TOX2 | ナノ

XILLIA2

16▽ 次々と再会を果たす

薬莢の落ちる音と同時に、目の前の銀髪は武器をしまった。
ふらふらな体勢のまま、苦しそうに言葉を紡ぐ。


「よ、容赦なく叩き込んでくれたな……。俺じゃなきゃ、死んでるところだ!」
「ははは……。」
「いい腕っぷしだったよ、ルドガー。」
「ありがとう。」


ルドガーの両手には、新品の銃がおさめられていた。
どうやらクラン社からの支給品のようだ。


「大丈夫? イバル。」
「ふん……妙な気を遣う誰かよりよっぽどマシだがな。」
「イバル、それ以上言うと槍突き刺すよ。」
「くぅっ……!」


銃弾が当たった部位を抑えながら、イバルが顔を顰めた。
そうだ! 彼が雑務エージェントというのなら。


「ねえ、イバル。この銃の弾、予備で持ってきているでしょう?」
「なんでそれを! 俺が意地悪してコイツに渡さない計画をどこで!?」
「…………。」
「…………。」
「……はっ!」


ば、バカなの……?


「聞かなかったことにしてあげるから、それちょうだい。もちろん、ルドガーの分と私の分とでね。」
「経口、一緒なのか?」
「そ。さ、雑務エージェントのイバルさん、いただけますか?」
「はっはっは、なんたって俺はエージェントだからな! 仕方のない、くれてやる!」


雑務だけどね。
イバルから弾を受けとり、いくらか私も貰って残りはルドガーに渡した。


「覚えてろよ、お前たち……!」


忌々しそうな声色でふらふらになりながら、イバルはその場を立ち去る。
本当に、嵐のような人だ。


「巫女様、相変わらずだな……。」


アルヴィンのそんな声が、ぽつりと聞こえた。
ルドガーとジュード君は苦笑いしているし、エルに至ってはもう半目状態だ。


「気を取り直して進もっか。」
「バランって人、どこにいるのかな?」
「バランが身を隠す場所といえば……。」


どうやらアルヴィンは少しばかりアテがあるようだ。
とにかく屋上へと向かうしかないだろう。


「ルドガー、銃の使い方はもう大丈夫?」
「あぁ、なんとかな。」
「そっか。そうだ、銃技教えてあげる。」
「本当か? 助かる!」
「簡単だからすぐ覚えられるよ。えっとね……。」


私は貰ったばかりの銃弾を自分の銃に込めて、コツを教える。
教える、ってほどのものじゃないけれどね。
けれどルドガーはそれを真摯に聞いてくれていた。


「おいおい、なんかルドガー君と仲良さ気じゃないの?」
「う、うん。」
「お前ら、再会したばっかなんだってな。」
「うん……。」
「ま、頑張れよ。」
「……うん。」
「……だんだん声小さくなってっけど、大丈夫か?」
「……たぶん。」


――よし! 完璧!


「それじゃ、そこにいるアルクノアさん撃退しようか。」
「できるかな。」
「大丈夫、ルドガー呑み込み本当にいいから。アルヴィン、サポートよろしく!」
「はいよ。」


ふとアルヴィンたちの方を向いたら、若干ジュード君の表情が暗かった。
どうしたんだろう……?
気にはなるものの、まずはルドガーの腕っぷしを見なければ。


「はっ!!」
「お、今の攻撃いーじゃねーの。」
「すごーい、ルドガーやるー!」
「こ、こんな感じでいいのか?」
「うん。バッチリね。やっぱり才能あるよ、ルドガー。」


照れくさそうに笑うルドガーだが、これはお世辞ではなく本当にだ。
私の槍を以前使ったときも、太刀筋が本当に良かった。
もしかして、銃の扱いもユリウスさんのを見よう見まねで……?
この柔軟性、才能なのだろうか。


「ナマエ? どーかしたの?」
「ううん、なんでもない。さ、先を急ごうか。」
「あまり無理しないでね、ナマエさん。」
「ジュード君こそ。……もしかして、疲れた?」
「え? そんなことないけど。」


きょとんとするジュード君から、先ほどの表情の暗さは感じない。
私の気のせいだとも思わないけど。そこまで気に留めるほどのことでもなかったのだろうか。


「そっか、ならいいや。」
「?」
「ううん。私の気のせいだったみたい。」
「そう? じゃ、先に進もう。」


先を歩きだすジュード君。
ひらりと揺れる白衣を見て、ふと汚れちゃわないのかと思う。どうでもいいことだけど。

足早に先へ進むと、エルが急に足を止めた。


「変なのきた!」
「!」
「僕が――って、」


ジュード君が駆け出そうと足を出した瞬間。
目の前にいた機械に強烈な精霊術が当たり、私たちが手を出すまでもなく破壊された。

この精霊術――この、威力……どこかで。


「ふぅ……もういませんね?」


この声……!?


「エリーゼ!?」
「ジュード!」
「ナマエに、アルヴィンもいるー!」


ふんわりとした髪を2つに結い、可愛らしい服装に身を包んだ、成長したエリーゼの姿。
ぷよぷよと浮かんでいるティポも、かつてのように隣にいる。


「まさか、リーゼ・マクシアの親善使節って――」
「はい。私たちの学校が選ばれたんです。」


前よりも凄くおしとやかになっているエリーゼ。
ああ、可愛い……!


「エリーゼ、ティポ、久しぶりね。」
「ナマエー! 生きてたんだねー!」
「連絡、ないから心配してました!!」
「え、あ、ごめん。」


生きてたんだね、って……アルヴィンにも同じこと言われた。
思わず視線が彼に向くと、肩をすくめている。
近づいてきた彼女の頭を撫でれば、嬉しそうに微笑んでくれた。


「えっと……ジュードたちの知り合いか?」
「うん。エリーゼとティポだよ。」
「へぇ、」


ルドガーがエリーゼを見て目を細める。


「可愛い子だな。」
「そ、そんなことないです……。」


ふふ、エリーゼってば照れくさそうにしちゃって。
けれどそんな甘い言葉を吐いたルドガーに、厳しい少女の視線があてられた。


「ルドガー、チャラ男……。」
「う……。」
「えっと、ジュードたちの、お友だちですか?」
「あぁ、よろしくな。」


エリーゼが「はい。」と微笑むと、ティポがエルのもとに移動した。
そして「こんにちはー!」といつもの如く挨拶をする。
が、


「変なの!」
「がーん!?」


当然の反応だった。


「ティポっていうんですよ。仲良くしてね。」
「ねー♪」
「…………やっぱり変!」
「がががーん!?」


どうしても、当然の反応だった。


「エリーゼ、友だちも一緒だったんだろ?」
「急に襲われたんだー。」
「ティポをもってて助かりました。」
「学校の皆は、エリーゼが安全な場所へ避難させたよー。」


どうやら、成長しているのは見た目だけではないようだ。
一人じゃ怖かっただろうに、偉い偉い。


「エリーゼ。バランさんが皆のこと案内していたと思うんだけど、彼も一緒?」
「バランさんは、わたしたちを逃がすために、囮になって……。」
「開発棟の上の方に残ったんだー。」
「だから、助けを呼びに来たんです。」


上、ね。


「案内を頼める?」
「もちろんです。」


力強いエリーゼの言葉に、私たちはほっとする。
彼女の精霊術があれば、この先も楽に進めるだろう。
早いとこバランさんを助けに行こう。
その途端、大地を揺らすような低い音で、雷が響いた。


「ッ!」


びくりと震える小さな体に、エリーゼが声をかける。


「雷……怖いんですか?」
「べ、別に! ――きゃあああ!」
「っえ?」

再び、先ほどよりも大きな音をたてて雷が落ち、エルが声を上げた。

――その時、あまりにも不思議な感覚を味わったのだ。


(なんか今……)
(この感じ、なんだろう。)




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -