彼と彼の彼女と私
宮地くんは、お隣さんの家の子。
私が中学校の頃にこっちに引っ越して来た時に、彼も同じ頃に引っ越してきて意気投合。
中学校時代は彼のバスケの練習にいつもついていき、休日にはよく近くの海に散歩したりしていた。

彼と私の家の間には公園にあるようなベンチがある。
これは双方の親が、もっとお互いコミュニケーションとれるようにってことで置いた。
その効果は絶大。
違う高校に通う彼とは一週間に一度、こうして今日も隣り合わせに座って一週間の出来事を話す習慣がある。
でも、最近になって宮地くんはいつもしかめっ面をしていて疲れているみたい。

『最近、部活忙しそうだねー。清志くんのお母さんが夜遅くにならないと帰ってこないーって嘆いてたよ?』

「あー..... まあ、ちょっと色々あってなー。」

『ふぅん?』

彼が言葉を濁したから、聞いてはいけないことなのかと思い、スルーした。
その時だった。

「あ!清ー!」

そう言い、綺麗な女の人が私たちの座っているベンチの前に車を止め、車を降り、私たちの所に向かってきた。
私はハイカットのスニーカーに、Tシャツ、スキニーと言ったラフな格好だが、彼女は短いワンピースにハイヒールを履いていて、私とは全く正反対だった。

彼女は私を上から下まで見た後、宮地くんの腕をくみ、「誰?」と尋ねていた。こっちの方が誰って状態なんですけどもね。

「前に話しただろ?俺の幼馴染のなまえ。」

「ああー、何か小説?書いてる子だっけ?」

そう、私は本が好きで、また小説も書いていて、将来は小説家になりたいと思っていて今の時代では珍しい文学少女である。

「初めましてー。清の彼女です!ねぇねぇ!車乗って!今から、カラオケいこー。」

私はフリーズした。今まで宮地くんには彼女なんて居なかったし、宮地くんは私が一番近い人、と自惚れを抱いてたからだ。しかも宮地くんは私の初恋の人。それは今も昔も変わらず。

「っても試合近いから今から公園で練習だし...」
「そんなの後からでいーじゃん!ねっ?」

そういい、彼にキスをした。
私はいてもたっても居られなくて、「じゃあ、またね。」そう言いそそくさと玄関に入った。



-それから1週間後。
今日はベンチに座らなかった。これは今日が初めて。窓からのぞくと宮地くんは座っていたけど、やっぱり行く気にはなれなかった。

次の日は私の高校のバスケ部と宮地くんの秀徳高校の試合で、友達から誘われて見に行くことになった。
宮地くんの試合を見に行くのは中学校ぶりで少し胸が高まったけど、あの女の人が来るのかと思うと嫌になった。
体育館に着くと、友達はまだ来てなくて自動販売機に向かうと、同じクラスの火神くんがやってきた。
「おう、みょうじ。バスケの試合見に来るなんて珍しいなー。興味あんの?」
『うん。昔、知り合いがバスケしてたから...』
と話してるところに聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「清、今日は頑張ってね。」
「ああ....」

振り返ると派手な服をまとったあの時の彼女と宮地くんがいた。

「なまえ?この前、なんで来なかったんだよ。」
そう宮地くんが言うと、彼女は目を光らせてきたので、怖気づいて、背の高い火神くんの後ろに隠れた。
「そいつ誰?」と宮地くんはいつもより低い声で言った。
火神くんは何か察したのか知らないが、「俺の彼女っすよ。」と言った。
思わず、えっと言いかけそうになったがこらえた。とりあえず、今はこの場から逃げたかったから、火神くんを引っ張っていった。

「聞いてねぇ...」と宮地くんの消えそうな声が聞こえた。

そのあと、火神くんにお礼を言い、私は友達と合流し、2階で試合を鑑賞した。
宮地くんの調子が少し悪かったのが顏を見てわかった。というか苛立っていた。
試合は引き分け。
そのあと、チアリーダーの彼女は宮地くんに抱きつこうとしたが、宮地くんはそれをよけ、タオルで顔を隠しながら出て行った。
そのあと、友達とご飯を済ませ、家に着いた。
すると宮地くんがベンチに座っていた。
何か落ち込んでいる宮地くんを、さすがに通り過ぎるわけにもいかず、隣に座った。

「...遅かったな。火神とどっか行ってたのか?」

『ううん..。友達とご飯食べに行ってただけ。』

「....そっか。」

その後は長い沈黙が続き、私は家に入ろうと思い立ち上がろうとしたら、宮地くんに腕をつかまれた。

「.......俺、最低なんだ。他に好きな子がいて、忘れるためにその子と正反対の子と付き合ったんだ。...それでも駄目だったんだ...。」

宮地くんに彼女がいようと好きな子がいようと、私にとってはもう聞きたくなかった為、振り払おうとした。
すると彼に抱きしめられた。

「.....好きだ。初めて会った時から...ずっと...。」

『......え?』

思わず、疑問の声を口にした。だって彼が私の事をそんなに想っていてくれたなんて、想像もつかなかった。かっこいい宮地くん、反対に地味な私。
そう考えていたら自然と涙が流れた。

彼の腕の力が強まった。

『......私もだよ。..宮地くんのこと....好き。』

「え?!!」

そう言うと、宮地くんはバッと私を離して、目を丸くさせている。
私はその光景に可笑しくてくすっと笑ってしまった。

「じゃあっ...火神は?!」

『あ....あれはなんかその場しのぎというかなんというか....//』

「まじかよ....。」

そう言うと宮地くんはヘナヘナとしゃがみこんで顔を隠しているが、耳は真っ赤だ。
私もしゃがんで、宮地くんの手を取り言った。




『これからは毎日このベンチで会おうね。』

そう言い、頬にキスをした。

(彼と彼の彼女と私)





prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -