12. 今だけは


電話に出たなまえは泣いていた。
赤司とケンカしたわけでもなく、
ただ、


“寂しい”と。


聞けば、赤司は昨日、こっちに来てたらしく、今日は帰ったみたいだ。
俺は、たとえ自分がなまえの彼氏になれなくとも、彼女が泣く姿は見たくなかった。
俺は高尾達と別れ、外へ出た。
なまえはきっと、いつもの公園にいるのだろう。


公園に着くと、なまえはやっぱり、まだ泣いていた。

『...真ちゃん。どうして?』

どうして、か。分からない。


「泣いている女を放っとけるわけないのだよ。」

『..何それ、かっこいい。』

そう言い、彼女は泣きながらふにゃっと笑った。

「思いっきり泣け、」
と肩を貸した。

『うん...』

なまえの泣く声だけが公園に響く。

『...真ちゃん、女の人の匂いがする...。』

「...そうか?」 

『...うん、どこ行ってたの?』

「...高尾に誘われて、ご、合コン、とやらを...///」

『真ちゃんが合コン?!』
ガバッとなまえが離れた。

「あっあぁ...でも、俺そーいう色恋に興味がないのだよ。」

『そっかぁ。』

と笑う彼女の顏が、どうしても、安堵、の表情に見えて、少しだけ期待してしまう。


『...ん、そろそろ帰ろっか。』

「ああ、そうだな。」

と言い、俺たちは手を繋いで公園を出た。

「..この方が、安心、するだろ?//」

『..うん!真ちゃん大好き〜!』





俺は例え時間が限られていようとも、今のこの時間を、すごく大事にしたい、と思った。


fin




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