砂糖漬けの愛をどうぞ。

「今日は…」

私の部屋のカレンダーにでかでかと付いたハートマーク。

そのハートは9月15日にピンク色で付いている。

私の大切な彼、颯斗の誕生日。

「えっと、音楽室に来てください…っと。」

『音楽室に来て欲しい』という内容のかかれたメールを送信する。

今日は颯斗のためにピアノを弾く。


私達が出会ったのはとあるピアノ教室。

その時に私が弾いた下手くそなピアノを彼は『お上手ですね、僕はとても貴方のピアノ好きですよ。』と言ってくれた。

颯斗は覚えているのだろうか。


そんなことを考えながら音楽室へ向かい、

ピアノの前に座る。

がらっ

「失礼しまっ…もう来ていたのですか、相変わらず早いですね、名前は。」

「うん、わざわざ来てくれてありがと」

「それで今日は…?」

「あのね、お誕生日おめでとう。」

「っ…!」

忘れていたのか驚く様子の颯斗。

「…そうでしたね。 わざわざ覚えていてくれたのですか?」

「うん、彼女としては覚えておきたかったしね。 それで、プレゼント。 聞いてくれる?」

「…? はい。」

聞く、という言葉が不思議だったのか少し間を開けて返事をした颯斗。

不思議そうに近くの椅子に腰をかけた。

「颯斗のために送る曲だよ」

そう言って弾き始めたピアノは綺麗な和音を奏でていた。

そして弾き終えた時には颯斗は大きな拍手をくれた。

「…この曲は…あのときのですよね?」

「覚えてたんだ、」

「もちろんです。 僕が忘れるわけありません、あの時から貴方のことがずっと好きだったのに。」

「! 颯斗…」

「今日はありがとうございます、…好きです」

躊躇った後何事もなかったように付け足されたその一言が愛しかった。

「馬鹿っ…! 私もだよ!」

悔しかったから、

そう言って思い切り抱きついてやった。

<砂糖漬けの愛をどうぞ。>

(最高の誕生日と)

(ともに…)

[ 42/55 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -