ボードゲーム・SRPG




ふらふらと何をするでもなく城内をぶらついていると、多目的用に誂えられた一室で絵倉くんとルフレが盤面を挟んで向かい合い、ああでもないこうでもないとなにやら言い合っていた。
四角い盤の上に立つ、弓を持った人や馬などを模した沢山の駒。ボードゲームらしい。既視感を覚えて口を開く。

「ねえ、それってチェス?この世界にもあるんだ」

二人がこちらに気付き、顔をあげた。私の投げかけた質問にルフレが答える。

「チェス…に似てるけど、少し違うんだ。それぞれの兵種に見立てた駒を地図の上で動かして戦略を立てたり、攻め込まれた時の動きを再現するんだよ」

ルフレの解説を受け、絵倉くんが地図上の駒を摘んで持ち上げる。

「こっちの馬が騎馬、弓を持ってるのが弓兵、剣を持ってるのが剣士……って具合。これを使ってルフレに兵の動かし方を教わってたんだ。
元の世界では軍師だったっていうから適任だと思ってさ」
「絵倉くん真面目…」
「成り行きとはいえ召喚師になっちゃったからな。やるからには出来る限りやるよ」
「で、ルフレは軍師だったんだ。かっこいいね」
「ああ。記憶喪失の僕を拾ってくれたクロムが、軍師になるようすすめてくれたんだ」
「えっ」

さらっと投下される衝撃の事実。ルフレって記憶喪失だったのか。
ルフレはなんでもないような顔をして続ける。

「今回は自警団で培ってきた僕の戦術が役立てばと思ってね。
でもエクラの戦術は現実に囚われない発想で僕もハッとさせられるよ。エクラに教えているようで、僕自身教わることも多い」
「やめてくれ、あんま褒めると調子乗って失敗するから」
「へえ…二人とも、いつの間にかそんなに仲良くなってたんだね」
「李依も一緒に勉強するか?」
「本当?私もやってみていい?」
「勿論。一緒に勉強しよう」











…………








「瞬殺された……」
「確かに戦場でいち早く敵の数を減らすことは確実な勝利への道だね。
でもただ突っ込んでもいたずらに兵を失うだけ。罠の可能性も考えなければ駄目だ。弱った敵兵が討ち取れる範囲に居たときなんかは、特にそうだね」
「倒せそうだからって前に出たらダメなんだね……わかったよルフレ。
かくなる上は私よりも初心者の人を誘ってコテンパンにするしかない。よしタクミくんを誘おう」
「わかってないよね!?」





……………………





「瞬殺された……」
「あんた、分かりやすい餌に釣られすぎなんだよ。罠かもしれない、って考えなかったの?」
「勝ったッ!って思ったらそこで思考停止しちゃうんだよね。喜びは抑えられないよ」
「この勝負向いてないだろ……」