「くぁ……」



今日最後の講義が終わり、欠伸をひとつ。

大学の授業は高校に比べて専門的な内容やから興味を持って受けれる授業が多い。集中して90分間話を聞いていると終わる頃にはとても疲れる。

放課後に遊びに行ったり、サークルに行ったりする奴らを横目に、早く帰ろうと荷物を持ち早々に部屋を出る。


今日は名前もこの時間で終わりのはず。連絡を取って待ち合わせて帰るのがいつものことやけど、今日はそれすらめんどくさい。いっそ迎えに行った方が早いんちゃうかと思って名前が授業を受けていたであろう教室へ足を向けた。











ドア付近に立って名前の姿を探していると、なんやめっちゃ見覚えのある髪型を見つけた。

あの髪型はまるでそう…



「……ワカメ…」



ちょうどそう呟いたところで、そのもじゃもじゃしたワカメ頭が振り返った。



「え!!お前、財前!?」

「やっぱりワカメや」

「え!なに!!大学同じだったのかよ!!」

「いや、ワカメに対してのツッコミはなしかいな」


ドア付近でそんなやり取り、切原に至っては大声で叫んでいるのでなんだなんだと注目される。

もちろん名前も例外でなく驚いた顔をしてこちらへ駆けてくる。



「名前。なんで切原おること言わんかったん」

「え!あ、そっか!2人ともテニス部だから知り合いだったのか!」

「それよりなんでお前ら知り合いなの!?」

「いや、2人とも声でかいわ」



2人の頭にチョップを落として黙らせる。さすがに周りの目が痛いねん。早よ帰るぞ。











結局3人で帰ることになり、折角だからお茶でもしようよ!という名前の言葉によって早く帰るという選択肢がなくなった。まあ、たまにはええか。



「で、お前らはどういう関係なの?」



切原がストローを咥えながら、もしかして…と言って小指を立てる。案の定名前には意味がわかってない様だった。頭の上にはてなマークが浮かんでいる。



「ちゃう。幼馴染や」

「え、じゃあ名字って大阪出身なのか」

「そうだよ〜両親が共に関東の人だからあんまり訛ってないんだけどね」

「そうか…名字が財前の幼馴染だったのか」

「切原くんは、光に幼馴染がいるのは知ってたの?」

「そりゃ…」



切原がその先を話す前に名前にバレないように切原の足を蹴った。

えっ、と驚く切原の顔をじとりとした目で見ると察したのか察してないのか、話題を変えてくれたのでホッとする。名前も気づいていないみたいやし。



その後、切原と名前は意外とウマが合ったのか話が盛り上がっていた。それも気に入らんかったので今度は強めに切原の足を蹴った。決して嫉妬ではない。そう自分に言い聞かせながらグラスに残ったコーヒーを飲み干した。




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