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オカンの言葉は絶対なんです


「うり、着いたんどー」

ドサッ!

「ぐえっ!!」

暫く金髪野郎に担がれ、車酔いならぬ人酔いしそうになった時、雑に地面に落とされた。
ひどくね?
扱いひどくね?
しかも暑くね!?
てかマジに海に連れてこられたよ!
砂浜あっち!


02 オカンの言葉は絶対なんです


乱雑に砂浜に放り投げておきながら、うちに対して気も遣わず何故かきょろきょろと何かを探している金髪野郎。
まず謝れや!

「ちょ…ね、ねえ」
「えーしろー!えーしろー!マネージャー連れてきたさぁ!」
「は?…マネ…?」

なんだその単語。
うちには無縁の言葉過ぎて反応出来ないのだけど。

「うるさいよ平古場クン。練習サボって一体何処に行って…誰ですか、彼女は」
「え?…っ!?」

ぎゃあああぁ!?
な、なんか金髪に呼ばれてこっち寄って来た人、すんげー怖いんだけど!?
なにあれなにあれ、り、リーゼント!?
彼はリーゼント部類ですか?
それともコロネですか!?
沖縄だからむしろ紅芋タルトに分類されるんですか!!?

「校門の所に落ちてたから拾ったさぁ」
「落ちてたて」

うちは落ちてた覚えはないんですが!
拉致されたんですがね、この金髪野郎に!
…あれ、てか気付いたら人いっぱいいる。
みんな泳いだりしてるから注目はされてないから良いけどさ!
なにこの集団。
海水浴にでも来てるのか?

「はあ…落ちてたからって勝手に拾ってくる人がいますか。それに彼女は見たところ沖縄の人じゃないんじゃないですか。何勝手に連れて来てるんですか。戻してきなさいよ」

え、なにコイツ。
お母さん?というかむしろオカン?
一瞬オカンオーラが見えた気がする。
『うちでは飼えないって言ってるでしょ。元の場所に戻してきなさい!』と同じテンションで言ってる。
うちは物ではないんですが!

「はあ?何でよ。忙しいからマネージャーでも連れてこいってあびてた(言ってた)のはやーやっし」
「誰が連れて来いと言いましたか。そろそろマネージャーの事を考えなければ、と言っただけです」
「え…」
「先走るのも甚だしいですね。マネージャーを連れて来いと言ったとして、彼女は本土の人なら我々の学校の人でもない。そんな人をマネージャーにする気なんですか?」
「……あ」
「どうせそんなだから彼女の名前も知らないんでしょ」
「…名前…?」
「え、あ、涼音…神矢涼音と申します…」

わからん、言葉はわからんけど…!!
なんか金髪が紅芋タルトに説教されてる感じだ!
紅芋こっえー!

「全く、平古場クンは計画性が一切ないですね」
「え、永四郎…」
うるさいよ。少し黙っててください」
「……わっさん…」

うっわぁ…可哀想…。
まあ自業自得だがな!

「それで。神矢クン、でしたか」
ひいっ!あ、は、はい!?」

やっべ、反射で「ひいっ!」って言ってしまった。

「平古場クンの失態は後で本人に謝らせるとして…おかしなトラブルに巻き込んでしまいすみませんでした」
「あ…いえいえ…」
「比嘉中の生徒でも無いのにマネージャーとは、突拍子もないことを…」

あ、そうだ思い出した。
「ひが」って読むんだったアレ。

「いや…うち転校して来たんで…えーと、今度の月曜から。比嘉中?の3年です」
「……は?」

あ、オカンが驚いとる。

「ぬーやが…やー、わったーと同い年だったんばぁ?」
「は?」

べちっ!!

「ブッ!!」

金髪野郎に景気良く両方のほっぺたを叩かれた。
挟まれた、が正しいのか。ってそうじゃない。

「痛いんですが!人をまぁ太鼓よろしくべしべしと!!だから言葉分からんのは仕方ないって言ったじゃないですか!!」
「でもイライラするもんはイライラするさぁ」

なんと不条理な!

「平古場クンは『俺たちと同い年だったのか』と言ったんですよ」

あ、オカンが代言してくれた。

「てか、同い年……俺たち?」
「俺も平古場クンも3年なので」
「え、オカンも?
オカン?
なんでもないです

やっべー、口に出てしまった!!
というか、オカンも中学生なのか…。
見えねー。

「…つーかよー、永四郎」
「なんです」
「こいつ、わったー(俺たち)と同じ比嘉中の生徒なんだろ?なら、マネージャーも出来るさぁ」

なんだと?

「だからマネージャー問題は検討しようと思っていただけで、」
「やしが(だけど)いまさら他の部活の奴に兼部を頼むよりか、転校して来たこいつにやらせた方がいいんじゃねーか?」
「…まあ、それは一理ありますが」
「だったら決まりさー!」
「は?ちょ、ま…待ってください。というか待てよこの金髪野郎」
「たーが金髪野郎よ。わんには平古場凛って名前があるんどー」

そういやぁ「平古場」とかオカンが連呼してたな。
珍しい苗字だな。沖縄だからか。

「ひ、平古場、くん?…なんでそんだけうちをマネージャーにしたいの。そしてなんのマネージャーかもうちは分からんのですが…」
「あー?あびたくとぅは最後まで責任持つのがいきがってモンさぁ」
「……」
「…言った事を最後まで責任持つのが男ってことやし」
「あ、あぁ…なるほど」

沖縄の方言って難しい。

「まあこの際です。何かの縁でしょうし、お願いしますか。ちなみに俺たちはテニス部ですからね」

そんな縁いらない。
とてもいらない。

「っていうかテニス部?え、あの、泳いでる人たちも含め?」
「はい」
水泳部か何かかと
「今日は体力作りを兼ねた海岸荒行ですので」
「かいがん…」

良く分からんが、とりあえずトレーニング的なもの…なんだろうな。
でもなきゃ遊んでるようにしか見えないし。

「で、でもうち、マネージャーなんてしたことないし、テニスなんてやった事すらないんだけど」
「大丈夫ですよ。ほとんど雑用…簡単な手伝いだけです」

ZA・TSU・YO・U!
ぎりっぎりでオブラートに包んだけど、こいつ雑用って言おうとしたよ!
そんなものをうちに押し付ける気か!!

「やーなら出来るさぁ。やりもしないで諦めんのは駄目だぜー」
「どっから来るのうちに対する信用。しかももっともなこと言ってるからなおさらムカつく」

雑用もしたくなければ、この金髪ともオカンとも今後絡みたくない。
ならばマネージャー業はすべきじゃないよね、断るべきだよね。

「…悪いけど、マネージャーなんてやり、」
やりたくないんですか?
「うッ」

お、オカンが凄んできた…!
いいい今にもコロネ部分からレーザーが出そうだ!
もし力(怒り)をためられてコロネ部分から波動砲とか撃たれたらうち死ぬんじゃね?
木っ端微塵じゃね?

「や…や、やり、…たいです…」

圧力に負けた。
正しく言えばオカンに、そしてオカンのコロネに。

「しんけんか!!(本当か!!)」

なんで目輝かせるの、金髪。

「そうですか。それは良かったです。雑用係が出来て俺達としても嬉しいですよ」

おい、ついにオブラートにも包まないのか。
うちはマネージャーじゃなく雑用係なのですか。
入学する前から学校生活が暗雲に見舞われてんですけど。
どうしてくれるんだ…!



つづく



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