図書館教室と転入生(ルフレ、ニノ)



「じゃあ、ここで少し休憩しようか」

ルフレ主催の国語教室に、転入生がやってきた。
彼女はぐんぐんと知識を吸収していき、私の方が早く文字を習い始めたというのに追い抜かされる日は遠くない。というか今同着。
片や私は元々の言語知識が仇となっている。一度頭の中で日本語に翻訳してから理解するせいで、どうしてもワンテンポ遅れてしまうのだ。ルフレはとにかく数をこなして反射的に意味を理解できるようになるしかないというが、これでは元の世界に帰るための手がかりを探せるようになるのはいつになるやら。もう帰らなくて良いんじゃないかな。

話が逸れたがとにかく転入生──ニノは、まだ幼いのに立派に英雄として召喚されてかつ勉強も出来る、とってもスゴイ子なのだ。


「李依さんは、エクラさんと同じ世界から来たんだよね?」
「そうだよー。絵倉くんから聞いたの?」
「うん!あたしが字が読めないって言ったら、“俺もだよ、同じ世界から来た李依が字を勉強してるから一緒に勉強するのはどうかな”って言ってくれたんだ」
「そうなんだ、だから私とルフレが勉強会してること知ってたんだね」

ニノは純真で明るい。ついつい可愛がってしまう。
喜んでくれるのを良いことに訳もなく頭を撫でていると、ルフレは口許に手を当てて何か考え始める。

「……エクラは敵の強さを見抜ける目を持っていた。なら、同じ世界から来た李依は?」
「私も一応、見ようと思えばそれっぽい情報は見えるよ」

ルフレをじっと見つめる。意識するとまず聖王の軍師という通り名が浮かんだ。……軍師?
彼は神妙な口振りで言う。

「もし先にブレイザブリクを手にしていたのが李依だったら、召喚師は李依だったかもしれない……?」
「ルフレ」
「なんだい?」
「ルフレって司書じゃなかったの…!?」
「どうしてそう思ったんだ!?」