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クラスメイトとは仲良くあるべきなんです


転校初日。
オカンがマネージャー業は部活申請してからで良いって言ってたし、仕事は本当に一切しなかった。
というかそれ以前にあのテニス部の顔触れとはまったく会ってない。
正しく言えば会いたくないんだけど。

てか、うちって律儀だなぁ。
本当にマネージャーやる気なんだよね…。
ここでバックレて部活入らなくても…………いや、それは即死フラグだ。
残りの月日をマネージャー業で苦労してやっていくか、オカン率いる一癖も二癖もあるテニス部集団を敵に回して毎日がサバイバルで生きるか。
うん。うちは頑張ってマネージャーをしたいと思います。


05 クラスメイトとは仲良くあるべきなんです


前に教えて貰ったけど、うちは3年2組らしい。
んで、今日はとりあえず職員室へ行き先生に教室へ連れてって貰う。
ありきたりな転校生ルートだね。

「…ここか」

とりあえずたどり着いた、職員室。
うわ、変に緊張する。
いやでも職員室前で不自然に立ち尽くしている不審者と思われる方がもっと嫌だったからさっさと職員室に入ろうそうしよう。

「失礼しまーす」

担任の先生は前会ったから、なんとなく顔は分かる。

「おお神矢さん。おはよう」
おっ!?…はようございます」

ビビって変なアクセントのついた挨拶をしてしまった。
急に話しかけないで頂きたい。
ちなみに担任のこの先生は本土出身らしくて基本は沖縄の方言…琉球方言っていうらしいけど…それは使わない人だ。

「はは、確か転校は初めてなんだっけな。緊張してる?」
「あはは、ま、まあそれなりに」
「大丈夫大丈夫。神矢さんならすぐ友達100人くらい出来る!富士山の上でみんなでおにぎりだって食べれるぞ!

1年生か。
軽い考えしてるなこの先生。

「と、とりあえず頑張ってみま、」
「お、涼音じゃん」
「え?…あ」

振り返ると、見たことあるボンバーヘアーな帽子野郎が居た。

「おお甲斐。おはよう。珍しいなぁ朝からお前がいるなんて…何か用か?」
「ちゅー(今日)は朝練があったんだばぁよ。それにわん日直だから」
「それはご苦労さん。これ日誌な。…というかお前もう神矢さんと知り合いなのか?」
「あ―、まぁな。涼音、わったーテニス部のマネージャーなんばぁよ。な?」

先生に対してタメ口とはなんと生意気な。
つーかいつの間に呼び捨てしてるの。
こっちはもさもさ甲斐くんの名前なんて分からんつーのに。

「マネージャー?」

先生が驚いたような顔をして見てきた。

「あは…は。ちょっと色々あって…。やれって言われただけで」

会ったその日にいきなりの任命、うちもビックリでしたよ。

「あ、ならなま(今)からマネージャー申請すれば良いんやっし。どうせ涼音も部活動申請するんだろー?」
「ああ、そりゃあな」

後半、先生に向けて甲斐くんが言った。
てーか琉球方言と本土の言葉が何の問題もなく行き交うのって凄い図だね。
先生すげぇ。
うちもいつか慣れて先生みたいに対応出来るようになんのかな…ならなくてもいいんだけどな…。

「じゃあテニス部マネージャーで申請頼むさぁ!!」

甲斐くんが無駄にきらきらした笑顔で言い放った。

「…神矢さんは良いのか?マネージャーで出すぞ?」
「……………………………………………良い、ですよ…」
あからさまに不満げだけど
「大丈夫さぁ!」
「甲斐には聞いてないから」

そのとおりだ。
ああ、知らないうちにマジでマネージャーにされてゆく。
こいつもまさかの平古場くんと同じ部類?
フリーダム系?
つまりうちの敵かっ!!

「ちゅー(今日)からやーは本格的にマネージャーさぁ。ゆたしくな!」
「うがががが」

笑った甲斐くんに頭をぐしゃぐしゃやられる。
なんでこの学校の奴ら、みんな頭をぐしゃぐしゃするかな!?

「ちょっ、今からクラスの前で挨拶するんだから!髪の毛ぐしゃぐしゃにせんといてよ!」
「あぁ、悪い悪い」

こいつも悪気全然なさそうだなぁちくしょう!

「お、そうだったな。挨拶だったな。…よし、甲斐。ついでに神矢さんを教室連れてってやれ」
「は?」
「あい?涼音も2組なんばぁ?」
「おお。朝のHRでの紹介じゃ緊張するだろうしな!俺も職員会議あるし、先に甲斐と教室行って生徒たちと親交深めてこい!!」

おかしいよね。
その思考おかしいよね。

「ん、分かったさー。うり、涼音。行くんど―」

しかも承諾しちゃうし!

「ちょ、まっ……あばばばばばばば!!!引きずるな引きずるな!うちは1人でも歩けるんだから!!」
「頑張ってな―」
「せ、先生ぇぇえ!!」

転校生を案内する大役を簡単に引き受けんなよもさもさよぉ!!





…なんか、緊張感が一気になくなった。
まだ廊下とか生徒とかでガヤガヤしてるじゃないか。
転校する時はこう……シーンとした廊下をドキドキしながら歩くもんじゃないのか?
別に緊張しながら歩きたかった訳じゃないけどさ!

「なぁ」
「……え?あ、な、なに?」

ぼーっと歩いてたら甲斐くんに話しかけられた。
きゅ、急に話しかけんなよ聞いてない時が多いんだから。

「くぬ(この)間何があったんばぁ?」
「…くぬ間?」
「凛と一緒に帰った時さぁ」
「凛…」

凛て誰。
うちが返事出来ずに戸惑ってると、甲斐くんはうちの思ってることが分かったのか言葉を続けた。

「…平古場のくとぅ(事)さぁ。やー、まだわったーの名前覚えてねーのか?」

あ、凛って平古場くんのことなのか。

「いやー…平古場くんって言われれば分かる。下の名前までは曖昧だけど…、でも甲斐くんとか知念くんは分かるよ」

オカンの名前は聞いたけど忘れた。
いいやもう、別に名前くらい知らなくて。
あともう1人横にでっかい人いたけどオカン早口だから名前聞こえなかったし。
別にうちの記憶力が無いってわけじゃないんだ、うん。

「お。ちゃんとわんのくとぅ(事)も覚えててくれたんばぁ?嬉しいじゃん」

もさもさしてるからな。
忘れたくても忘れられない容姿してるからな。

「んで、平古場くんがどうかしたって?」
「ん?ああ、くぬ間…やーと初めて会った時、凛に送ってって貰ってただろ?」
「あ―……まあ…」

あの日のことは思い出したくもないんだけど。

「あの時、何かあったんばぁ?」
「え?何か……って、なんで?」
「いやな、凛が帰ってからすっげー機嫌悪くてよ」
「……」

そりゃあ…機嫌も悪くなるだろうなぁ。
道に迷った挙げ句、着いたうちの家が学校よりも海に近い場所にあったんだから。
つまり、めっちゃ遠回りして帰ってたってこと。(約2時間)
そのすげー時間の無駄にイラついたのかどうだか知らないけど、帰り間際に平古場くんに1発殴られたんだよな。
うち悪くないのに。
地図落とした元凶は平古場くんだってのに。

「まあ、平古場くんを怒らせたには…違いないと思うけど」
「マジかよ!会って早々ケンカかぁ?やー見掛けに通りにすげぇヤツやし」

ちょ、見掛け通りってあんた。
そこは「見かけによらず」とかじゃないんだ。
どんなふうに見てんだお前は。

「ちが、うち悪くないって!確かに手間かけさせたけど…悪いのは平古場くんだし…!第一その全ての元凶は平古場くんであって……あれ、なんかすげ―ムカついてきた。

1回は仲良くなれたと思ったのに迷子事件が尾を引いてるんだよね。

「ははは、何か凛と馬が合わねーみたいだな」
「合わないどころか。出来ることなら絡みたくないね、平古場くんとは」

まあマネージャーやる時点でそれは無理だと思うんだけどね!

「残念さぁ。やーも2組ならそれは無理かもな」
「は?それってどう」
「ゆーじろー!!」

…いうこと?と続けようと思ったら、別の声が飛んできた。

「噂をすれば、だな」
「噂をすれば、って何それ…って、げっ

見れば、向こうからやって来る金髪。
あれ平古場くんじゃないか…!

「こんな所でぬーしてるんばぁ…って神矢っ!?」

うわ気付かれた。
うちなんか道端に咲く雑草かのようにスルーしてくれても良かったのに。

「…やあ☆」
「やあ、じゃねーだろこのふらー!!」
「あででででで!!!!」

無理矢理笑顔を作って対応してあげたって言うのに、平古場くんに怒鳴られる。
というかゲンコツで後頭部グリグリとか!!
なにこれ地味に痛い!

「や、やめろし!この前も殴っといてまだ気が済まないのか!!」
「済むわけないさぁ!あの時はわんに無駄な手間掛けさせやがってよー…今思い出してもわじわじぃーするさぁ」
「ばっ!あれは平古場くんのせいだっつったじゃん、いい加減分かれこの分からず屋!!」
「はあ!?てめっ、偉そ―な口ききやがって!」
「いっへ―いっへ―!!ほっへひゃひっはんは!!(ほっぺたひっぱんな!!)」
「はは、仲良いな―」
「「良くねぇ!!」」
「おー、まぶやーまぶやー(怖い怖い)」

声合わさったよ。
なんか屈辱。

「んで、凛は何でわんのとこに来たんばぁ?」

甲斐くんが間に入って話を変えてくれたおかげで、平古場くんの般若のような顔が少しマシになる。
ほんの少しだけど。

「…裕次郎、遅刻ばっかだろ。風紀委員として注意しろってあびられて(言われて)んだよ」
「え、風紀委員?え…平古場くんなんかが!?」
「てめー、神矢!!」
「痛い痛い!!」

くそっ、また顔が般若になった!
うちのせいですねすいません!

「2人とも落ちつけって」
「つーか、裕次郎!!」
「ん?」
「何でコイツなんかがここにいるんばぁ!?」
「いや、うちここの学校に転校して来るって言ったよね」
「そーじゃねぇ!つーかやーには聞いてねーらん!!」

うちどんだけ嫌われてんの。
始めはうちをマネージャーにして喜んでたくせによぉ。
違うか。

「涼音もわったーと同じ2組だってよ。だから教室に案内するように言われて」
「同じクラス…!?」
「え、マジで?」

なにそれ、うちも初耳なんですけど。
あ、だから甲斐くん「絡まないのは無理かも」って言ったのか?
なんということでしょう。

「何でこんな奴と…」
「え、うちだってなりたくてなったんじゃないし」

むしろ関わりたくもなかったしな!

「…あんまさん」
何て?
「めんどくさいって意味さぁ。凛も素直やっし」
甲斐くんも色んな意味で素直だよね。

お前もめんどくさいと思ってんのかちくしょうめ。
すると平古場くんはぎろっとうちを睨むように見てきやがった。

「…やー、あんまりわんと関わるんじゃないんどー」

それはこっちのセリフなんですけれどね。

「…まぁ、出来る限りはそうなるといいんですけれどもね」

肩を竦めるようにして返す。
それでも平古場くんは何か気に入らないのか、フンと鼻を鳴らして来た道を戻って行った。
まぁ生意気な金髪ですこと!
てかむしろ最初に絡んできたの平古場くんなのにね!

「…はぁー」

後ろからでも機嫌が悪いと分かるような平古場くんを見てると自然とため息が出た。

「…あーもう…なんか学校生活が尚更心配になってきたよ」

こいつらと初めて会った時から後悔ばっかだよ、切実に。
改めて思う。
あの時、外に出かけずに引っ越しの片付けしてれば良かったと。

「ま、ちばりよー」

呟くうちを見て、甲斐くんが横で笑いやがった。
呑気なもんだぜ。
というかなんて言ったんだ。
わかんねぇよ方言。

ああ、これからストレスで胃に穴が開いたらどうしよう。



つづく



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