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Origin.


 衝撃の告白


カノンは今までにないほどに汗をかいていた。

目の前には素晴らしいほどの輝きを放ち満面の笑みを浮かべるアテナである沙織が。
そしてその両サイドに、口角を上げ微笑む教皇シオンと童虎の姿があった。


「さぁ、正直になさい、カノン。」
「う…ですからアテナ……。」

「なんだカノン、まだ言い逃れると?」
「ぐっ…きょ、教皇まで……。」

「そろそろ堪忍した方が身のためだぞ? カノンよ。」
「老師っ……ぐうっ……。」


カノンはがくり、と肩を落とした。
その瞬間、沙織とシオン、そして童虎は顔を見合わせ、頷いた。


「カノン、明日の昼に黄金聖闘士たちをここに集めます。私の言いたいことは分かりますね?」
「…はい。」
「うむ、では下がってよいぞ。」
「失礼、します……。」


カノンはふらふらと教皇の間から立ち去ってゆく。


「ふふっ、楽しみですわ!」
「皆驚くだろうなぁ。」
「サガの顔なぞすぐに浮かぶわ。」


そして、一夜が明け、その昼の時刻へと時が早変わりする。

教皇宮に集められた黄金聖闘士たち。
昨夜、アテナよりこの時刻に集まるよう言われたのだ。これには皆驚いていた。


「一体何なんだろうな……。知ってるか? サガ。」
「いや、私も聞かされていない。」


アイオロスの言葉に、サガはゆっくりと首を横に振った。
と、近くにいたシュラが辺りを見回した後に、サガに問う。


「サガ、先ほどからカノンの姿が見えないが、どうした?」
「……実は、昨夜からいなくてな。」
「昨夜から? 確か夕食は共にしていたはずだが……。」


アイオロスは昨夜、サガのもとへ書類を届けた。そ
の時は、確かにカノンはサガと共に食事をしていたのだ。サガもそれには頷く。
そして顔を手で覆うと、大きなため息を吐いた。


「その後にアテナ様に呼ばれたといってな…教皇宮まで赴いたんだが……。」
「もしかしてカノンの奴、なんかやらかしたんじゃねーのか?」
「デスマスク、そう要らんことを言うものではないぞ。見てみろ、サガを。」
「おーい、サガ、大丈夫かー?」
「サガー?」


デスマスクの一言に、サガは壁に手をついて俯いてしまった。
彼から漏れる小宇宙は揺ら揺らと揺れている。

その様子に、デスマスクはげっと顔を歪ませた。
デスマスクにそれを伝えたカミュも、どこか顔がぱっとしない。
ミロとアイオリアは先ほどからサガに声をかけてはいるも、それも届いていない状態だ。


「カノンが……あの愚弟が…まさか、また……。」
「これはダメだね。まるで枯れゆく花のようだ……。」
「とはいえ、私たちが気付かないほどのことが起きたのかね?」
「どうでしょうね。まあ、あのカノンですから。」
「はっはっは! ムウよ、それではカノンの奴が可哀想ではないか。」


と、奥の方からシオンと童虎を連れた沙織がやってきた。その瞬間、その場の空気は変わり、姿勢を正す黄金勢。
とはいえ、どこかサガは落ち着かない表情をしていた。
アテナは全員そろっていることを確認すると、まずは微笑んだ。


「皆さん、よくそろってくれました。」
「実はお主らに紹介したい人がおってな。」
「紹介したい人、ですか……?」


うむ、とシオンが頷いた。そして、入口を扉を見つめた。同時に感じる小宇宙。


「これはカノンの…あいつめ、遅刻だったのか…。」


ぐ、と顔を歪めるサガに、童虎は笑って首を振った。


「いや、違うぞサガ。今回はカノンも含めて紹介したいのだ。」
「カノンも、含めてですか?」
「というのは一体……?」


黄金一同が首を傾げて考えていると、扉がゆっくりと開かれた。皆がそちらへと視線を向ける。

太陽の光と共に入ってきたのは、カノンと1人の女性であった。
その女性の片手は男の子の手と繋がれており、また腕の中には女の子がいた。
一同はじっとその女性らを見つめる。


「はー…なかなかイイ女じゃねぇか。」


にやり、と口角をあげそういったのは無論デスマスクである。
彼の艶めかしい視線に気づいたのか、女性がデスマスクを見る。すると、彼女はやんわりと微笑んだ。


「子連れじゃなきゃ、もっと良かったんだがなぁ……あ?」
「……。」


女性に笑い返せば、殺気にも似たそれを感じる。デスマスクと目があったのはカノンだった。
カノンの目は、かなり細められ、殺気にあふれていた。その瞬間、すべてを悟ったデスマスクは、腕を組み肩をすくめた。


「さ、皆も気になっているだろう、この者たちが。」
「実は……皆、驚くとは思うのだが。」


渋ったように口を動かす童虎に、一同は首を傾げた。
すると、沙織が前に一歩踏み出し、微笑む。


「カノンの奥様とその子どもたちですわ。」


……。
…………。
………………


「「「「ええええええぇえええええええ!?」」」」」


聖域中にそんな声が響いたとか。

皆が落ち着いたのはそれから数十分後のことだった。
改めて、と皆の前に出された女性が、1つ小さくお辞儀をした。


「初めまして。ナマエと言います。いつも夫がお世話になっています。」


ふわり、それが正しい表現か。ナマエと名乗る女性は微笑んだ。そして、そのまま視線を落とし、


「この子が息子のカイで、こっちの子は娘のティアと言います。」
「お会いできて光栄ですわ、ナマエさん。」
「こちらこそ。まさかアテナ様にお招きいただけるとは。夫から昨晩話を聞いた時にはとても驚きました。」
「ふふ、急にごめんなさい。
けれど、カノンが貴方のような美しい奥様がいることを黙っていたものでしたから…どんな方なのか是非お会いしてみたくて。」
「そんな、アテナ様の方が大変お美しいです。ついつい見惚れてしまいましたもの。」
「まぁ、ありがとうナマエさん。」


沙織とナマエのやり取りに、本当にカノンの嫁なのだと信じがたい事実を突きつけらえた黄金一同は、口をあんぐりとしていた。




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