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授業中は静かにするべきなんです


2組はだーいぶユルいらしく、マジで友好的に接していただけた。
生徒に転校生が連れてこられたっていう変な状況にも突っ込みは入れられなかった。
それはそれで状況を疑ってしまうが、まあ受け入れて貰えたみたいで良かったよ。
約一名を除いてね。


06 授業中は静かにするべきなんです


あれから先生が教室に戻ってきて、改めてささっと簡単に紹介してくれた。
これが正しい転校生の紹介だよね。
んで、うちの席を教えてくれたんだけど…。

「まさかこんな事になるとは……」
「ぬーよ、何か文句でもあるんばぁ?」
「…いや、何にも」

横から来た不機嫌な声に首を振って返す。
そう、横にはあまり関わらないと宣言された平古場くんが。
平古場くんの隣とか…。
対立してるヤツと隣になるとか、王道過ぎて笑えねえよ!
しかも教室の隅で、隣が平古場くんしかいない状態。
最っ悪じゃないかこれ。

「わんの方が最悪やっし」
「心読むなよ!」
「全部口に出てるっつーの」
まじでか。
「バーカ」
「くっ…!」

普通に言われると大変ムカつく。
この金髪野郎……!

「よし、じゃあ授業始めるぞー。教科書34ページ開けー」

うちの怒りなど露知らず、先生は授業を進めていく。
あ、そういや教科書まだ受け取ってなかったんだっけ。
筆記用具しかねぇや。
うーわめんどくさい。
だけど仕方ないか…。

「………平古場くん」
断る
なぜ!?う、うち何にも言ってないし!」
「どーせ教科書持ってないから見せて欲しいんだろ」
「………うん」
断る
「なんで!?おまっ、心狭いな!」
「狭くないっつーの!さっきあびただろ、あんまりわんに関わるなって」
「知ってますよ?こっちこそ関わるつもりはないぞ、平古場くんなんかと!」
「なんかってぬーよ!関わりたくないって分かってんなら良いやっし。だから見せたくないだけさー」
「はぁ!?ちょ、あんたバカ!?そうかバカなのか!関わらないと教科書見せないとは違くないか!?違うよね!?このばかやろう!」
「一緒さぁ!つーかわんふらーじゃねーし!」
「おめー充分バカだし!」
「ふらーはやーの方あんに!」
「うちは教科書見せないくらい頑固なバカじゃありませんー」
「なっ……テメェ!」
はいはい神矢―平古場―。続きは廊下でなー」
「……」
「……」

転校初日、最初の授業で廊下に出されました。
イラついたから廊下に出るついでに寝ている甲斐くんの頭をひっぱたいてやった。
つーか授業始まって5分で寝てんじゃねーよ。

「……」
「……」

廊下に出されて、うちも平古場くんも静かになった。
むしろ2人揃って廊下に追い出され、口喧嘩する勢いも削がれ話す事がなくなった。
静かでなんか気まずい。
な、何か言わなければ。

「………風紀委員が廊下に出されてるとか愉快なもんだね。ププー」
「かしましい」
「いたたたたた」

髪の毛引っ張るなよ。
こいつはなぜ攻撃をするんだ。
過激派か。
このやろう。

「…はー、一気に冷めたぜー…」
「え?あぁー…そうだね、廊下って日当たり悪いもんね
あらん
「は?」
「…違うって意味さー」
「あ、そう」

まだまだ先は長いなぁ、琉球方言。

「ったく……やーと話してるとちぶる…頭痛くなってくるさー」
「はっは。平古場くんが無駄に食って掛かってくるからだろー。平古場くんってアレ?好きな子ほどいじめたくなるタイプ?
吊るすぞテメー
すんません

ほんの冗談だったのに。
冗談も通じずふいっとそっぽを向いた平古場くんを見て、溜息が出る。

「…はぁ。もうさぁ、関わりたくないと思ってても良いからさ。せめて日常生活に支障が出ない程度には対応してよ。そんなんじゃうち困るんですけど」
「勝手に困ってれば良いだろー」
「ばかったれ。さっきみたいに一々食い掛かって喧嘩になったらたまんないし!毎回毎回廊下に出されたいのか!」
「あー………それもにりー(面倒くさい)な……」
「(にりー?)…と、とにかく、嫌なら最低限の会話くらいしようよ?」
「……最低限、な。無駄な話とかしても無視するからな」
「ちょ、おま、偉そうだな」

しかもこうやって話してる時点で充分口はきいてるんだけどね。
まったく、よくわからないヤツだなぁ。

「…つーか、そうだ。ねえ平古場くん」
「ぬーやが。話しかけるなって言ったろ」
「いや…さっき職員室行った時さ。なんかうちもうテニス部のマネージャーにされたようです」
「はあ!?もうかよ!?つーか結局マネージャーになるんばぁ!?」
「うん。てか、なんで驚く。マネージャーに推薦しやがったのは君だよね」
「あ…あぁ…あの時は勢いであびたっつーか…」

自分の言葉に責任を持っていただきたい。

「まあ、転入までに時間もあったしうやむやになるかなぁって思ったけど…さっき職員室でバッタリ甲斐くんと遭遇してさ」
「…やくとぅ(だから)朝、裕次郎と一緒にいたのか」

やくとぅ…

「……うん」

とりあえず頷いてみた。
また分からない顔してイラついた目で見られるのは嫌だからね。
あれおかしいな、うち悪くないのに。

「そこで甲斐くんがいきなり先生にうちをマネージャーにすること頼みだしてさ。先生もなんか納得して。あの先生変にフリーダムすぎるよね」

というかこの学校自体フリーダムが多過ぎるよ。

「裕次郎…」
「というわけで、うちは悪くない。責めるなら甲斐くんか先生を責めろ。それかうちをマネージャーに任命したオカンかうちを拉致した平古場くん自身を責めろ」
「う……」

どうやら後悔をしているようだ。
ざまぁ。

「ふっふーん。うちを睨んでもうちは反省しないからな!」
「…いや、わんのせいじゃねーらん。誘った時に断らなかったやーが悪いんどー!」
「開き直るなよ!どう考えても責任はあんたらにあるんだから、」
「…かしましいさぁ。授業中に廊下でぬー(何)してるんばぁ?」

え?
声を掛けられ、ふと視線を向ける。

ぎゃあっ!?

な、なんかでっかい人が!!!

「ぬーやが、知念かよ。…別に何でもないんどー。コイツに巻き込まれただけさー」

ち、知念?
…あ、知念寛くんか…。
うちが唯一フルネームが分かる人だ。
平古場くんも聞いたから分かるけど。
何かとムカつくから脳内からその名前排除してもいいかと思うけど。

「コイツ?」

そう言った知念くんがうちを見下ろしてきた。
うわあああでっかいよー!怖いよー!見下ろしてほしくないよー!!
怖いけどこの人身長の割にすげー細いから、殴ったら骨とかすぐ折れそうだよー!

「…神矢かー」
「はっ!…あ、お、覚えててくれたんだ」
「んー…まぁなー」
「あ、ありがとう」
「そりゃ一応はマネになるヤツなんだから覚えたくなくても覚えるっつーの」
黙れ平古場。風紀委員が金髪とか、お前が取り締まられろよな!」
「うっせ!!」
「2人とも落着けー。…神矢はくりから世話になるマネージャーさぁ、名前はちゃんと覚えるさー」
「ち、知念くん…」

うちの頭でインプットされた。
彼は良い人だ。

「世話ねぇ…むしろわったーが神矢の世話する方だろ。でーじあんまさんやっしー」

平古場くんは悪いヤツだ。

「つーか、やーは何でここにいるんばぁ?知念」
「あぁ…先生に言われて授業で使うプリント、取ってきただけだばぁよ」
「えらいなぁ知念くん…。授業中に教科書すら見せてくれなくて喧嘩になって、挙句の果てに廊下に出された誰かとは大違いだね!!ね、平古場くん!
「…どれだけ贔屓してんだよ、やー」

ジャイアニズムをする人より優しい人が好きなんです。

「あー…まぁ、とりあえず…授業中は静かんかいしてろよ?」
「へ?」
「静かに授業受けろってくとぅ(事)さー」
「あ、なるほど。…うん、分かった。なんかごめんね」
「んー」

それだけ言って知念くんは行っちゃった。
いい人だったなぁ。
顔超怖いけど。

「背は高すぎるけど、知念くんて性格優しいね!それに反して平古場くんて性格悪いね!
「どんだけ知念気に入ってんだよ。…………なんか、つまらねーらん」
「は?」
「…なんでもねー」
「いや、なんでもあるような顔してるじゃん」
「かしましい!」
「いって!!」

ガツン!と思いっきり殴られた。
何でだ。
日に日に平古場くんが分からなくなる。
こいつマジでなんなんだ。
あれか、情緒不安定ってやつか?
もう少しまともで落ち着いてる人を風紀委員にすべきだとうちは思います。



つづく



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