晴れときどきうたた寝



弓道場に入り浸ってもタクミくんになにも言われなくなった。
受け入れてくれた……というより追い出すのを諦めたという方が適切か。先日の宣言通り騒がず黙って見ているだけなので邪魔では無いと信じたい。
最近は絵本を持ち込んで文字の習得に勤しんでいる。

「ふあーあ……」

過ごしやすい日陰に、心地よいそよ風。ついつい盛大なあくびが漏れた。
見つめる文字の輪郭が滲んでぼやける。絵の具の色が混ざり合って溶ける。……あ駄目だこれ寝る。
かくっと首が落ちては意識が戻り、またしばらくすると首が落ちる。
そんな寝るか起きるかの攻防を繰り返していると「ぷっ」と吹き出す音が聞こえた。眠い目を擦って見ると、いつのまにかこちらを向いていたタクミくんが口を押さえている。

「ひっどい顔」
「みーたーなー……」
「後ろから大あくびが聞こえたら嫌でも見るさ。その能天気さ、あんたは夢見の悪さとは無縁そうで羨ましいよ」
「……私、今すっごい馬鹿にされてる?」
「正解」
「ぐ……」

言い返したいが眠気のせいで頭が働かない。タクミくんは上辺はあきれた声で、でも愉しそうに畳み掛けてくる。

「寝るならここ以外にしてくれよ。もし僕の鍛練が終わった時に寝てたら、叩き起こすから」
「がんばりまーす……」