レイアのしゃがみこんでいた先に、荷物と荷物の間にネコが隠れているらしい。


「じゃなくて、事情があって、あの子を捕まえなきゃならないの。」
「レイア、新聞記者になったんじゃなかったっけ?」
「だから、事情があるんだってば!」
「俺が捕まえてやるよ。」


あら、頼もしい。
ルドガーはそっと近づく……が、


「あ痛ッ!」
「結構、手ごわくって。」


引っかかれた手の甲を抑えながら、ルドガーが一歩身を引く。
苦戦しちゃうかな、と思いきやゆらりと小さな影が揺れた。
猫が、自分から出てきたのだ。


「ネコ、でてきたよ……?」
「! ユリウス、ゲットー!」


ユリウス!?
えぇ、これが?


「そ。この子の名前。ユリウス・ニャンスタンティン三世。」
「名前長い……。」
「ユリウス……。」
「ニャンスタンティン三世。ずっと捜してたんだよ〜。」
「ユリウスを捜す人物って、レイアだったのか……。」


うわぁ、まったくユリウスさんと関係ない。
このユリウス・ニャンスタ…ニャンス……とかそもそも猫だったし。


「こんなオチとか……クラン社の情報、あてにならなくね?」
「……まさか猫だったとは、誰も、思わないよ。」


そんな私たちの落胆も露知らず、レイアは嬉しそうに猫を抱きかかえている。
どうやら、彼女の勤め先会社のスポンサーが飼っている猫だという。

レイアにとってルドガーたちは初めまして、の人物だ。
ジュード君が軽く紹介をしてくれた。レイアもまた、快くそれに応える。


「よろしくね。わたし、レイア・ロランド。」
「レイアって……ジュードが電話してたオサナナジミ?」
「そ。ジュードの幼馴染。」
「カノジョじゃない人……。」
「?」
「な、なんでもない!」


エルもやっぱりお年頃なのだろうか。
私も彼女に会ったときにはそういう関係なのか問われたし。


「ねえ、」
「ん?」


エルに衣服を引っ張られ、彼女の視線に合わせてしゃがむ。
すると懸命に背伸びをしながら、私の耳に内緒話をするよう寄ってきた。


「結局ジュードのトクベツな人って、ナマエなの?」
「はっ!?」
「?、どうしたのナマエさん?」
「ナマエ、声大きい!」


いやいやいや、今するような話?


「その話は保留です、エル!」
「え〜、前もごまかしたでしょ!」
「エルにはまだ早いよ。」
「はやくないですーっ!」
「……二人とも、何してるの。」


ジュード君が困惑したような表情でこちらを見る。
いつもは同じくらいの目線に立って彼を見ているが……。
こうして下から見ると……、改めて端正な顔立ちをしているなと思う。
肌も、綺麗だし。目も可愛らしくくりっとしているし。


「…………。」
「ナマエさん?」
「なぁにジュード君に見惚れてんの、おたくは。」
「ちが……。とにかく、なんでもない。」
「そう?」


にたりとするアルヴィンを小突いて、立ち上がる。
そんな私たちの様子を見ていたレイアがエルに目をつけて、じっと見た後、ルドガーに視線を移した。


「あなたの妹さん?」
「似たようなものかな。」
「似てないですー。エルとルドガーは、キンセン的な関係だし。」
「ええっ!?」
「ち、違う、そういう意味合いじゃなくって……!」
「?」


エルの度肝抜く発言に初対面のレイアはもちろん、私たちですら驚く。
凄いな、この子。恐ろしい発言をする。


「レイアは、ネコを捕まえる人?」
「ちーがーうー! 新聞記者! 真実を追求する誇りある仕事なんだから。」
「ねえ、レイア。この間の列車テロの新しい情報、何か掴んでない?」


記者なら、私たちが知らない情報を持っているかもしれない。
そう思い訊ねてみる。


「あの事件は謎だらけだよね。クランスピア社のエリート、ユリウス・ウィル・クルスニクが指名手配されて……」


そこで、気付いたようだ。


「ユリウス……クルスニク!? また面倒に巻き込まれてる?」
「かなりー。」
「大事件っぽいです。」
「でも、ルドガーは――」
「わかってる。ジュードの友だちなんだもんね。行こ!」
「行くって?」
「ドヴォール。腕利きの情報屋を知ってるの。わたしの顔で、繋ぎつけてあげる。」
「レイア、頼もしー!」


新聞記者か。
ここで新しい道と、繋がりを、レイアは見つけたんだ。
エルの言葉通り、頼もしくなっているその成長ぶりに、心が高鳴った。

でも、


「……あれ? さっきのネコさんは?」
「しまった、逃げられたぁぁっ! せっかく捕まえたのにぃ〜!」


こういうところは、変わってなくてほっと一安心。


(あれ)
(あの後ろ姿って……)




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