はじめての召喚師服(アンナ、シャロン、エクラ)



白いローブには幾何学的な金帯の紋様が幾つも走っている。白と金の衣裳は豪奢だがシンプルで品が良い。インナーの詰め襟は爽やかな青色で、金色の嫌みっぽさを打ち消していた。
そんな召喚師の衣裳を着た絵倉くんを見た瞬間、シャロンが四コマ外国人並みのテンションで飛び上がった。

「さっすがエクラさん!世界一似合ってます!」
「おおー、すごいね絵倉くん。豪華だね!」

私とシャロンのダブル誉め言葉に、絵倉くんは首の裏を掻きながら照れ臭そうに笑った。

「こういう服って着たことないから恥ずかしいな。変じゃないか?」
「変じゃない。すごく似合ってるよ」
「ええ、胸を張ってちょうだい。いずれ現れるであろう召喚師のために誂えられていた礼服、無駄にならなくて良かったわ」
「細かい調整、オボロさんにしてもらえて良かったです!」
「そうだな。オボロにあとで礼言いにいかないと」
「エクラさん、その服着てるとますますルフレさんに似てる気がします!」
「そういえば二人とも服のつくりが似てるわね」

羽織る白いローブに、腰には幅のあるベルト、厚めの手袋。黒地が主のルフレとは対と言えるかもしれない。何より絵倉くんの穏和な瞳の奥の知的さが、ルフレと似ている気が……しなくもない。

「そうか?服は確かに似てるけど……。李依の分もあれば良かったのに」
「ええ〜良いよ〜。召喚師じゃないし、着こなす自信ないもん」
「ええっもったいない!せっかくなんです、作ってもらって着ましょうよ〜」
「着ないよ〜」
「着ましょうよ〜」

のらりくらりとシャロンの勧誘をかわす。私が着たところでコスプレにしかならないのは目に見えているのだ。

「あら、せっかくだし着てみればいいじゃない。この召喚師服だって元は男女兼用にデザインされているみたいだし、機会は活用しなきゃ」

と、思わぬ方向からの狙撃。アンナさんは人差し指を顎に宛がってウインクを飛ばした。ただの謙遜だと思われているらしい。そのあと「召喚師のグッズを作ったらどれくらい売れるかしら…」と小さく聞こえてきた気がするが聞かなかったことにした。
このままでは本当に絵倉くんとお揃い服の刑にされそうなので、しっかり拒絶しておかなければ。真剣度が伝わるようにキリリとした顔を作る。

「頼まれたって着ませんよ。その服コスプレっぽいかつ重そうかつ通気性最悪そうだから」
「李依。お前本音が出たな」