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恋のライバル発言!?

「神矢さん、まー(どこ)行きたい?映画とか、カフェとかでもいいんどー。映画なら前からCMしてる漫画原作のヤツがちゅー(今日)からやし、国際通りにあるカフェならマンゴー乗せパンケーキがでーじ人気らしいさぁ。あ、それとも水族館?美ら海行ったくとぅある?そこでもいいさー」
「お、オォ…」
「時間なら沢山あるし、わんが連れてけそうな場所ならどこでも良いから」
「あ、アリガトウ…」

うちの目の前には超絶スタイリッシュな私服の平良くん。
平良くんはこないだの比嘉祭のミスターコンでお世話になった…というか迷惑をお掛けした、隣のクラスのイケメンくんだ。
そんな平良くんと何故か日曜日の今日、共に町へ繰り出している。
なんでかって?

「なんか神矢さん、緊張してる?せっかくのデートなんだからもっと気楽にして欲しいさぁ」
「お、おうぅ」

そう、何を隠そう!生まれて初めての!「デエト」!!なのである!
なんか昨日急に平良くんから連絡が来て、トントン拍子に一緒にお出掛けする予定が組まれたのだ!
いや、分かってますよ?分かってるんですよ??
デートなんてうちの人生には無縁の言葉を使われてドキがムネムネしてますけど、人気者イケメンな平良くんにとってデートなんて普通のお出掛けと変わりないんだって。
デート=異性とのただのお出掛けなんだって、分かってますよ?
連絡くれた時にも言ってくれてたけど、今日はミスターコンの打ち上げみたいなモンだ。
それなのに緊張するとかね、ナニ勘違いしてんだって思うよね!
すんませんねー!人生の経験値低くて!

「と言うか、神矢さんの私服初めて見たさぁ」

平良くんがうちの方を見て言ってきた。
そりゃあね、一緒にお出掛けすんの今日が初めてだもんね。

「なんか…」
「な、なんか!?どっか変すかね!?」

平良くんがうちをまじまじと見るもんだからビビる。
ヒィー!男の子とお出掛けなんかせーへんもん、こういう時の格好って分からんのだよ!
母ちゃんに相談しながら服選んだから突拍子もない格好ではない、とは思うけど…!

「あ、いや。よく似合ってるんどー。ちゅらかーぎー(可愛い)やさー」
「ちゅら…?」

なんだっけそれ。聞いたことあるよーな無いよーな。

「ああ、可愛いって意味な」
かわっ!?

そうか可愛いって意味だったか!
うちには縁のない言葉だからコロッと忘れてた。
それより、なにサラッと言ってくれるんだこのイケメンは!?
まずね、比嘉中に転校してテニス部に関わって褒められたことなんかほぼほぼ無いからな!
テニス部のマネージャーしてる時点で死ぬほど褒められてもいいと思うんだけど。
とりあえず服の選択は間違ってなかったらしいぞ!

「そんなそんな、うちなんてノーマル平凡モブ顔ですから!もうイケメンを極めた平良くんの横なんて畏れ多くて並べないよ!」
「極めたとか言い過ぎさぁ」
「いやいやいや!うちは本心言ったまでだよ」

平良くんはスタイルもいいし背も高い。背は木手くんと同じくらいか?
サラサラ黒髪だし肌もいかにもスポーツマン☆って感じに日焼けしてるのが好印象だよね!
まあ沖縄人だから比較的みんな色黒ですけどね。
甲斐くんとか真っ黒だものね。って、甲斐くんはどーでもいいか。
とにかく、平良くんはミスターコンの他薦率ナンバーワンだけあって服もスマートに着こなしてる。センスの塊だわぁ。
…という感想を、口下手なりに平良くんに伝えておく。
きょとんとしてた平良くんだけど、直ぐに笑ってくれた。

「ははは、そこまであびられる(言われる)と照れくさいさー。やてぃん、神矢さんに褒められると嬉しいんどー。にふぇーどな」
「い、いえいえ」

ううぅ、笑顔が眩しいぜ…!
爽やかかよ。受け答えもイケメンかよ。

「で、どこ行きたいか決めた?」
「エッ?あ、あー…」

急に本筋に戻されて困る。
どこまで決めていいものか。
平良くんとはそこまで打ち解けてもないと思うし、それ以前にミスターコンより前まではたぶん互いに認識すらしてなかっただろーし。
そんな平良くんに対してホイホイ自分の意見とか、なんか言い難いぞ…!
これが平古場くんとか甲斐くんとかだったら気にせず言えるのにね!
奴らには申し訳なさとか微塵も持ってないもんね!HAHAHA!

「んー、ならカフェにする?甘いもの、しちゅん(好き)?…じゃなくて、甘いもの好きか?」

わざわざ言い換えてくれた。平良くんマジ優しい。

「うん、好き」

甘いものも美味しいものも好きです。
だから肥えるんだとか言わない!

「よし、決まりやっさー」

にっこり笑った平良くん。
そしてなぜかうちの手を取った。

「えっ?」

えっえっ?なにこれ?
手ぇ繋がれてるッ!!?
今とても自然に手を取りましたね!?
うっわぁーこれがリア充のやり口かぁ!恐ろしい!あな恐ろしいっ!!

「…わっさん。イヤだった?」

うちが余りにもブサイクにあたふたしてたせいか、平良くんが困った顔になってしまった。

「い、嫌とかとんでもない!その、な、慣れてないというか…手とか繋いだことないと言うか…」

おっと焦って「ワタシ交際経験とかないでーす☆」とカミングアウトしてしまった。

「そうなんばぁ?じゃ、わんが初めて?」
「ま、まあ…」
「そうかぁ。…なんか嬉しいさー」
「う、嬉しいの?」
「おー」

なんとも爽やか〜に笑った平良くん。
そしてぎゅーっと、これまたナチュラルに手を強く握ってきた。

「お、うぉ…」

な、なにこれ、超ハズい!
こういう時って慣れた子はどんな反応すんの!?するべきなの!?
男女関係レベル1のうちには分かりません!助けて先生!!

「じゃ、いちゅんどー」

平良くんは手を離すつもりないのか、そのまま歩き出した。
恥ずかしいやらどうしたらいいのやら…!
と、とにかく、変な目で見られないよう気を付けよう…!




「ハァー…」

平良くんとの名ばかりの「デエト」の翌日。
うちは教室で頬杖つきながら大きく息を吐いた。
もうなんか、夢のような体験だったわあー。
昨日はカフェ行ってあまーいおいしーいパンケーキを食べ、その後はウインドウショッピングでいろんなお店を回った。
しかも大半、平良くんの奢りというね!
さらっと財布出すとかさー、彼は本当に同級生なのだろうか。
木手くんとかも同級生か疑わしいところだけどな!

「ぬーよ。ため息なんか吐いてうっとうしい
「うっとうしいって平古場くん、開口一番ひでーな」
「やーのテンションが低いと気になるんだばぁよ。なー凛?」
「たっ、たー(誰)もんなくとぅ(事)あびてねーだろ、裕次郎!ただ目障りなだけさぁ!」
「ひっでーな」

相変わらず平古場くんはお口が悪いことで!

「凛じゃねーけど、確かに涼音がため息とか珍しいやー。なんかあったか?」
「え?」

甲斐くんに聞かれたけど、うちは賢いからちょっと考える。
ただ昨日の滅多にないレア体験の余韻に浸ってただけなんだけど、この2人、なんでか平良くんとウマが合わないもんなあ…。
ミスターコンの時から何かとバッチバチだったもんね。
理由を聞いても教えてくれないから聞かんけど。
とにかく、その平良くんの名前を出そうもんならまた訳もなく機嫌が悪くなりそうだから言わないでおこう。
まあなんて涼音ちゃん賢いのかしら!
そこにシビれる!あこがれるゥ!

「…ベツニー?ため息つきたい日もあるさ。にんげんだもの
「…よく分からん」
「裕次郎、分かる必要なんかねーんどー。こいつのあびてるくとぅは九分九厘訳が分からんからなぁ」
「九分九厘ってそれほぼ十割やんけ!もっと分かるだろ!?」
「いや分からん」
「確かに」

確かに、じゃねーよ甲斐くんこの野郎!
あんたの行動とか考えも九分九厘分からんからね!?

「騒がしいですね。あなた方は静かにしている時が無いんですか」
「ウェッ、き、木手くん?」

気付いたら真横に木手くんが立っていた。
何故ここに。ここ2組なのに。

「おー、どうしたんばぁ木手?」
「午後練について少し連絡事項がありまして。今日俺は委員会で遅くなりますから、それまでの間の練習メニューをまとめておきました。俺が行くまでにこれを済ませておいてください」

そう言って机の上にひらりと紙を1枚置いた木手くん。

「うっわエグッ

あ、ヤベつい言ってしまった。
だってA4サイズの用紙にチョーみっちり文字が書いてあるもんだから。
そんなに小文字で書ける?ってくらいめっさ書いてある。エグい。

「どんだけあるんだばぁよ…」
「これやるだけで日ぃ暮れるさー…」
「何を言っているんですか。これは俺が部活に行くまでにこなす量ですよ。言わばウォーミングアップのようなものです」
「ウォーミングアップぅ!?」
「これがか…」

あからさまに平古場くんと甲斐くんのテンションが落ちた。
ははっ、愉快なもんだ!
うちはカンケーないから他人事で見れるから気楽だわー!

「そしてこれが神矢クンの分です。ここにある仕事は片付けるように」

前言撤回ぜんぜん気楽じゃなかった。
ばさっと紙を渡された。

「ブエェなにこれ!?3枚もあるじゃん!?多ッ!しかもさっきのより字ぃ細っ!!」
「これでも省きに省きを重ねたんですがね」
「省いてこれかい!」
「神矢クンはただでさえ愚鈍ですから事細かに指示をしないと動けないでしょう。ゾウリムシでも分かるように書きましたから貴女もちゃんとこなすように」
ゾウリムシて

悪口の天才かよ木手くん。
人と単細胞生物を一緒くたにしないで欲しい…。

「という事ですから、抜かりのないように」
「しんけんか…」
「はぁー…」
「え゛ー…」

うちと平古場くん、甲斐くんはハッキリ不満を顔に出す。
でも文句を言わないのは木手くんが怖いからですね!何と分かりやすい!
あーあ、今から既に気が重いわ…。

「…それと、神矢クン」
「あ?何。…これ以上仕事増やされても困るんだけど!?」
「そうではありません。これ以上増やしたら確実に終わらせられないと分かっていますから」
「…じゃあ何?」
「昨日、国際通りの辺りにいましたか?」
「は?」

思いもよらない質問だぞ。

「いたけど?」
「そうですか」
「ぬーよ永四郎、その質問?」
「昨日似た人を見かけたので」
「見たら涼音だってくとぅくらい分かるだろ?分かりやすいちら(顔)してるし」
分かりやすい顔とは。それは褒めてんの甲斐くん?」
「褒めてるさー?やてぃん、分かりやすいちらと言うか見た目っつーの?ちらは地味やしが(だけど)中から湧き出てくる自由さで気付くっつーか」

自由さについては甲斐くんにとやかく言われたくない。
湧き出るほどのフリーダムさなんか持ち合わせてないからな!?

「神矢クンだと確信が持てなかったんですよ」
「確信?」
「ええ。男の方と手を繋いでいましたから
「ブッ!!」
「はっ!?」
「はあっ!?」

ゲェ、見られてたのか!!
しかもよりによって木手くんとかクソめんどい奴に!

「て、てぃー(手)繋いでたってどーいうくとぅさぁ!?」
「たー(誰)よ、そのいきが(男)ってのは!?」
「うヒィ…!」

ほ、ほらなー!木手くんが余計なこと言うから!
また甲斐くんと平古場くんの謎の怒りがうちに向く!!
うちより15センチ以上デカいんだから揃って詰め寄られたら怖いじゃないか!
だけどここで素直に平良くんに誘われて〜とか言ったら余計こじれる気がする…!
幸いまだ木手くんの口から平良くんの名前出てないし!
うん。よし!誤魔化しておこう!
あー相変わらず涼音ちゃん賢ぉい☆

「エート…お、男って言ってもアレですよ?親戚の人だよ親戚!」
「…親戚ぃ?」
「そーそー!木手くんは男の方って言うけど、背は高いから大人っぽく見えちゃっただろーけどあのコ全然年下なんだヨー!昔っから仲良くて手を繋ぐとかしてたから、昨日はちょっと昔を思い出しただけでェ」
「…そうなんばぁ?」
「…」

よ、よし、甲斐くんは騙せそうだ。
平古場くんはまだ疑る目をしてるけど、実際現場を見てるわけじゃないしゴリ押しすれば…!

「何故そんな見え透いた嘘をつくんですか。親戚かどうかは知りませんが彼は年下ではないでしょう。あれは3組の」
だァー!!?木手くんシャラーップ!!」

べち!

「うッ」
「げっヤベ!」

黙らせるために反射的に手ぇ出したら張り手よろしく木手くんの顔面をはたいてしまった!
油断してたのか、いつもなら避けるはずの木手くんにクリーンヒットしてしまった!

「……何をするんですか」
「ひ、ひいい…!」

ゴゴゴゴゴ…!と木手くんの周りから音が聞こえる…!
なんで避けないんだよ!避けろよ気が利かないな!

「ひ、平古場くん、へるぷ…」
「へるぷ、じゃねーらん!」

べし!

「あでっ!?」

助けを求めて平古場くんのとこ行ったのにはたかれた!

「な、なんで叩く!?」
「そんなくとぅどーでもいい!」

いや良くはないだろ!?
人を叩いといてどーでもいいって!理不尽か!

「涼音ゆくし(嘘)ついたんばぁ!?何でよ!?」
「な、何でって言われましても…って甲斐くん近ぇ!近い近い!こっわ!」
「怖くないだろ!3組のたー(誰)よ!?わったーの知ってるヤツか!?」
「しっ…知って…」
「知って!?」

木手くんは禍々しいオーラ出てるし平古場くんは叩いてくるし甲斐くんは詰め寄ってくるしぃ!
なにこれここにいる人みーんな怖い!
誰でもいいから助けてえぇ!
知念くんか慧くんならなお良しー!!

「…ぬーしてるんばぁ?」
「!」

そこに鶴の一声が!
知念くん!?それとも慧くん!?

「って、た、平良くん?」
「…取り込み中だったかー?」

そこに居たのはマイエンジェルの知念くんでも慧くんでもない、イケメン優男の平良くんだった。
声掛けたことによってうちら計4人の視線がこぞって集まったせいで困った顔しちゃってる。
それは困るよね、4人中3人は機嫌悪そうな顔してるもんな!

「と、取り込み中と言うか…」
「なんでやーがここにいるんばぁよ」

うちの言葉を遮って平古場くんが言った。
おーっと、すこぶる目つきが悪い!
ほんとに平良くんとはウマが合わないらしいな。
前世で親でも殺されたのだろうか。

「神矢さんに用があってなー」
「え、うち?」
「何の用よ?」
いや何故甲斐くんが聞く。うちに用って言ったやんけ」
「ろくな用じゃなかったら聞く必要もねーだろ?」
「何故それを甲斐くんが判断する必要がある。ご、ごめんね平良くん、相っ変わらず失礼な奴らで」
「ははは、神矢さんが謝らなくてもいいんどー」

こんな失礼な奴らを笑って受け流せるとは。
大人だなぁ平良くん!

「用ってあびてもお礼言いに来ただけやし」
「お礼?」
「おー、ちぬー(昨日)のくとぅ。付き合ってくれてにふぇーどな」
「「ちぬー!!?」」
「げっ!」

ご本人からネタバレきてしまった!
うちがせっかく隠して誤魔化したってのに!

「神矢!ちぬー一緒にいたってのはこいつなんばぁ!?」
「全然年下でも何でもねーだろ!」
「いいいいや、違っ、そーいうのじゃ…!」
「違わなくないじゃないですか。俺が見たのも彼ですよ」
「きききき木手くん!!」

おまっ、余計なことを!!

「涼音ッ!」
「神矢!!!」
「ひっひえぇ!すいませんんん!」

も、もうイヤや!
というかなんでこんな怒られなきゃいかんの!?
ワタシ悪イコトシテナイー!!

「…なんか大変なくとぅになってるなぁ」
「まあ、騒がしいのは日常茶飯事ですがね」
「もしかして、わんぬ(の)せいか?」
「そうでしょうね」
「はは、否定しないんだな木手」
「事実ですので。…で」
「ん?」
「ん?ではないでしょう。昨日、彼女と居た理由ですよ」
「神矢さんか?あれ、一緒だったって知ってるんばぁ?」
「偶然見かけたので」
「成程な。…気になる?」
「俺はどうでもいいんですがね、聞かないと平古場クンと甲斐クンがおさまらないと思うので」
「そうだ!わったーが納得する理由がないんなら許さねーんどー、涼音!」

うちかーい!
ホント、どうして怒りの矛先がうちに向くんだよ!
訳が分からないよ!

「いや、まじで大した理由じゃなくて…!」
「そうそう、ただの打ち上げやさ」
「…打ち上げ?」
「こないだのミスターコンの。急遽神矢さんに相手役頼んだからそのお礼を兼ねて誘っただけさー」
「そ、そうそう!ほんとそれだけ!」
「それだけで手を繋ぎますかね」
グッ

く、くそー木手くんめ!
痛いところをつきやがる!

「いや、あれは…!」
「あれはわんが勝手にしたくとぅさぁ。神矢さん困ってたけどな」
「た、平良くん…」
「なんか気ぃ遣わせてたみたいだしな?」
「い、いやいや、気を遣ってなんか…!平良くんいい人だから、それはもううちなんかが一緒にいたらそれこそ迷惑な気がして」
「ははは、それを気を遣ってるっていうんやし」
「う」

うちが「何も言えねー」状態になってるのを見て、平良くんはまた笑った。

「…そういうくとぅだから。あんま神矢さんに強く当たるのは止めといて。可哀想やし」
「…」
「…ふん」

平良くんが優しく言ってくれたっていうのに、甲斐くんはそっぽ向くし平古場くんは顔顰めている。
分が悪くなるとだんまりを決め込むの?子供か!

「じゃ、それを言いに来ただけだから。わんは戻るな?」
「あ、ああ、ウン…な、なんかごめんね」
「気にするなって」

そう言って平良くんは教室から出て行った。

「…では俺も戻りますか。それ、忘れないでくださいよ」

机に置きっぱなしになったみっちり午後練オーダー用紙を顎で示してから、木手くんも出て行った。
顎で示すなよ態度悪いな!
そんなの元からか!

「…」
「…」
「……」

そして残された、うちら2組のメンツ。
い、嫌ーな空気。

「…やっぱりいけ好かないさぁ」
「だーるなぁ。どっか上から目線な気ぃするんどー」

2人揃ってフンっと鼻息も荒く吐き捨てている。
やっぱり平良くんと相性がクソ悪いんだよなぁ…。

「…やーも趣味悪いさー」
「は?趣味?なんの話っすか、平古場くん」
「あんないきが、どこがいいんだばぁよ」
「あんなって、平良くんのこと?いや、いいというか…」
「その気が無いんなら誘われてもついて行かねーだろ、普通」
「いやいや、せっかく声掛けてもらったのに断れなくない?」
「わんが誘う時いっつも否定的だろ!」
「それはいつも甲斐くんがうちの返事関係なく連れてくからだからね?」

反抗したくなるのも仕方ないじゃないか!
成功した試しないけどな!

「まあ、平良くんはチョーいい人だと思うよ。優しいし、どっかの誰かさんたちと違ってチョー優しいし、優しいし?」
「あてつけかよ…」

あてつけだよ?

「でも優しいからこそ、やっぱりどっか気遣うんだよねえ。イケメンだし優しいし、うちとはレベルが違うじゃん?ああいう人にはうちなんかよりカッワイー子のが似合うと思うわけよ。ミスターコンで君らの相手役してた女の子みたいなさー」

ほんと、あの時のうちの場違い感と言ったらなかったよ。
平良くんの横にはうちみたいな平凡ノーマル人種なんか似合わない似合わない。

「格上の人にわがままとか言えんやん?どこ行きたいーとか、なにしたいーとかさ。平古場くんとか甲斐くん相手なら好き勝手言えんのにね!」

この2人なら包み隠さず気も遣わずボロックソに言えるもんね!
木手くんには言えないけどな。

「…」
「…」

って、やべ。2人が口閉ざした。
なんで自分達には好き勝手言えんだよ!とか怒ってくる?
あっ、遠回しに2人が格下だって言ったのバレた?
くそ、せっかく怒りが鎮火したところなのに!

「…ま、だろーな!」
「その辺のやつがやーのワガママについていけるとも思わないしな」
「えっ?あ、おぉ…?」

怒られなかった。
その上なんでか機嫌が戻ってるような…?
えぇ?訳分からん!さっきまであんなにキレてたのに!?
こいつらの方がワガママじゃねーか!

「これからも涼音のワガママに付き合ってやるさー」
「いやうちワガママではなくね?うちよりあんたの方が数万倍ワガママ…ってあばばば!?

甲斐くんにぐしゃぐしゃっと頭を撫でられた!
撫でられてはないな?撫でるってレベルじゃねーな!

「ちょ、やめっ…やめんか!」
「ハハッ、からじ(髪)すげーくとぅになってるさぁ」
「神矢髪質悪いからな、絡まったら終わりだな」
「いや笑ってんじゃねーよ甲斐くん!あと髪質悪いとか言うなよ平古場くん!」
「事実やし」
「だあぁ!オメーもかぁあ!やめーや!!」

甲斐くんのみならず平古場くんまでも人の頭をぐしゃぐしゃしてきやがった!
理不尽に怒られるよりかマシだけど、これはこれで腹立つー!

「離れんかい!くっそ!お前らも同じ目にあわせてやる!毛根殺してやる!!」
「ははっ、涼音が怒ったんどー」
「おーまぶやーまぶやー」
「クソがぁ!!」


などと、涼音が喚き散らしていた頃。

「平良クン」

木手が呼びかけた。
それに反応して平良は振り返る。

「ん?ぬー(何)?」
「単刀直入に聞きます。貴方は神矢クンに気があるんですか?」

木手の直球な質問に、平良は目を丸くさせた。

「…じゅんにはっきり聞くなぁ」
「まどろっこしいのは嫌いなのでね」
「はは、それっぽいさぁ。…ま、そうだな。好きだな」

平良も包み隠さず答える。
笑ってはいるが決して冗談を言っているふうではない。
しかしそれを聞いた木手は別段驚いた様子はなかった。

「驚かないの?」
「ええ、まあ。そんな気はしてましたから」
「そんなに分かりやすかったか?…いや、いいかぁ。やてぃん、今のままじゃ神矢さんに近付くのもままならんやー」
「そうでしょうね」

平良は肩を竦めて笑う。

「わんなんかよりあぬ2人の方がよっぽど分かりやすいさぁ。平古場も甲斐も神矢さんのくとぅ好きなんだろ?」
「…さあ。俺の口からは何とも」
「そうかぁ。ははは、何にせよ手強いライバルになりそうさぁ」
「…聞きたかったのはそれだけです。引き止めてしまい申し訳ありませんでした」

木手は軽く頭を下げてから、平良に背を向けた。
だが木手が一歩を踏み出す直前に平良が声をかける。

「木手もライバルになりそうか?」

ぴたり、と木手は足を止めた。

「まさか」

振り返りもせずに木手は一言で返す。
それ以上は何も言わずに歩き出した木手の背中を見送り、平良は小さく笑った。


おわり

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