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 熱伝導

衝撃の告白」日常編


その日、目を開ければいつも以上に世界は輝いていた。
どうやら地上では朝陽が昇り始めた所らしい。海界に差し込む光が眩しかった。


「……あら?」
「まま!」


まだ横になっているナマエの視界に、ひょっこりと可愛い我が子が映る。
満面の笑みを浮かべている長男のカイは、ナマエのお腹に乗っかると胸元に顔を埋めた。


「おはよーままぁ。」
「おはよう、カイ。ずいぶんと早起きなのね。ママびっくりしちゃった。」
「おそと、きらきら!」
「そうね…お外凄く綺麗。」
「きれー?」
「きらきらしてるわねって。」
「きれー!」


嬉しそうに身体をもじもじとさせる愛し子に、ナマエも口元を緩めながらその頭を撫でる。
そして顔だけを横に向けると、まだ眠っている産まれたばかりの女児が確認された。


「ティアはまだお休み中ね。」
「いもーと?」
「そう、カイの可愛い妹よ。優しくしてあげてね?」
「んー。」


ナマエはカイを気遣いながら、ゆっくりと立ち上がった。
少し早いが、子どもも起きていることだし朝ごはんの支度をしようと思ったのだ。


「ままーぱぱはー?」
「予定だと今日帰ってくる頃ね。」
「あえるー?」
「会えるー。」
「やった!」
「会う前にたくさんご飯食べて、元気な姿見せてあげようね。」
「はーい!」


キッチンへ向かう中で、壁にかけられたカレンダーを一瞥する。
夫であるカノンが仕事で地上へ行ってからちょうど4日目。予定では今日帰還するという。
子どもは素直に喜びを露わにしているなか、ナマエは密やかにカノンの帰宅を心待ちにしていた。


「さてと、何食べよっか?」
「たまごー!!」
「ふふ…目玉焼きね? かしこまりました。」
「かしこまるー!」


最近、カイは目玉焼きがお気に入りらしい。
タマゴの黄身を突いた時に溢れる現象がとても好きらしく、こうして強請るようになっていた。
というのも、これはカノンが任務に出かけたその日の出来事で彼は知らない。
さっそく、カノンが帰ってきたら教えて上げなければとナマエは笑みをこぼした。

カノンが帰宅したのは、ちょうど昼食の時間帯だった。


「いま帰った。」
「ぱぱ!」
「カイか、ただいま。いい子にしてただろうな?」
「ん! きれー!」
「は?」


その場に屈んでカイの頭を撫でれば、彼は目を輝かせながらそう言った。
あまりの唐突な言葉に、カノンが思わず撫でる手を止めれば奥からくすくすと綺麗な笑い声が聞こえる。


「ナマエ、…。」
「おかえりなさい、カノンさん。」
「ただいま。それで、何なんだ?」
「きれー!」
「今朝の景色ですよ。朝陽が入り込んでいてとてもきらきらしていたんです。」
「なるほどな…『きれい』ってことか。」
「きれー!」
「はいはい、綺麗だったな? 今度、俺とも一緒に見るか。」
「ままも!」
「そうね。ティアもいれて、皆で見ましょう。」


笑みを携えながらもどこか疲れた様子のカノンに、ナマエは微かに眉を下げた。
彼の荷物を持ち、自室へと共に向かう。


「お疲れさま。どうでした?」
「何がだ?」
「地上ですよ。アテナ様やお仲間と会うのは久々でしょう?」
「別に、普段と何も変わらん。一緒にいるだけ暑苦しいだけだ。」
「またまた…。今日はもう、休みますか?」


仕事とはいえ向かった先は仲間のいる場所。向こうもカノンと会いテンションがあがったはずだ。
微かに彼から漂う酒の香りにきっと夜中まで飲み交わしていたのだろうと、容易に想像つく。

本当は子どもたちと共にのんびりとした時間を過ごしたいのが本音だが、カノンも人だ。休まなければ生きていけない。
ナマエはそれを分かっていたからこそ、カノンにそう告げた。だが彼は首を横に振る。


「いや、大丈夫だ。それより何も変わりなかったか?」
「はい。カノンさんが帰って来てくれるのを、家族皆で心待ちにしていました。」
「そうか、……ナマエ。」


そっと頬に大きな手のひらが当てられる。
自分とは違う少し太くて、それでいてとても綺麗に長い指が頬を撫でる。


「か、カノンさん…。」
「しばらくお預けだったからな、キスぐらいいいだろ。」
「っ!」


直球なその言葉に、ナマエの顔は瞬時に赤くなる。
いつまでたっても初々しい妻を愛おしく思いながら、カノンはそっと顔を近づけた。


「ぱぱ、めっ!」
「!」
「カイ……。」


だがその雰囲気を見事に壊したのは、こちらも最愛なる息子。
少しばかり開いていた扉から顔を覗かせている。


「め!」
「……。」
「ですって。」
「……はぁ。」


どこから、いつ覚えてきたのか。
カイは不思議と「だめ」ということで、カノンとナマエが仲睦まじくすることを阻むようになった。
まだまだ小さく、世間のせの字も知らない子どもがどうしてかと、一時期カノンは頭を悩ませるほどにだ。


「カイ、お腹すいた?」
「すいたー!」
「…飯にするか。」
「そうですね。私作りますので、カノンさんは子どもたちと一緒にいてあげてください。」
「悪いな。」
「妻ですから。」




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