ツバキと立ち話



この世界にはペガサスがいるらしい。
なるほど異世界も魔法もあるんだからペガサスの一頭や二頭だって存在していていても不思議じゃない。
ならば一目見てみたいと思い立ち、アンナさんに場所を聞いて、厩舎……いやペガサス舎?へ向かった。

ウェスタン扉のようなつくりの木板を押し退けて入ると、女性と見紛う髪型の男性がいた。私を見つけるとやや驚いた顔をする。

「あ、李依ー。どうしたの?厩舎にくるなんて珍しいよねー」
「こんにちはツバキさん。厩舎があることをさっきはじめて知ったから、ペガサスが気になってさっそく来ちゃった」
「ペガサス好きなんだー?」
「好きとか嫌いとか以前に、私がいたところにはペガサス居なかったんだ。だから興味が湧いて」
「ええ、ペガサス居ないのー?移動とか大変じゃないー?」
「ペガサス以外の移動手段が超充実してるから大丈夫。
さて、ツバキさんのペガサスはどこかなー」
「俺のはペガサスじゃなくて天馬だけど……見た目ではあんまり差がないから判り辛いかもねー。今は鞍や轡も外してるしー」
「そうなんだ……って、そういえば私ツバキさんが戦ってるところ見たことないな」
「あれ、そうだっけー?」
「うん。……そもそも戦場に出たことすらないから分かるわけなかった」
「あららー」
「空飛ぶ馬に乗って槍を扱うんでしょ?すごいなあ……流鏑馬とは比較にならないくらい難易度高いんだろうな……ツバキさんが天馬に乗って戦うの見てみたい」
「そうだねー。その時は、俺の完璧な戦いを見せてあげるよー」