濃厚なキスシーンを見てしまった俺は真ちゃんがとても可哀相、に思えた。
でもなまえもなまえだよな、
いくら遠距離だからって、真ちゃんに甘える、のはよくないと思う。
そして次の日、なまえはいつもと違う雰囲気で現れた。
ああ、聞いたことがある。
女性は初体験をする、と雰囲気が変わる、と聞く。
まさにそれだ。
しかもなまえは首に絆創膏を貼っているから一目瞭然だ。
こんなところにキスマークをつけるのなんて、赤司とやらは本当に鬼畜だなぁ、と思う。
真ちゃんが絶対に気付くところ、にしているのだろう。
そんなわけで部活が休みだったので、俺は真ちゃんを合コンに誘った。
いつも断られていた。
そして勿論、今日も。
だが、今日の俺は簡単にあきらめるわけもなく、無理矢理連れて行った。
真ちゃんは女性の標的となった。
4対4のはずが、1対4だ。
それでも俺は良かった。
真ちゃんが幸せになってくれれば。
もう無謀な恋、なんてやめとけよ。
「どんな人が好きなんですかー?」
「...気が利いて、元気で、裏表のない子なのだよ。」
本人は無意識で言っているみたいだが、なまえの事だよなぁ。
そして真ちゃんの電話が鳴った。
ディスプレイにはなまえの名前、が。
真ちゃんが電話に出ようとしたので、俺は電話を切った。
「何をするのだよ。」
あ、真ちゃん怒ってる。
「今、出るの?」
と聞くと、また電話が鳴った。
「貸すのだよ」と、言い、真ちゃんは携帯を取り、外に出て行った。
「何だ、緑間君、彼女いんじゃん。」
「ああ、彼女じゃねーよ。」
「...ふぅん、でも彼、すっごいその子の事、好きなんだね。」
何でこの女が分かって、なまえはそれに気づかないのだろうか不思議だ。
そして真ちゃんが返ってきた。
「...失礼する。お金はここに置いておく。」
そう言い、走って消えた。
ああ、お前には本当に、あの子しか見えてないんだな。
fin
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