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悪いフラグしか立たないんです


「テスト範囲配るぞー」

ただいま朝のホームルーム中。
先生がテスト範囲をバラまく。
あーそうか、もうそんな時期かぁ。
そう思いながら前から回ってきたプリントを見る。

「うーわ!歴史結構範囲あるし!マジやる気失せるわー」

暗記物ってやりたくないんだよねー。
どうせ必死に覚えても、新しい項目覚えるたび前の知識はロケット鉛筆のごとく頭から抜けてくんだ。
そーゆーもんだよね!

「あーあ、いいよねぇ平古場くんは。頭良いんだもんねー?」

この前自慢げに話してたしな。
まったくもう、生意気に育っちゃって!

「…」
「おっと無言。せめて何か言っ…は?」

平古場くんの方を見てビックリする。
何この人、顔面蒼白なんですけど。


22 悪いフラグしか立たないんです


「凛君は英語が苦手なんやさ」
「あー、そういやそーだったっけ」

昼休み。
いつものようにご飯を食べてる時に知念くんに言われて思い出した。

「でも苦手だからってあんな真っ青にならなくても。ぶふっ、ちょーウケる!
「かしましい!」

がつん

「いでっ!だー!なんで毎回殴るかな!?やだもうこの席!甲斐くん代わって!」

何が楽しくて毎回紅芋タルトヘアーと金髪に挟まれて座らなければならないんだ!
ただでさえ平古場くんは教室でも隣なのに!

「わざわざ木手と凛の隣に行く気にはなれないさー」

激しく同感。

「はあ…英語の教科書30ページにテキスト25ページ…あと授業で使ったプリント20枚とか、地獄やっさー…」

甲斐くんに軽くディスられたってのに平古場くんは怒る気力もないらしい。
盛大にため息ついてる。

「ま、ちばりよー」
「ちばりよー、じゃないんどー裕次郎!やーもどうせ大した点取れないだろ!」
「ははっ、そんなんいつものくとぅ(こと)さー」
「まったく貴方達は…」

そんなやり取りを聞いてた木手くんが盛大にため息をついた。

「それより神矢!やーも頭悪いくせして何でそんな涼しい顔してるんばぁ!?」
「えっ、うちっすか!?」

急に飛び火がきた!

「というか頭悪いとかストレートだなぁ!別に涼しい顔なんかしとらんし!うちだってテスト嫌だし、歴史とかめっさ苦手なんだからな!暗記とかマジ無理だわ!」
「無理ってあびる(言う)前に努力した方が良いと思うんやしが…」
「が、頑張ってはいるんだよ一応」

最近、知念くんの言葉が図星をついてくるから辛い。

「自己満足で終わる努力など大した事ないですよ」

木手くんの言葉も図星で辛い。

「とにかく、今回のテストで酷い点数を出したら承知しませんからね」
「そんなくとぅあびられてもな…」
「簡単に点取れたら苦労ないんどー…」
「その苦労自体、貴方達はしてないでしょうが」
「…」
「…」

平古場くんも甲斐くんもダンマリだ。
この2人も図星をつかれたみたいだな!

「ついでに言いますと、今回は赤点を取ったら1週間部活参加禁止になるんですよ」
「え、まじで?」

それはなんて素晴らしい特権なんだ!
こうなったらわざと赤点とって部活サボってやろ!

「自ら赤点を取ろうなどという馬鹿な事をしたら許しませんよ
「や、ヤダナー!そんな器用なマネ出来ないヨー!」

なぜバレた!
くそー、木手くんは相変わらずエスパーなんだから!

「もちろん、部活禁止期間はずっと補習があるんですからね」
「げッ」
「そんなんならいくらスパルタでも部活の方がマシさぁ…」
「確かに…」

テニス部の問題児コンビと慧くんは補習が嫌みたいだけど、うちは補習の方が良いと思う。
テニス部で理不尽な扱いされるくらいなら机に向かって勉強してた方がマシだよ!

「ところで、神矢クン」
「うぇっ!?な、なんすか?」
「貴女の考査結果が1番気になるんですよ」
「でえ!?なんでうち!?」
「他の部員の頭の悪さは十分に理解済みなんですが」

頭の「悪さ」なのか。
悪いは決定事項なのか。

「…わんは滅多に赤点なんか取らないんどー」
「英語は常に赤点ギリギリの癖して良く言いますね、平古場クン」
「…」
「ははっ!わんは赤点なんて見慣れてるんどー!」
「…はぁ…」

開き直ってる甲斐くんを見て木手くんが頭を押さえてる。
頭痛でもしてるのか眉間にごっついシワが出来てる。
当たり前か、こんなマイナスな意味でのプラス思考を見たら。

「…これ以上、我が部から恥を出したくはないんですよ。なので」
「っ!」

木手くんがグイッと顔を近付けてきた!

「酷い点を叩き出さないように予め忠告させていただきます。もし赤点でも取ったら…その時は覚悟しておいてくださいよ

ち か い。
かっ、顔が近すぎるぞ木手くん…!

「返事は?」
「は…ハイ…」

眼鏡を光らせて脅してくる木手くんに、そうやって声を絞り出すので精一杯でした。





「はー…もうマジでどーすんのさ。怖いよ。怖すぎるよ木手くんが」

昼ご飯も終わって、教室に戻って自分の席についた瞬間机に突っ伏す。

「酷い点取るなって…あんな脅しかけられたら取れる点数も取れなくなるっつーの!」
「しかも永四郎にとっての酷い点だからなぁ…平均割っても怒られる気ぃするさー」
「なんだそれ、最悪じゃん。マジでどうすんのさ…」
「どうするってあびられ(言われ)てもな…」
「ま、なるようにしかならないさぁ。そんな深く考えるくとぅ(こと)ないって」
「「お前が1番考えろよ」」

平古場くんと声が合わさった。
まったく甲斐くんめ、ちゃらんぽらんなんだから!

「はー…でもホントどうしようかな…今日からテスト期間で部活もないし、残って勉強でもするかぁ…」
「残って勉強?そんな嘘吐くなっつーの」
「は!?いや嘘じゃねーし!どうせ家じゃ勉強しないだろうから、残った方がよっぽど効率良く出来ると思うんだよ!」
「残ったところで勉強がはかどるとは思えないさぁ。それにやーの「効率が良い」には限度があるだろ」
「決めつけんなや!」

相っ変わらず生意気な!
この金髪はうちを小馬鹿にしないと気が済まないのか!

「涼音、残って勉強するんばぁ?」
「ああ、うん。そうしよっかなぁと」
「ふーん。ならわんも残るさー」
は?
「は、って。何で平古場くんが驚いてんの」
「い、いや…つーか裕次郎、残ってぬー(何)するんばぁ?」
「ぬー(何)って、別に?」

別にって!
残るなら勉強しろや!
やっぱり甲斐くんの思考は分からん!
平古場くんのも分からんけど!

「…何もする気ないなら帰った方が良いだろ…」
「んー、やしが(でも)涼音が残るってんならわんも一緒に居るさぁ」
「え?」
「は?」
「…いや、だから何で平古場くんが驚く」
「べ…別に…」

平古場くん、何か今日は情緒不安定だな。
いつものことか。

「…駄目?」
「え…」

甲斐くんが急にしょぼんとした顔になった!
ちょっ、何その捨てられた犬みたいな目!?
くそっ、上目で見るな!
勉強するのにうるさい甲斐くんは邪魔なだけだから、出来れば一緒に居たくないのに!
だけど何故か否定出来ない!

「ま、まあ…お好きに?」
「おっ、しんけんか!?じゃ決まりなー!」

甲斐くんは嬉しそうに笑ってる。
シッポがあったんならブンブンと振ってそうなくらい嬉しそうだ。
甲斐くんて1人だと寂しくて死んでしまう性質なんじゃないか?
まぁどーでもいいけども。

「でもどうせ残るんなら勉強したら?ただ残るだけじゃ時間の無駄じゃん」
「えー…」
「えーとか言わんの!」
「…やしがどうせ勉強なんてやっても理解できないさぁ」
「諦め早っ!そんなんじゃ木手くんにボコられるぞ!」
「そ、それは困る…あ、なら涼音勉強見てくれねぇ?」
「うち?いや人の勉強見るほど頭良くないんですけど」
「わんよりかはマシだろ?」

マシって。
その言い方だとうちが頭良くないことは了承済みみたいじゃないか。
ここは「いやいや頭良いだろ」的なこと言うべきとこでしょうが!
甲斐くんにそんな期待持つだけ無駄だと思うけどね!

「…うちで良ければですけども」
「涼音が良いんだって」
「お…おぉう」

甲斐くんは深い意味とか考えてないだろうけど、笑顔でうちが良いとかストレートに言われると若干ドキドキしてしまう。
無意識なタラシって怖っ!

「…」
「ん?どうした凛?さっきから黙ったままやし」
「あれ、そう言えばそうじゃん。どうしたよ平古場くん。顔が普段以上にしかめっ面だけど」
「…わんも残る」
「え、平古場くんも?」
「わ、悪いかよ」
「いや別に悪くは無いけども」

もう問題児が何人いようが変わらない気がするしな。
好きにするといいさ。

「さっき残った所で勉強がはかどるとは思えないとかあびて(言って)なかったか?」
「…やしが残らないとはあびてないさぁ。それに、わんが見張ってないとやったー真面目にやらねーだろ」
「見張り役ってか。平古場くん、なんか言い方が木手くんぽいな。ハハッ第2のオカンか!」
黙れ

おおっと標準語で怒られたぞ!
それほど嫌か!
まあ木手くんに似てるとか言われたら嫌だな。

「別に何でもいいけどさ。んじゃ、今日はみんなで頑張って勉強会ってことで!」
「…勉強は頑張る気にはならないさー」
「おい!」

もー!まったく素直だなぁ甲斐くんは!

キーンコーン…

と、ちょうど話がまとまった所でチャイムが鳴った。
5限目の予鈴だ。

「次の授業ってなんだっけ?」
「地理だろ」
「涼音、ちゅー(今日)日直だろ?地図持って来いってあびられてなかったか?」
「ゲッ!そーだった、忘れてた!地図ってあの巻き物みたいなデッカイやつだよね?どこにあるんだっけ!?」
「向こうの棟の3階さぁ。ダッシュしても5分はかかるんじゃねぇ?」
「はあ!?ちょっ、なんでそんな時間かかるの!?学校内なのに!」
「1回下おりて渡り廊下通って、また上にあがる必要があるからなぁ」
「げー!もうマジフザけ倒せよ!…そうだ、どっちか一緒に行かない!?そして一緒に遅れて怒られよーぜ!」
「「嫌だ」」

即答かーい!!
くそー、人数増やせばひとり頭の怒られるパワーが分散されると思ったのに!

「カーッ!ケチだなぁ!ケチだなお前ら!うちが見せしめのようにみんなの前で説教されても良いってのか!」
「怒られるのは慣れてるだろ」
「慣れてないし!馬鹿野郎だな!平古場マジバカ野郎だな!」
「涼音ー、そうあびてる間に行った方が良いと思うさー」
「くっ…!わ、分かってますー!それくらい分かってますー!10秒で行ってきてやんよ!」
「じゃあ数えとくぜー」

呑気に甲斐くんが手をヒラヒラと振ってきた。
この他人行儀な感じが大変ムカつくぜ!
他人ですけどね!

「くっそー!」

椅子を蹴倒して教室を飛び出してやった。
今度2人の靴隠してやるんだからな!
中庭に埋めてやるんだからなー!!



「ははっ、やっぱ涼音面白いさー」

涼音が飛び出したドアを見ながら甲斐は笑った。

「…ただふらー(馬鹿)なだけだろ」
「かもな」

笑って答える甲斐に対し、平古場の顔は浮かなかった。

「なあ、凛?」
「…何よ」
「さっきは何で急に居残るって言い出したんばぁ?」
「…言っただろ、見張り役が居ないとやったー真面目に勉強しな…」
「だぁが(それが)本音なのか?」

甲斐の言葉に、平古場は顔を顰める。

「…ぬー(何)が言いたいんだよ」
「んー、なんと言うか最近、わんが涼音と話してるとやーの機嫌が悪くなる気がするんだよなー」
「…何であぬ(あの)ふらーとやーが話してるだけで機嫌悪くならないといけないんばぁよ」
「気がするってだけさぁ。今もなんか怒ってんじゃん」
「怒ってねーっつの」
「怒ってるだろ?」
「だから怒ってない」
「いやいや怒ってるだろー」
「だから!怒ってねーっつーの!」

痺れを切らし、椅子を蹴倒して平古場は声を荒げた。
ガタンという大きな音に驚き、クラス中の視線が集まる。

「まーまー、落着けって」
「…」

甲斐に宥められ、平古場は顔を顰めたまま椅子を直して再び座る。

「別にわんは凛を怒らせたい訳じゃないんどー」
「…じゃあ何が言いたいわけよ」
「涼音はあんなだから、お互いに捻くれてたら話が進まないだろ?」
「…あんな奴と話すことなんかないさぁ」
「その言い方が捻くれてるんだって」
「…」
「なあ」
「…ぬーよ」
「凛は涼音のことはどう思ってる?」
「どう、って」

そう口に出し、平古場は再び口を閉ざす。

「涼音は他のいなぐ(女)と比べてわったーに近いヤツだろ?面白れーし、まあ少しテンション可笑しいとこもあるけど。凛も一緒に居て楽しいとか思ったことあるんじゃねぇ?」
「…知るか」
「じゃあ嫌いって言えるんばぁ?」
「…」

甲斐の言葉に、平古場は口を噤む。

「凛?」
「…わんは、」

バッキィ!!!

ぶっ!!?
「凛!?」

何かを言いかけた瞬間、どこからともなく飛んできたバカでかい巻き物が平古場にヒットした。
当然の襲来に防御出来るはずもなく、平古場はなすすべも無く椅子もろとも真横に吹っ飛ばされる。

「涼音ちゃん無事☆帰還ー!へっへーん!どうだ参ったか!間に合ったぜえぇぇー!?」
「…涼音…」

甲斐が声をする方を振り向くと、ドアの所でガッツポーズを決めている涼音が居た。

「どうだ!さすがに10秒とはいかなかったけど先生まだ来てないだろー!」

どうやら飛んできた巻き物は、持って来いと指示された大きな地図らしい。
猛ダッシュで取りに行き猛ダッシュで戻ってきて、勢いそのままで地図を投げ飛ばしたらしい。
そしてその地図は見事に平古場にぶち当たったという訳だ。

「…」
「あれ、何?せっかく急いで来たのに褒める言葉もないのか2人とも。…って、何してんの平古場くん?」

地図と共に床に転がっている平古場を見て涼音は眉を寄せる。
自分のせいで平古場がこうなっていると知ってか知らずか、大袈裟に肩を竦めている。

「やれやれ床で昼寝とは大胆なヤツだなぁ。ま、お昼ご飯食べたばっかだから眠くなるのも分かるけどね!」
「はは…」

本心か悪ふざけか分からない涼音の言葉に、甲斐も笑うしかなかった。
と、ここで平古場がようやく体を起こした。

「…」
「あ、起きた。ぐっもーにん平古場く……ん?」

起き上がった平古場は無言ながら、禍々しい圧を纏っている。
ゴゴゴゴ…という地鳴りが今にも聞こえてきそうだ。
それには流石の涼音も気付いたようで、焦った顔で甲斐の方を見る。

「えっ、な、なにこの人?怒ってんの?」
「…わん知らないからな」
「え!?何それ!?どこ行くの甲斐くん!?」

慌てる涼音を置いて、甲斐はしれっと教室の外へと出て行った。

「な、何…えっ、というかみんな居ないし!?」

危険を察知したのか、さっきまで教室内に居たはずのクラスメートも全員教室から退出していた。
ぴしゃん、と丁寧にドアも閉められる。

「な、なにこのフラグ?え、うち死ぬ?
「…神矢…」
「ヒッ!なっ、何その顔!?なんか今にも殺人犯しそうな顔してない!?」
「…殺人犯しそうだってのも強ち間違ってないさぁ」
「は…?なにそれ、どういう…」
「……いっぺん死ね!!!!
「え゛っ!?ちょっ…ぎゃあああああっ!!?




バタン、ガタン!とけたたましい音とともに椅子が飛び机が飛び、ありとあらゆる物が教室内を宙を舞う。

「あーあ」

甲斐はその様子をドアに付けられた小さな窓から見ていた。

「…もう授業時間始まってんだけど…」

そう絶望的な顔をして言うのは社会科の教師である。
入りたくても教室に入れず、授業をしたくても出来ない状況に、肩を落とすしか出来ないでいた。

「仕方ないんどー。この調子じゃ次の授業、丸々潰れるさー」
「…テスト近いってのに…あいつら…!」

頭を抱える教師を余所に、甲斐は呆れたように笑っていた。

「涼音相手じゃ、凛も大変だなー」



つづく



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