TOX2 | ナノ

XILLIA2

19▽ オシゴトハイリマシタ

以前の列車テロやヘリオボーグでのテロは、毎日のようにニュースで報道されていた。
後者は明確にアルクノアだと原因の種を明らかにしているが、目的は定かとされていない。
アルヴィンが言うには、テロそのものを起こすことに意味があるのだというが。
ここのところ、やけに頻度が高いのが気になるところだ。


「さて、今日はギガント辺りを討伐する?」
「え!?」
「なにその驚いた顔。」


そして今日も今日とて、ルドガーの借金返済に向けてクエストを受け付けている。
私は常にルドガーと共に行動しているが、ジュード君たちはそうもいかない。
自分たちの予定が空いている時に協力してくれる、という形になっていた。

そして今日はエリーゼが予定あるらしく、彼女を除いたメンバーだ。


「でも、確かにイケるぜ。俺らなら。」
「うん。喜んでいいのか分からないけど、感覚掴んできてるし。」
「唯一の難点があるとすれば、エリーゼの精霊術がないことだけど……。」
「ま、大丈夫だろ。」


幹旋所にてクエストを捜しながら、今日の狙いを決める。
新しくヴェウィンドアイというギガントモンスターが登録されていた。
で、私としてはこれにいきたいところだ。


「でも、強いんじゃないのか?」
「そりゃねぇ。」
「その分報酬も他よりいいよ。ルドガーは嫌なの?」
「嫌って言うか……、大丈夫かなとは。」


士気の無い声でそう言えば、ジュード君が「普通ならそうだよね」と苦笑いを浮かべる。
んー、そうなのかな?


「元はと言えば、ナマエさんが行きたいだけでしょう?」
「あれ、バレた?」
「えぇ!?」
「こんなのとたたかいたいのー!?」
「ナァ……!」


ルドガーの信じられないと言わんばかりの目に、私は一瞬可笑しいのかと錯覚してしまう。


「ナマエさん、変に戦いたがるもんね。」
「ある意味、俺らの中じゃ一番の戦闘狂かもな。」
「戦闘狂って失礼な。そこまでじゃないでしょ。ただ、いろいろ発散したいだけだよ。」
「発散……。」
「それで、どうする? 行かないなら行かないで、私はいいんだけど。」


そうルドガーに言えば、しばし考える仕草を見せた。
やはりまだ、自信が持てていないのかもしれない。
けれどルドガーならギガントモンスターも討伐できると思うんだけど。
私たちもいるし、ね。


「そーいえば思ったんだけどさ。」
「どうしたの、エル?」
「ナマエって、お仕事いーの?」


エルがリュックの持ち手を握りながら、小首をかしげる。
その言葉にジュード君も気付いたように視線を向けた。


「前にビズリーさんから仕事、貰ったんだっけ?」
「は? ビズリーってあのクランスピア社の? なに、もしかしてあそこ勤めてんのお前!?」
「まあね。その仕事は大丈夫、きちんとやれてるから。」
「ホント?」
「本当。」


仕事って言っても、ルドガーの傍についてるのがもはや仕事というか。
ルドガーは着々と強くなってるし、何を目的かは知らないけどビズリー(社長)の要望には叶えられているはずだ。


「マジかよ。クラン社なんてエリートが入る場所だぞ。」
「まーアルヴィンに比べればエリートだからねぇ。」
「あれ凄いムカついてきた。」
「ふふ。」


まあ、入社までにはちょっといざこざあったけど。


「本当に大丈夫か? 毎日付き合ってもらってるんだが……。」
「平気、平気。別に仕事が入れば連絡が――」


 〜♪ 〜♪


「…………。」
「出よっか、GHS。」
「はい。」


タイミングがいいのか、悪いのか。私のGHSがその場に響く。
誰だろうなと思いながら、画面を見ずに通信を繋げると。


『今すぐ来い仕事だありがたく思え。』


ブチッ つー…つー…つー…


「…………。」
「どーかしたの?」
「顔、怖いことになってんぞ。」
「いや……ごめん、ちょっと社に行かなくちゃ。」
「仕事?」
「みたい。」


忘れもしない、久々に聞いたあの声……!
あまりにも無遠慮な呼び出しに、思わずGHSを持つ手に力が入ってしまった。


「ごめん。ギガントはまた今度、私がいる時で。」
「やっぱりただお前が討ちたいだけなんだろ。」
「悪い? ちょっと強い方が好きなの。じゃ、ごめんね!」
「あっ……気を付けてね、 ナマエさん!」


ジュード君ってば心配そうな顔しちゃって可愛いなぁ。
彼らに小さく手を振って、クラン社へと駆け出す。

社内に入り担当している管轄エリアに入れば、上司が仁王立ちしていた。
相変わらずのしかめっ面だ。この人確か子どもいたよね。これじゃあ泣いちゃうよ。


「やっと来たか。お前がビズリー社長から直々に任を言い渡されているのは聞いている。」
「仕事とはなんでしょう。」
「だがお前には通常通りの任を与えていいとも聞いている。」
「……はぁ。」
「と、いうわけで頼んだぞ。」


え。
……え?!


「ちょっと待ってください。まさか仕事って――!」
「そこの書類に全部書いてある。」
「……うそー。」
「エージェントだろ、やってみせろ。」


掌を目いっぱい広げた程の厚さ。
ドン、と私のデスクに置かれた存在感を放つ紙束。


「……鬼畜か。」
「頑張ってくださいね、ナマエさん。」
「手伝ってくれる?」
「それはちょっと。」


酷い。
同僚に肩を叩かれ、デスクにコーヒーが置かれる。
思わず、ため息が漏れた。これを一人でやれ、と。


「部門長、ユリウスさんのこともあって機嫌悪くて。」
「なんで。あの人嫌ってるじゃない。」
「嫌味ばっか言う人ですけど、なんだかんだ気に入ってたんですよ。」
「なにそれ、好きな子苛めたいタイプ?」
「そうみたいです。ナマエさんも、なんだかんだ気に入られているんですよ?」
「嬉しいような嬉しくないような。こんな愛の鞭はいらないかなぁ。」
「ふふ、頑張ってくださいな。」


別の同僚からはこそりと耳打ちされる。
仕方がない、やるかー。


「アルクノアの目撃情報。ルサル街道での魔物討伐。あっ、タタール冥穴でギガント目撃情報あり、確認されたし……! あー、……え、なにこの猫出没保護せよって。管轄違うじゃない。」
「黙ってやれ、阿呆が。」
「はいはーい。」


これは……、報告書のことも考えたら一週間はルドガーの相手できないな。
何か動きがあったときだけ連絡貰うって形をとるのが懸命か。

紙を一枚一枚捲りながら思考していると、デスクに茶封筒が置かれた。
少し厚みのあるそれ。思わず顔をあげると仏頂面の上司が。


「これは?」
「ビズリー社長からお前に特別報酬だそうだ。」
「特別報酬ですか。」
「それとヘリオボーグでのテロ鎮静化もそこに入ってる。ありがたく受け取れ。」
「ど、どうも。」


どうしてその鎮静化したのを知っているのかを、知りたいんだけど……。
それ「も」ってことは、それ以外はルドガーを強くしたらの件に関して?
ちょっとちょっと、何を基準に判断しているんだか。

でも、ありがたく頂いておこう。


「ありがとうございます。」
「その仕事は5日以内に終わらせとけよ。」
「はい!? ちょっと、それはさすがに……!」
「これも社長命令だ。できなければ今後の特別報酬はナシ、だそうだ。」
「な……!」


あ、あんの男……!
やけに封筒に厚みがあるなと思ったら、そういうことか!


「せいぜい頑張ることだな。残業代は出さんぞ。」
「分かりましたよ。やります、やります!」


こりゃ5日間朝から晩まで働き詰めだ。
そっと、ルドガーと念のためジュード君のGHSに暫く参戦不可の旨を伝えておいた。


(『無理するなよ、俺なら大丈夫。』か。)
(あ『エルも平気だって。頑張れってさ。』……エル可愛いなぁ。)
(ん? 『手伝えることあったら言ってね。ご飯はきちんと食べること!』)
(じゅ、ジュード君らしいと言えばらしい。)
(アルヴィンまで……『二人のテンション低いぞオイどうしろってんだ。』)

(……は?)




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