「切原、よくあの子が元立海生だって知ってたな」

「まあ、だって3年の時同じクラスだったし」



大学に入ってから一緒につるんでる奴らは、さっき俺が声をかけた名字の話題で盛り上がっていた。


そのうちの1人が、名字のことを「素朴な感じで可愛い」と言った。



たしかに。俺も思わず頷く。


すごく美人とか、可愛いってわけではないけど雰囲気的なものが可愛い人なんだろうなと、高校の時に女子に言われているのを聞いたことがある気がする。



「でも、あの子多分彼氏いると思うぜ」

「え?まじで?」

「多分だけど。この前、男子と待ち合わせして2人で帰ってたから。それしか知らねえけどな」

「なんだ〜彼氏持ちかあ〜」



ちぇ、と言いつつそいつらは既に話題を変えて話し始めていた。



「ふーん…」



俺は1人、高校の時に名字と付き合っていた奴の話を思い出していた。











たしか、高校2年の頃。


名字に告白したけど振られたやつがいた。


それでも付き合ったら気持ちが変わるかもしれないから少しでいいから頼む。とそいつは頼み込んで付き合っていたらしい。



結局名字は、「好きという気持ちがわからない。あなたとこのまま付き合っていても申し訳ない。だから、ごめんなさい。」という理由で振ったらしい。


振られたそいつは、名字らしい。むしろ付き合ってくれて感謝の気持ちだと話していた。











名字は今の彼氏(かもしれない)のことを今度は本当に好きになれたんだろうか。


そしたらきっと、高校の時に振られたあいつが報われるんじゃないか。そんな気がする。


俺は知りもしない、今一緒に帰っているであろう男に、お前は好きになってもらえるといいな、なんて勝手に心で応援した。




[←prev] | [next→]
back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -