Like(ルフレ、タクミ)




城の広間でルフレと話していると、視界の端で見慣れた背格好がちらついた気がした。
そちらを向くと、予想通り見知った姿……戦帰りらしいタクミくんがちょうど通り過ぎるところだった。

「あっ!タクミくーん!」
「なっ…!」

ぶんぶん手を降ってアピールすると、タクミくんは顔を赤くしたあと早足で歩いて行ってしまった。「人が居るところで」とか、「ばかじゃないのまったく」とか聴こえた気がする。
完全に去っていってしまったのを見届けてから向き直ると、ルフレがきょとんとした顔で私を見ていた。

「ごめんごめん、話してる途中に」
「いや、構わないよ。李依はタクミの事が好きなんだね」
「そだね。けっこう好き」 
「どうして好きなのか、理由を訊いてもいいかい?」

どうして、と訊かれて返答に困る。気がついたら、なんとなく……理由とも言えない抽象的な言葉が浮かぶ。
アスク王国に召喚されて、訳もわからず殺されかけて。そんな所を助けてくれたタクミくん。
褒めると慌てたり喜んだり、ふざけると怒ったり呆れたり。ころころと変わって楽しい彼の表情。一緒にいると飽きなくて。

「んー……やっぱり、この世界に来て真っ先に命を助けてもらったから?すごい印象に残ってるんだよね。なにより……」
「なにより?」
「反応が楽しい」
「……李依……君って人は」