そんな壁ぶち壊しちまえ!
「え?ごめん、もう一回言って?」
バタバタと走ってきた一樹に言われた言葉を繰り返すように頼んだ。
「だから…翼が生徒会室ぶっ壊しそうだから一緒にこい!」
「…えー、」
何だかよく分からない理由で生徒会室に連行される私。
「そういうときの担当は颯斗でしょー…、」
「颯斗じゃ止まらないからお前に頼んでるんだ!」
「え…、もしかしてほんとにやばい感じなの?」
「ああ…、木ノ瀬も来たんだが止まらない…っておい!」
一樹から途中まで話しを聞いて、私の直感がやばい、と感じとった。
引っ張られていた腕をふりほどいて全力疾走。
階段を駆け上がって生徒会室に入ると月子がこちらを向いた。
「せんぱっ…、」
今にも泣き出しそうな目でこちらを見る。
「翼は!?」
「先輩!こっちです!」
颯斗が必死に翼を押さえているのが見えた。
「翼!?大丈夫なの!?」
翼に駆け寄る。
その隣には梓に押さえつけられた知らない男子生徒がいた。
「何があったの…?」
「この男子生徒が貴方の悪口を言って…翼くんが怒ったんです」
何があったのかを、簡潔に述べてくれた颯斗。
「翼…、」
近寄って顔をのぞき込むと翼は涙をぼろぼろと零した。
「ごめん…、だってこいつが悪口言ったから許せなくて…、」
翼のカーディガンにはすでにたくさんの染みができていた。
「馬鹿っ…!私の所為で翼が苦しい思いしても何も嬉しくない…!」
そう言って一発、平手打ち。
その後にぎゅうっと身体を抱きしめた。
「そういう奴はほっといていいんだよ…翼が苦しい思いする理由なんかない。
私は、翼と一緒にいれればそれでいいの」
そう言うと何か吹っ切れたように「ありがとう」と彼は言った。
「もういいや、色々ごめん。」
そう言って見知らぬ男子生徒に謝った翼は一目散に私に飛びついた。
「ばいばいー!さよなら!」
翼は窓から叫んだ。
きっとそれは自分に対してだったのだろう。
<そんな壁ぶち壊しちまえ!>
(それで)
(早く私のところに戻ってきて!)
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『さようなら』様に提出させていただきました。
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[mokuji]
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