TOX2 | ナノ

XILLIA2

17▽ 源霊匣の暴走

歩くたびにふんわりと揺れる髪。そしてスカート。
うーん、エリーゼがいるだけでやっぱり違うよね、雰囲気が。


「ふふっ、」
「どうしたの、エリーゼ。なんだか嬉しそう。」
「はい。またナマエと一緒に戦えるだなんて思わなくって、」
「嬉しいんだー!」
「だとさ。人気者だねぇオネーサンは。」


……あはは。


「本当に何も連絡無いから、ドロッセルも心配してましたよ!」
「その件についてはすみませんでした。」
「なんかジュードの時といい、アルヴィンの時といい、ナマエって案外だらしない。」
「うッ、」


エルが容赦ない。
なんか、ルドガーの気持ちがちょっと分かるような。


「でっ、でもこうして会えて良かったです!」
「ジュードとも一緒だったんだねー!」
「あはは……僕も会ったばかりだけど。」
「…………。」
「…………。」
「ごめんって、いや本当に。」


冷たい視線が痛い。
もしかして私、皆と再会したらその度に言われるんじゃないよね?


「それにしてもエリーゼ、凄く可愛くなったね。」
「あ。話逸らした。」


エルが的確についてくる。
凄い。なんだろう。辛い。


「お洋服も、可愛い。」
「それ俺も思った。趣味変わったな?」
「エレンピオス旅行のためにって、ドロッセルが買ってくれたんです。」
「リボンは、学校の仲良しみんなでお揃いにしたんだー。」
「へぇ。」


ジュード君の言っていた通り、上手くやっているみたいで良かった。
エリーゼは、アルヴィンを商人なのに怪しげだと言ったけれど、相方と正反対にしているらしい。
お人好しの相方……誰だろう。私の知っている人なのだろうか?


「ティポ、また一緒なんだね。」
「うん。しばらくしまわれてたけどー。」
「親善旅行で友だちとヌイグルミを見せあっこするって約束したんです。」
「僕のかわいさを、みんなに知ってもらいたいんだよー♪」
「え!?」


……ルドガー、今の本当に心の底からの疑問って声だった。
言ってしまったな。


「ティポは可愛い、ですよ?」
「ね♪」
「…………。」


じっと見つめ合う、ティポとルドガー。
どことなくティポがじわじわとルドガーに迫っていた。
至近距離になると、慌てたようにルドガーが言葉を紡ぐ。


「可愛いよ! 特に角が、」
「あ、それ違……!」
「角じゃなくて、耳です……。」


ジュード君の制止も間に合わず、見事にルドガーは地雷を踏んだ。
見る見るうちにエリーゼの表情に陰りが生まれる。


「やわらかさがウリの僕に、ツノとかー……。」
「僕も前に、同じこと言っちゃったんだよ。」
「くくく、ホント、似た者同士だな。」
「ナァー……。」
「どんまい、ルドガー。」


ぽん、と彼の方に手を置けば、ルドガーは項垂れた。
仕方がない。

会話を弾ませながら研究所内を進んで行く。
エレベーターはなぜか10階までしか使えず、ここからは徒歩だ。
なんか、こんなこと前もあったような気がする。


「あっちこっちで騒ぎおこしやがって。アルクノアどもも、よくやるよ。」
「本当、勘弁してほしいわ。」
「せっかく故郷に帰れたのに、なんで戦うんでしょう……?」
「帰ってみたら居場所がなかった――そんな奴らが多いんだよ。」
「20年という歳月は、長いもんね……。」


子どもは大人になり、大人は更に老けていく。
時代の移り変わりが生じて、文明だって変化する。
昔あったものが平気でない。物だけじゃなくて、繋がりまでも。
……辛いな。


「現実逃避のために、リーゼ・マクシアと和平を進めるエレンピオス政府を憎む。不幸を他人のせいにして、後ろ向きに生きる方が楽だからな、実際。」
「それだけじゃないよ。今のアルクノアは、エレンピオスの現状に不満を持つ人たちを、新しく取り込んでるんだ。」
「逆に、和平推奨派になった人たちは襲っていく、そんなことばかり。」


現に、私の勤めているクランスピア社もそうだ。
この間の列車テロだって、クラン社がアスコルド開発に多大な資金を寄せていたから標的にされたのだろう。


「エレンピオスは行き詰った社会。不平不満は山ほど溜まってる。リーゼ・マクシアとの衝突は、不満をぶつけるにはうってつけだからな。」
「当たり前みたいに言わないでください……!」
「もちろん、ほっとく気はないって。皆のお蔭で帰れた故郷だ。壊されてたまるかって。」
「アルヴィン……!」
「前向きー!」
「おかげさまで、な。」


ふふ、前だったらそんなこと、ハッキリ言わなかったくせに。
成長しているのはジュード君やエリーゼだけじゃなかったようだ。


「お、ここだな。」
「……あのさ、先に言ってもいい?」
「どうしたの、ナマエさん。」


私は、気付いてしまった。
この先に、誰がいる。気配がある。
バランさんじゃない、別の、もっと大きな気配。


「……私たち、本当にサチ薄いかもッ!」


槍を手にして屋上へ繋がる扉を足蹴りすると――


「……ジジ……ガガ……!」
「また変なのだ!」
「これって、」
「源霊匣ヴォルト!」


どうして、源霊匣が、しかも大精霊クラスのがここにいるの!
昔にも同じ場所で同じような感じで出くわした源霊匣ヴォルト。
今にも攻撃してきそうな勢いで、彼の周囲には稲妻が行きかっていた。


「またつくったのかよ!?」
「制御もできないのに……!」
「ビビッ! ビィー!」
「来るよ、構えて!!」


前はミラやじじ様がいたからなんとかなったけど……!


「くそ、相変わらずビリビリ来るやろうだ……!」
「ルドガーはなるべく銃で対応して、下手したら感電するから!」
「わ、分かった!」
「アルヴィンは周囲の雑魚と、エリーゼの援護よろしく!」
「りょーかい!」


ヴォルトは酷く暴走しているようだ。
ジュード君が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。
こういう顔、させないでほしいな!


「ジュード君は私と一緒に前衛、よろしく!」
「もちろん、遅れないでよ!」
「誰に言ってんの!」


ジュード君と共鳴をして駆け出す。
なんとか交戦していくうちに、どうやら弱点がみえてきた。

私たちの攻撃よりも、ルドガーの銃撃のほうがヴォルトには効くようだ。


「アルヴィン、ルドガー、銃が効いてる!」
「はいよ。ルドガー、行くぜ!」
「あぁっ、」
「「モータルファイア!」」
「……ジジッ、ガガッ……!」


……とま、った……?
源霊匣ヴォルト、手ごわかった。


「やっぱり、源霊匣の制御は……。」
「元気出してください!」
「七転び八起きー!」
「何度でも避雷針になってやるよ。ティポが!」
「ぼくー!?」
「ありがとう、皆。」
「ジュード君はには私たちがいるよ。ね?」
「うん。」


華奢なジュードくんの肩に手を当てれば、先ほどまでの表情が柔らかくなった。
少しでも元気、でるといいんだけど。


「ジジ……エラー……。」
「エラー?」
「タマシイ……オセン……シンコウ……。」
「タマシイ? 汚染進行?」
「どういうこと?」


汚染って、どういうことなんだろう。
魂の、汚染? 魂ってなんの魂?


「コントロール……フノウ!」
「うぉおおおお!」
「ルドガーっ!?」


なに、ルドガーの腕が変化して、しかも槍!?


「これのことだよ、ルドガーの身体が変化したっていうのが。」
「これが……。」


そのまま手に持っていた槍で、ルドガーは再び暴れ出しそうなヴォルトに突き立てた。
その途端、ヴォルトの身体が輝く。

いや、ヴォルトじゃない、槍に突き刺さっている小さな――


「ッ!?」


(何かが割れる、そんな音がした。)




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