TOX2 | ナノ

XILLIA2

15▽ 研究所制圧テロ

「私たち、もしかして何か憑いてる?」
「ルドガーのサチうすいの、皆にエーキョーしてるのかな?」
「うぅ……!」
「強く生きろよ、ルドガー。」


ぽん、とルドガーの方に大きな手が置かれる。
無精髭を生やしたアルヴィンと共に、私たちはヘリオボーグでアルクノアを撃退していた。

――と、いうのもだ。


「よし! これで返せたぞ……。」
「お疲れ、ルドガー。」
「がんばったねー!」
「ナァ。」


ルドガーの借金返済(まずは行動範囲拡大)のために、私たちはクエストを熟していた。
魔物の討伐から素材の納品。現状可能なクエストは、何から何までやり尽くしていた。


「それにしてもジュード君、地味に腕あげた?」
「え、そうかな? 最近は研究室にこもりっぱなしだったから、むしろ落ちていると思うんだけど。」
「うーん……素早さはちょっと欠けてるけど、力強さが増してる。」
「ナマエさんが言うなら、そうなのかも。そっちは相変わらずの槍捌きだよね。」
「これで生きてきたし、今もそう大差ないからね。でも、あの時に比べればちょっと弱くなっている気がするのが悩みでさぁ。」
「凄かったもんね、前は。」
「うん、休む暇なく戦い続けてた。」

「……なんか、コワイね。」
「あ、あぁ……。」


さて、この返済を受けて、行動範囲が少しばかりだが広がった。
選べるのは、マクスバードとヘリオボーグ。
ちょうどどちらも、ユリウスさんの情報があったとされる場所だ。

ルドガーが解放してもらったのは、ヘリオボーグ。
ユリウスさんと交流があったというバランさんに会いに行くのを優先させた。


「それにしても、バランさんのGHSに繋がらないなんて。」
「普段は繋がるの?」
「うん、実験中でもよく繋がるんだ。……どうしたんだろう。」
「いそがしーだけじゃないの?」
「そうならいいんだけど……。」


ジュード君の表情に陰りが生まれる。
思わずルドガーを顔を見合わせた。


「そしたら研究所へ急ごう、ジュード。」
「うん、そうだね。」


かくして私たちはトルバラン街道を抜けた先にある、ヘリオボーグ研究所へと向かう。
道中で数匹の魔物たちを撃退しながら着いたそこは、緊迫した雰囲気が流れていた。


「か、関係者以外は入らないで!」
「なにかあったんですか?」
「ああ、ジュードさん。」


私たちが近づくと、一人の研究者が声をかける。
だがジュード君の姿に気付くと少しだけ安堵した様子を見せた。


「それが……」
「ダメだ。完全に警備システムを押さえられている。俺ひとりじゃどーにもならな――」
「アルヴィン!?」
「あらま!」


研究者の背後から近づいてきた影――アルヴィンの登場に思わず目が丸まった。
以前と似てオシャレな服装に身を包み、ちょっとした無精髭まで生やしている。
まさか、こんなところで出会うなんて……!

アルヴィンも私たちの姿に驚いたように、はっと目を見開いていた。
だがそれも一瞬で、すぐさま口角があがる。


「おっと、こりゃまたいいタイミングで。しかも、ナマエまで一緒とはな。」
「久しぶりね、アルヴィン。随分オシャレ度が増したんじゃない?」
「まあね。……さて、お前らに力を貸してほしいんだ。」


彼の顔が、真剣になる。
そして、今回のこの騒動について話してくれた。


「アルクノアが警備システムを制圧した……。」
「まーたテロなのね。」
「しかも、見学に来ていたリーゼ・マクシアの親善団体が中に。」
「案内していたバランも一緒なんだと。」


今まで私たちの話を聞いていたエルがはっとする。


「バラン! 助けないと。」
「手伝ってくれるのか?」
「僕たち、バランさんに用があるんだ。」
「ルドガーだっけ? これ、アルクノアのテロだ。そんで俺、元アルクノアなんだけど、信用してくれるか?」
「え……?」


突然のアルヴィンからの告白に、ルドガーは少し驚いたように声を漏らした。
まあ、アルクノアに対していい印象は受けていないだろうから、尚更なのだろう。


「ルドガー。確かにアルヴィンはアルクノアとして動いていた。それに、まあ見事に私たちのこと騙したこともあったよ。」
「あれ、凄い辛辣な言われようなんだけど。」
「――それでも、彼は信用におけるわ。彼は、私たちの仲間なの。」
「そんな風に言わなくたって、もちろん信用するよ。」


ルドガーの即決に、アルヴィンは小さく笑みを漏らす。


「なるほど、ジュードの友だちって感じだな。」
「アルヴィンは、ジュードの友だちじゃないの?」
「ん……どうかな?」


またまた。
……きっと彼は、今でも過去の出来事を酷く気にしているのだろう。
不器用な彼の態度に、ジュード君がくすりと笑みを零した。


「友だちだよ。」
「……なんか信用できなそう。」
「子どもの目はごまかせない、か。」
「アルヴィン、どうしたって見るからに胡散臭そうだもの。仕方がない。」
「うっせ!」


前までなら、きっと私を小突いてきたのだろうけれど。
まだ気まずさが彼の中にはあるのだろうか、口だけの反撃をくらった。


「状況を確認しよう。バランさんと見学者が閉じ込められているのは?」
「開発棟の屋上付近かと。」
「そしたら、屋上まで行きますか。」
「天気も悪くなってきた。ちゃっちゃと済まそうぜ。」


アルヴィンはジュード君の背中を押す。
見たまえ! ジュード君の意外そうな顔を。
きっと、前みたいに腕を回されると思ってたんじゃないかな。


「にしてもナマエまで一緒だったとは驚きだ。生きてたんだな。」
「むしろ死んでてほしかった?」
「……冗談言うなよ。」


アルヴィンの目が真剣だ。
ちょっと、発言誤った。


「ごめんって。連絡しなかったのは悪かった。」
「だがジュードと一緒だったとは、上手くやってんじゃねーか。」
「あー……。」
「なに、どうしたの?」
「ジュード君とも、再会したばかりです。」
「…………。可哀想だな、ジュードのやつ。」


くぅっ……!
申し訳ないとは思うけどもさぁ。


「で、どんな具合なのよ。」
「どんなって……別に。」
「ふぅん?」


にたりと微笑うアルヴィンがどうしようもなくむかついて、軽く小突いてやった。
すると、ジュード君の声が背後から届く。


「二人とも、前!」
「はいはい、」
「邪魔しないでね。」


――ガウンッ ガウンッ

弾を飛ばした数秒後、目の前にいたアルクノアが音をたてて倒れた。
久々でも、意外と体は覚えているようで、結構いい連携だったと思う。


「すごー……!」
「もう、ちゃんと前見てよね。」
「あ。私、今ので銃弾切れた。」
「は? おいおい、持ってきてないのか弾。」
「貰い忘れちゃった。」
「聞いてないし……。」


今朝、クラン社に行ったら支給品貰おうと思っていたのをすっかり忘れていた。
それもこれもリドウのせいだ。と責任転嫁して、私は弾のない銃をホルスターにしまう。


「おいおい、飛び道具足りねーぞ。」
「そう言われても。」


今から会社に連絡して持ってきてもらう?
きっとその頃には事終わらせられてるはずだから、無意味だ。
とは言え、アルヴィンの言うとおり確かに欲しいな。

――そう、思っていた時に奴は現れた。


「ふっ、いいところに来てしまったようだな!」
「またこの人……!」
「新兵器を持ってきてやったぞ! ありがたく受け取、れッ!?」
「……銃の扱いなってないじゃない……。」
「う、うるさいっ! さぁ、構えろ! 使い方を叩きこんでやる!」


うーん。使い方を叩きこむねぇ?
ちょっと意地悪しちゃおうかな。


(ルドガー、耳貸して)
(?)
(……ごにょごにょ……)




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