01


並盛中屋上



結局、あの後全てを京子と恭弥に話した。

私の幼い頃を聞き、親がもう死んでいることを聞いてどう思ったのだろう。
受け入れてもらえたのだろうか。
拒絶されただろうか。
怖くなったのなら近づかない方が懸命だろう。
そう考えを巡らせていると扉が開いた。
そこにいたのは、


黎架『京、子…。』
京子「黎架お姉さん…。」


明らかに顔つきが昨日とは全く違う京子がいた。
瞳の輝きが全く違う。

私たちへの拒絶、だろうかと思っていると、京子は逆に一歩一歩確実に私に近づいてきた。
私の隣まで来ると、そのまま座った。
そして空を眺めていた。


黎架『京子――』
京子「黙って、話を聞いて下さい。」


そう言って、私の呼びかけを途中で止めた。

何故、ここに来たんだ?

そう聞こうとした、けどその言葉は空に消えた。
京子の目線は空から全く動かない。
揺らぎもしない。
ただ、何かを見据えるように、見透かすように。
空を、見つめている。

仕方ない、聞いてやろう。
京子の本当の気持ちを、全部。
そして私も同じように空を眺めだした。


京子「私、話を聞いてからずっと悩んでいたんです。…自分の、事で。」
黎架『…うん。』


京子は何かを語るように話し始めた。

私はただそれを聞くだけに至った。
無駄に干渉をしない方がいいのだろうと判断した。
悩んだ結果は、京子が出した揺るぎない結果。
そこに有るために揺らぐはずがない結論。
下手に意見を出して、彼女を傷つけてしまってはいけないし、さらに悩ませるなんてもっと出来ない。
こう言うときは理解して、頷きながら彼女の意志に、意思に応えるのが妥当だろう。


京子「私は、お姉さんたちから見ればただの一般人なんです。」
黎架『……。』
京子「それなら、私の見ている世界の平和とお姉さんたちの平和って違うと思って…。私たちの世界の平和が嘘のように思えて、仕方がないんです。」


確かに、私たちから見れば京子だけではなく、花やハル、沢田の母だって、みんな一般人だ。

一般人から見た世界は、大きな戦争や殺しなどという言葉とは全くではないが、無縁な存在だ。
そんな人が私たちの事を聞けば思うだろう。
"私たちの世界の平和は偽りなんじゃ、ないだろうか"と。
少なくとも京子はそう思ってしまった。
その思考はもう、


裏社会の住民のものなんだ――


京子「私は、本当の平和が知りたい。」
黎架『そ、れは』
京子「お願いします、お姉さん…。私に――」


戦い方を1から教えて下さい――と。

裏社会の境界線を、京子は越えようとしている。
彼女はもう、一般人には戻れないような道を歩こうとしている。
私達の事も、裏社会の事も重要な情報を持っている、知っている京子は確かにもう一般人ではいられないだろう。
だったらもう、いっそのこと私が彼女をこっちの世界に引き込んでしまおうじゃないか。
だって彼女には――


その資質があるのだから


黎架『――分かったよ。その頼み、請け負った。けど、私だけじゃない、みんなで教えてあげるから。』








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