11. あの子しか見えていない


濃厚なキスシーンを見てしまった俺は真ちゃんがとても可哀相、に思えた。
でもなまえもなまえだよな、
いくら遠距離だからって、真ちゃんに甘える、のはよくないと思う。

そして次の日、なまえはいつもと違う雰囲気で現れた。
ああ、聞いたことがある。

女性は初体験をする、と雰囲気が変わる、と聞く。
まさにそれだ。

しかもなまえは首に絆創膏を貼っているから一目瞭然だ。
こんなところにキスマークをつけるのなんて、赤司とやらは本当に鬼畜だなぁ、と思う。
真ちゃんが絶対に気付くところ、にしているのだろう。


そんなわけで部活が休みだったので、俺は真ちゃんを合コンに誘った。
いつも断られていた。
そして勿論、今日も。
だが、今日の俺は簡単にあきらめるわけもなく、無理矢理連れて行った。

真ちゃんは女性の標的となった。

4対4のはずが、1対4だ。
それでも俺は良かった。
真ちゃんが幸せになってくれれば。

もう無謀な恋、なんてやめとけよ。


「どんな人が好きなんですかー?」

「...気が利いて、元気で、裏表のない子なのだよ。」

本人は無意識で言っているみたいだが、なまえの事だよなぁ。

そして真ちゃんの電話が鳴った。
ディスプレイにはなまえの名前、が。

真ちゃんが電話に出ようとしたので、俺は電話を切った。

「何をするのだよ。」

あ、真ちゃん怒ってる。

「今、出るの?」
と聞くと、また電話が鳴った。

「貸すのだよ」と、言い、真ちゃんは携帯を取り、外に出て行った。

「何だ、緑間君、彼女いんじゃん。」

「ああ、彼女じゃねーよ。」

「...ふぅん、でも彼、すっごいその子の事、好きなんだね。」

何でこの女が分かって、なまえはそれに気づかないのだろうか不思議だ。
そして真ちゃんが返ってきた。

「...失礼する。お金はここに置いておく。」

そう言い、走って消えた。





ああ、お前には本当に、あの子しか見えてないんだな。


fin



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