今日は雨だ。
体育館の中では反面がバスケットの練習、反面がチアリーディングの練習をしていた。
どうやら普段外で練習するチア部は、今日は雨で体育館を使うらしい。
隣にいる笠松先輩にチア部について聞いたら、どうやらウチのチア部はすごい強くて有名ならしい。
休憩の合間に、チラチラ見てみると、中には俺のファンの子もチラホラいるみたいだ。
その中でもひときわ目立つ子がいた。
化粧っ気はないものの、かなり可愛い。
染めたことのない髪は真っ黒だが、綺麗だ。
そして先ほどからセンターばかりにいる彼女はきっとチームの顏、なんだろう。
その時は可愛い子、という認識だけの黄瀬だった。
次の日、俺のクラスに来たファンの子達とドアの前で話していたら、昨日の彼女がやってきた。お弁当を持って。
そしてじっと俺を見るから、ああ、俺のファンの子だったんだと思い、話しかけた。
「そのお弁当、俺にくれるんスか?」
すると女の子は目をしかめた。
『え?ごめん。これは山中くんにあげるんだけど...今日コンタクトしてないからどこにいるか分かんないんだよねー。』
「えっ」
『あーねぇそこの君。山中君いない?』
「俺だよ山中は!お前、またコンタクトしてねぇのか。あ、もしかして弁当忘れてた?」
『うん、山中ママから渡されたんだよねー。ほい。』
「さんきゅー!」
『じゃ』
そう言い、彼女は去って行った。
っていうか俺恥ずかし...。完全自惚れてる。
で、山中君とかちょーモブキャラじゃないッスか。
そしてチャイムが鳴り、ファンの子達も帰って行った。
それからというもの、意識し始めると、彼女を1日に1回は見かけるようになった。
名前を知らないあの子。
きっと山中君やチア部のファンの子に聞けば一発なんだろうけど、自分で名前を直接聞きたい気持ちもあった。
ある日、部活終わりに笠松先輩とファミレスに寄ると、彼女がいた。
ウェイトレス姿で俺達のいる席に向かってきた。
『いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?』
「あ、えっと...」
笠松先輩が固まる俺を不思議そうに見て、注文をしてくれた。
俺は勝手に口が動いていた。
「こんにちわ。ここで働いているんスね。」
「黄瀬、知り合い?」
「う『ごめんなさい、どちら様ですか?』....え?」
『あ、隣の方は知ってます。笠松君、だよね。』
「へ、俺?」
『へ?って1年の時同じクラスだったじゃん。まぁ一度も喋ったことなかったけど。』
「え?!2年生なんスか?!」
『そうだよ?で、君は誰?初めて見たけど...』
「あー、一回喋ったんスけどねぇ。俺はバスケ部の黄瀬「ちょっと!2番のテーブルにこれ、運んで〜!」..」
『はいはーい、じゃあまた学校で〜。』
そう言い、彼女は去って行った。
それから忙しそうな彼女はこっちのテーブルにもう一度来ることもなく、上がって行った。
次の日、門の前で彼女を見た。
眠そうにしている彼女は、目をこすりながら歩いている。
そして彼女は僕に気づき、はにかんだ。
『おはよう、黄瀬くん。』
昨日、俺の名前聴こえてたんだ....。
「おはようございます。..あの、なっなまっ名前聞いてなかったッス..//」
噛んでしまった!
恥ずかしい。
『みょうじ#name1、だよ。よろしくね。』
これが恋に発展するのはまた別のお話。
(あの子は誰?)
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bkm