01
〜夢〜
何もない静かな空間に、足音だけが響く。
月のエフェクトをイスのようにして座る少女が1人。
足音の主は少女に近づく。
その青年は微笑する。
青年はその少女を黎架と呼んだ。
気持ち悪いな、と黎架は青年に言い放つ。
コノ空間はわけある青年が黎架と話すことが出来るたった一つの空間であった。
黎架『骸。お前、身代わりを使う気だな?』
骸「そうしなければでられませんから。」
それとも君は出してくれるんですか、と全く期待がこもっていなさそうな声でそう言うと黎架は当たり前だろう、と鼻で笑う。
骸と呼ばれた青年はクフフ、と笑う。
その様子を見れば黎架は呆れた表情をし、首に掛けていたネックレスを出した。
不思議な形をしたリングが光った。
骸はそれを苦笑混じりに見つめた。
欠けたリング――その意味は誰もが知っている。
黎架『持っているんだろう?霧の、』
骸「持っているのは僕ではありませんよ。」
わかっているさ、と黎架はネックレスをまたしまった。
そのリングの意味とは、ボンゴレの次期ボスを決めるリング争奪戦の幕開けを意味した。
リングを持っているのは黎架だけではない。
黎架の弟、ラウもそのリングを持っていた。
黎架『全く、面倒な話…』
2人が気が付く頃には周囲は明るくなってきており、地面も蒼から白へと変わろうとしていた。
黎架は月のエフェクトから降りると、骸に背を向けた。
骸はただ、それを見つめた。
黎架『夜明けだな、骸。』
骸「えぇ、そうですね。そろそろ僕もお暇致しますか。」
また会いましょう、と骸は黎架の背中に言い放った。
もう二度と会いたくないよ変態、と黎架は骸を振り返ることなく手を振って言った。
何もない静かな空間に、不思議な少女とまた不思議な青年がいた。
今じゃ、その形跡も痕跡も何もないけれど。
空間に響く足音だけがそれを物語っていた――
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