目を覚めると上崎が窓側で本を読み、座っていた。
「おはようございます。お嬢様。」
『おはよう..。』
「朝ごはんの用意が出来ていますよ。その後は色々と準備が待っております。」
『ん。いつもの..。』
「はい。」
上崎はなまえにミルクティーを注ぎ、ティーカップを手渡した。
「それではお嬢様。仕度次第、広間に出てきてくださいませ。」
『はーい。』
朝の食事を済ませ、上崎の言うとおりに動く。
いつまでヘコんでいてもどうにもならないので、なまえは開き直っていた。
前に上崎が言っていたドレスを着る。
上質なシルクで、色はシルバー、胸元に大きなリボンがあしらわれているシルエットが綺麗に見れるロングドレスだった。
専属のスタイリストに髪をアップしてもらい、メイクを終えた。
『ねぇ上崎。開始時間までに3時間もあるわよ?』
「はい。今から藤真家の皆様にご挨拶に伺うのです。」
『....はぁ?』
「なまえ、準備は出来ましたか?」
『お母さま...。』
「既に先方はいらっしゃいます。...失礼のないように。ついてきなさい。」
『はい...。』
客間の大きな扉の前に立つと、中から話し声が聞こえる。
お父様の声も一緒に聞こえる。
『失礼いたします。』
扉を開けると火の灯っていない暖炉の前にソファがあり、3つの顔が私に向けられた。
「ああ、来たか。なまえ。こちらが藤真さんだ。」
「こんばんは。いやそれよりも誕生日おめでとう、かな?」
「綺麗な方で....健司にはもったいないですね。」
『初めまして。北大路なまえと申します。』
「言いにくいのですが健司は...婚約発表前には現れると思うので...。」
健司君とやらのお母さまが申し訳なさそうに言う。
『あ、はい。..』
そんなこんなで軽く話をすませ、客間を出て、時間までは屋上で涼んでいた。
秋の風は心地よい。
『ふーぅ。』
お父様とお母様は堅いと思っていたが、藤真家のお義父様とお義母様はもっと堅そうで先が思いやられる。
来週から一緒に住むとか頭がいまだについていけていない。
下の玄関には何台かの車と人がすでに集まっていた。
いつの間にかあたりも暗くなってきていた。
『めんどくさ...』
「何言ってんだオヒメサマ。」
後ろで聞きなれた声がして振り返った。
『寿....。』
「はっぴーばーすでいってな。」
『何でここに...っていうかどうやって。』
「上崎に教えてもらった。」
『上崎が...』
「それより」
寿がなまえのもとに歩み寄り、片膝をついてなまえの手を取る。
「綺麗、だぜ?」
寿はなまえの手の甲に軽い口づけをした。
『なっ...//』
「さ、上崎が呼んでたからもう行くぜ?そこまでエスコートしてやる。」
寿は3メートル先の屋上のドアに指を向ける。
『ふふっ。よりしくお願いします。寿様。』
寿はなまえの手を取り歩いた。
「お姫様、ね。」
ちょうどそこに未来の旦那様がいたのも知らずに、お姫さまは違う王子様の手を取り歩き出した。