はじめの挨拶は大事なんです
「それではちょうど部員もいますから、今はレギュラーだけでも紹介しておきますか」
「えっ、そんな、いいよ」
めんどくさいし。
うちって高が雑用なんですよね?
ええ、もう開き直りですよ。
開き直りですけど何か?
03 はじめの挨拶は大事なんです
「そうはいきません。顔を知ってもらう必要もありますからね。と言うわけで平古場クン、連れてきなさいよ」
ザ 命令☆
「はあ!?な、なんでわんが…」
「何か文句でも?」
「……行ってくる」
負けた。
金髪よっえぇ―!
んでもってオカンつっえぇ―!
まあうちもオカンに勝てる気はないがな!
面倒くさそうにノロノロ歩き出した金髪に向かって、オカンが口を開いた。
「平古場クン…さっさとしないとゴーヤ食わすよ」
「わわわわっさん!」
「………」
なに今の。
金髪に対する脅し文句?
すげー勢いで走ってったけど…。
「…金ぱ、…あー、えっと…平古場くんってゴーヤ嫌いなの?」
「ええ。何故か我が部ではゴーヤ嫌いが多いんですよ」
「まじでか。」
沖縄人はゴーヤ好きばっかだと思ってた。
固定観念だったのか。
「ところで、神矢クン」
「は、はい?」
うわ、ヤな予感。
「貴方はゴーヤ好きですか?」
「えっ!?」
来ると思ったこの質問!
聞かれると思った!
「ううううう、うちはまだ食べたことないから!!」
「そうですか…ならまた近いうち食べさせてあげますよ」
「…!!」
ちょ、オカンの眼鏡が光りました!
企んでる人の顔ってこうなるよね。
リアルで初めて見たよ!
「…えーしろー…連れてきたんどー…」
あ、金髪帰ってきた。
本気でゴーヤがイヤだったんだろうな、異様に早かったし疲れ切ってるぞ。
「ご苦労様でした」
「何の用なんばぁ、木手―」
「え………うっわ」
濃っ!
何この人たちキャラ濃っ!
つい「うっわ」とか言ってしまった!
縦にでかかったり横にでかかったり、縦横のサイズこそ普通だけど頭(髪)のサイズが普通じゃなかったり。
この人は頭に犬でも飼ってんのか?
「あい?たーがよ(誰だよ)コイツ」
「彼女は神矢涼音クンです。本土出身ですが来週比嘉に転校してくるそうですので、今日からマネージャーをして頂くことになりました。うちなーぐちはほぼ理解できないようなので、そこらへんは考えて話してあげてくださいよ」
長っ。
てか、…う、うちなー…って何?
うちなーんちゅ?とか言うのが沖縄の人って意味だったから、これも沖縄の何とかなんだろうか。
「マネージャー?」
「……」
「ほら、阿呆みたいな顔してないで挨拶したらどうです」
べしっ
「いてっ」
オカンに小突かれた。
というか阿呆って。
「え、えー…はじめまして…来週から比嘉中3年になります神矢涼音です…。不本意ながらマネージャーをさせられる羽目となりました。よろしくお願いします」
「「………」」
うわ、無言がイタい。
「…同意の上じゃないんばぁ?」
「まったくもって同意じゃな…アダダダダダダ!!いひゃいいひゃいいひゃい!!」
オカンにつねられた!!
この人加減ってもん知らんのかむっちゃ痛い!
「もちろん同意の上ですよ。ね」
「……あい」
これが『強制』というものか。
なんかこの学校の人は人の意見を聞かないヤツが多いようだ。
ほっぺたジンジンする。
「では簡単に紹介しますよ。今後のために必殺技、プレイスタイル、得手不得手コース諸々話したいところですが…貴女にそこまで入れる頭のスペースはないと思うので、削りに削って名前だけにしておきましょうか」
初対面だってのにすげえ人をバカにしてくるのな。
当たってるけどさあ。
「取り敢えず他にもメンバーはいますが、順に知念寛クン、田仁志慧クン、甲斐裕次郎クンです。平古場クンは先程聞きましたね」
ちょっ、早い早い!!
最初の知念寛くんしか分からんかったわ!
小学校リスニングでももっとゆっくり話すって!
「分かりましたね」
しかも確定。
「うん…」
まあ後でいくらでも聞けるからいっか…。
「そして俺は主将の木手永四郎です」
主将…?
つまり部長ってことか?
まあ1番エラそうだから確かめなくても分かるな!
副部長は誰なんだろ…。
まあ誰でもいいか。
「副部長は甲斐クンですからね」
何こいつ心読めんの?
あと甲斐くんて誰?
「めったに仕事しない副部長なんだよな」
「別にいいやっし、仕事とかめんどいだけやっさー」
この髪の毛ボンバーなのが甲斐くんか。
というか否定はしないんだ。
本当に仕事しない副部長なんだな。
「それでは皆さん神矢クンに挨拶してください。これから色々お世話をしてもらうんですから」
お世話なんかしたくねえよ!?
マネージャーは部員の世話なんかしねぇよ!?
「「よろしくうにげーさびら!(よろしくお願いします!)」」
「はい、良くできました」
声ぴったり合わせて頭下げられる。
何なのこいつら。
園児とその先生か何か?
…お母さん。
私はあの時外出せずに、部屋の片づけをもっと死ぬ気でやっていればと今更ながら後悔しています。
つづく
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