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屋上でおサボリは定番なんです


時は3時限目。
授業は数学。
ここは教室…じゃなくて廊下。
さあ大変だ。
学校で道に迷ってしまった。



19 屋上でおサボリは定番なんです



冗談じゃない。
確かにまだ転校して来てから2週間くらいだけど、授業中にトイレ行ってそのまま迷子になるとは…。
自分が1番びっくりしてるわ。
基本は平古場くんとか甲斐くんとかについて移動してるから、教室の場所とかいまいち覚えてないんだよなぁ。
あれ?なんか言ってて悲しくなってきた。
同じクラスで一緒に行動してんのアイツらだけなんだろうか…。
だけな気がする。
クラスの女子とも必要最低限しか話してないし。
というかよくよく考えたら女の子の名前ひとりも思い出せないぞ!?
うちの記憶力の問題かも知れないけど、元はと言えば全部あいつらに関わったせいじゃね?
そうだそうだ、あいつらが悪いんだ!
くそー!関わってからろくな事がありゃしねえ!
…って、いかんいかん。
話が逸れまくった。
取り敢えず今は教室に戻らないと。
でも勢いで階段も何回か上り下りしちゃったもんだから、ここが何階かも分からない。
階段上り下りした自分が良く分からないけどな!
パニクると人間なにするか分かったもんじゃないよねー!

「…あれ?」

なんか階段の上、ドアある。
屋上?たぶん屋上だよね。
なんかもう急いで教室探すのも疲れたしなぁ、屋上で休み時間になるの待とうか。
休み時間になったら生徒がわんさか廊下に溢れるし、そしたら聞けばいいし。
自分の教室の場所聞くとか恥以外の何者でもないけど転校生ってんなら許されるよね!

「よっしゃ決めた。学生が青春するベストプレイスの屋上に行こうじゃないか!」

もしかしたらここで運命的な出会いとやらをしちゃうかも知れないし!
「彼との出会いは授業中、サボって行った屋上でした(はぁと)」とか、うわぁなにこれ青春まっさかり!
よーし、うちは今日から甘酸っぱい青春しちゃうんだからっ!!
蔑まれる日常にサヨナラバイバイなんだから!

バタン!

勢いよくドアを開けた。

「ん?お、涼音!やーもサボりに来たん…」

バタン。
ドアを閉めた。
見てない見てない、うちはなーんも見てない。
うちは良い子ちゃんなんだから、学校中をうろうろしたり屋上で運命的な出会いをしようとなんかしないんだから!
そうだ早く教室帰らなくては!

バタン!!

「ちょ、なんで閉めるんばぁ!?無視さんけー寂しいやっし!」

チッ!!
折角ドア閉めたってのになんか来た。

「ヤア甲斐クン元気ソウデ何ヨリダヨー」
「おー元気やっし。…じゃないんどー。涼音もサボリに来たんばぁ?」

違う甘酸っぱい青春を求めて来たんだい。

「それともわんのこと探しに来たのか?」
「え?違うけども」

まず甲斐くんが教室にいないこと知らなかった。
サボってたんだねこの自由人がっ!

「ぬーやっさーあらんのか(何だ違うのか)…じゃあ何でここに?」

トイレ帰りに道に迷って…なんて恥ずかしくて言えるかーい!
事実だけど!

「いやー…特に何も?」

良い言い訳が見付からないもんだからそう答えといた。
言い訳思い付くほど頭良くないんだよチクショウめ!

「ふーん。ま、いいさぁ」

いいのか。
あぁ、でもよかったわぁ。
ここに居たのが木手くんじゃなくて。
木手くんだったら授業中にうちが屋上来たこと…というより学校内で迷子になったことを知られたら確実にボッコボコにされた気がする。口撃でな。
ま、木手くんが授業サボるなんてするとは思えないけど。

「とにかくここに来たからには涼音も一緒にサボるんどー」
「は?え、いや、うち今から教室帰るから」
「なま(今)数学やっし。教室行っても眠くなるだけやっさー。ならここで涼音と居る方が良いさぁ」
「えー?でもうち直ぐ戻るって言ったしなぁ…」

正確には言ってない。
トイレだから早く戻るって思われてるだけだ。

「気にすることないさぁ!わんだって戻るって言っていっつも戻らないんどー

最悪かよ。

「数学なんかどーせ授業受けても頭入らないって」
「甲斐くん元から頭に入れる気無くない?」
「そんなことは…ないさー…」

嘘だな。
目を逸らすな。

「なー、別に良いだろ?そんな毎回真面目に授業出る必要なんかないんどー」
「いや中学生なんですから真面目に授業出るべきでしょうに」

サボるのを当たり前にしてほしくないぞ。
うちはいい子ちゃんだったから、転校して来る前はサボったことなんかなかったしな!
…だから青春とかとは無縁に生きてた訳ですが。
うーむ、そう思ったらなんか虚しくなってきた。
つまらない平坦な道を歩んでたんだよな。

「…まあ…たまにはいっか」

中学生なんだから羽目を外したくなるもんさ。
若気の至りってやつだ!
よく分からんけど、そういうことにしとく!

「しんけんか!」
「うん」

うちはいつでも真剣です。
ま、帰りたくても教室への帰り方は分からんから、結局サボることになるに変わりはないと思ってたし。

「うわーぉ…というか、ここ眺めめっちゃ良いじゃん」

改めて屋上からの景色を見たけど、なかなか感激して変な声出してしまった。
天気も良くて空も真っ青で、遠くに海が見える。
それがまた太陽の光でかキッラキラしてる。
めっちゃキレイ。さすが沖縄。

「だろ?わんも結構気に入ってるんだばぁよ」
「へえ…海見えるし最高じゃんよ」
「おー。いっつも練習しに行ってる海さぁ。こないだ行った海やっさー。それに涼音が初めてわったーに会ったのもあそこだったよなー。凛に連れて来られた時の」
「あぁ…」

凛で思い出したけど、あれからまた平古場くんの調子がおかしいんですよ。
辛辣とか暴力的とかじゃないからいいんだけど。
なんかよそよそしい。
なんか気持ち悪い。

「ん?どーしたんばぁ涼音?」
「え?いや、何もないよ」

思ったより甲斐くんが近くにいた。
そういやうち、だいぶ甲斐くんのワサワサヘアのアップにもかなり慣れたな。
順応性あるわ。

「てかさぁ、甲斐くんよ」
「ん?」
「変なこと聞いて良いかね?」
「変なこと?木手の人間離れした髪型のことか?

そ…それもそうだけど!
てかアンタも人間離れした髪型(毛量)だけど!

「き、木手くんも変だけど!うちが言いたいのは平古場くんのことさ!」
「凛のこと?」
「おうさ」

最近、というか普段の態度からず〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと思ってたこと。

「なによ?」
「平古場くんてさ、目の敵親の敵とばかりにうちを殴ってくるじゃん?」
「いや…そこまでかは知らないさぁ…」

おっと、少し誇張しすぎたか。

「じゃあ…そうだなぁ、何と言えばいいか…そう、とにかく平古場くんて性格悪いじゃん?
「悪いっつーか…少しひねくれてるかもなぁ」

ひねくれてる!?
少し!?
あれで!?

「涼音…ちら(顔)が口以上に物あびてるんどー」
「お、おぉふ…すまない」

目ん玉ひんむきすぎたようだ。
驚いて言葉も出ず顔に表れてしまった、恥ずかしい。

「ちょっとその言い方には満足いかんけど…平古場くんってうちがいない間なんか変なこと言ったりしてない?」
「は?」
「いやいや、は?じゃないって。漢字で言えば悪態。分かりやすく言えば悪口ってやつ。あ、悪口も漢字か」
「ははっ、涼音結構抜けてるさぁ」

この前テニスバックにラケットじゃなくサトウキビを大量に入れてきた甲斐くんに言われたくない。

「…で、悪口ってぬーがよ?」
「悪口は悪口さ。あの人クソ口悪いじゃん?面と向かっても言ってくるけど、うちがいない間にも変なこと言ってないかなぁと気になってね」
「凛は陰で悪口あびるような奴じゃないんどー。他のメンバーもさぁ」
「そうか…」

うーん、まあ確かに…むしろ木手くんは陰口言われるタイプだよね。うちに。

「何か言われてるとでも思ってたんばぁ?ああ見えて凛、良く涼音ぬくとぅ(こと)庇ってたりするんどー?」
「ええええ?」

庇う?平古場くんが?

「この間、木手がやーの文句言ってた時も「まだ引っ越してきたばっかだから仕方ない」とかあびてたし」
「え?まじで?」

うち木手くんに文句言われてたのか。
やっべぇ。
いやそれよりも、平古場くんがそう言ってくれたとは。

「…シンジレン」
「前あびただろ?わったー、涼音を気にかけてるんどー」

そ、それは…喜んでいいのか?
いやダメだ。
だってこの部活に巻き込んだのこいつらなんだから。
勘違いしたらダメよダメダメ。

「それより、何であんしー(そんなに)気になったんやっさー?」
「はあ?」
「凛のくとぅ」
「き、気になった…というかなんというか」

いきなり変なことを聞くなぁこの帽子。

「別に大した意味は無いけども。強いて言うなら、もしも裏でも何か言われてたら異様に腹立たしかったから。ただでさえ面と向かっても腹立たしいのにこれ以上ムカついてたまるかって思っただけさ」
「ああ…なんつーか…涼音らしいな」

コイツの思ううちらしさって何?

「…やしが、なんか安心したさぁ」
「はあ?安心?」
「ん、気にすんなって」
「はあ…?」

なんかこの帽子も分からない。
あの金髪と同じでフリーダムで自由で何考えてるか分からん。
扱いずれぇー。
と、ここで。

「裕次郎!やっぱりここ居たのか!」
「おー、凛」

平古場くんがやって来た。
なんでかコイツらテニス部は誰か1人と関わってると他の奴らも集まってくるんだよなぁ。
習性かなんかか?

「何回授業サボれば気が済むんやっさー!その度に探しに来る羽目になるわんの気にもなれ…って神矢!?」
「ヤァ平古場くん。さっきの授業ぶりですわね〜」
「さっきの授業ぶり、じゃねー!やーくまで(ここで)何してるんばぁ!?」
「な、何って…ねぇ?」
「授業サボってんだよなー」
「サボっ…さっきトイレ行くとかあびて出てっただけだろ!」
「いや…まあ。ちょっと色々あって」

道に迷いました。
なんて言えない。

「そう言う平古場くんこそ何でここに」
「さっきあびただろ、探しに来たんやし。風紀委員だからってこういうにりー(面倒くさい)時は駆り出されるんだよ」
「凛も大変だなー」
大半やーのせいだけどな

大半って。
一体どんだけ問題児なんだよ甲斐くんは。

「…30分も帰って来ないって、もう意図的にサボってんだろ」

あれま、30分も経ってたのか。
10分くらいは屋上で無駄話してたからなぁ。
つまり20分間は学校をうろついてたってことだね☆

「誘ったのはわんだからなぁ。仕方ないさぁ」
「そうだそうだ!うちのせいじゃないむしろ甲斐くんが悪いからね!」
「…で、一緒にいたんばぁ?」
「まーな」
「暇だしね」
「暇ってなま授業中だけどな

ごもっともです。

「凛もここ来たんだし、やーもサボってけば良いじゃん」
「は!?」
「お。いいじゃんいいじゃん。共犯者だ共犯者!」

サボれ!
そしてお前も怒られちまえ!
3人もいれば先生からの怒りは分散するはずだもんね!

「共犯者って…わん、やったーを探しに来た…」
「どうせやーなら授業受けなくても分かるだろーし、だったら戻らなくても良いだろ?な、涼音もそう思うよな!」
「思う思う。ここにいなよ平古場くん」
「え…」
一緒にサボって風紀委員なのに教師からの信頼ガタ落ちさせれば良いと思う
「そっちかよ!」

そっちって。
そっち以外に何があるんだ?

「…ハァ。どうせ授業も残り10分だしな…」
「お。まじか!ヨッシャ平古場くんサボりけってーい」
「仲間さー」
「イエー」
「…ぬーがよ、やったーのそのテンション」

呆れられた。
心底軽蔑するようなその目は止めていただきたい。

「はぁー…にしても暑いなぁ」

話が一段落したら暑いってことに気付いた。
気付いたというか思い出したって感じだ。
暑いのは当然だけどね?ここ屋上だから。
直射日光ガンガンですわ。
まだ本格的な夏前なのに何この暑さ。

「…てかさぁ、あんたらさぁ」
「ん?」
「…なによ」
「こんなクッソ暑いのにそんなむさ苦しい髪型で良くやってられんね」

少なくともテニスすんのには向いてねえ髪型だわな。

「んー、まあ慣れたさぁ」
「やーなんかに髪型のこととやかく言われたくない」

こんちくしょう。
言い方ってもんがあるだろう平古場くんめ。

「というかさ、甲斐くんの髪型ってなんか面白いよね」
「あいっ!?面白い!?どこが!?」
「なんか…こう…ボンッみたいな?」

分かるかな。
こうボンッ?というかモジャッ?という感じが。
うーん、語彙力の無さ。

「プッ、なんか分かるさぁ」
「ちょっ!凛もなに笑ってるんばぁ!?」
「いやでも平古場くんも平古場くんよ。なんで金髪?中学生が金髪て」
「かしましい。人の髪型に文句つけるなっつーの」

おっと怒られてしまった。
お前は甲斐くんで笑ったくせにな!

「別に文句言ってるってわけじゃないけど…ま、綺麗だけどねその色」

ほんと綺麗だよね。
髪だけはね。
汚れがない色だよね。
性格と違ってね。

「おっ、分かってるやっし。ちゅらさんあんに?(綺麗だろ?)自慢の髪やっさー」
「凛の奴、1ヶ月に何回も美容室行ってるんだぜー。わんにとっちゃ信じられないんどー」
「え?マジか何回くらい?」
「別にそう多くないさぁ。あー…少なくとも月3回くらいだな」

多っ!
え、しかも少なくとも!?
じゃあ週1ペースで通ってる系なのか!?
それはまあ…なんというか…。

「金の無駄…」
「無駄ってぬーがよ!?」
「あ、スマンつい本音が」

美容室に通い詰める中学生男子とか。
まあ今の時代美容意識高い系男子も多いだろうけどさ。

「てかさぁ、だったら平古場くんって海潜ったりするのってあんま好きじゃないの?」
「は?何の話よ」
「そんだけ髪大事にしてんなら海とか潜るの嫌なんじゃないのかなぁとか思って。海って髪傷むイメージあるし」
「別にそんなくとぅないさぁ。むしろ好きやし。つーか普通に部活で海岸荒行してんだろ」

それもそうか。

「それに凛、よく銛で魚取ったりしてるよなー」
「おう」

森で!?

「アホか」
「え、ちょ、色々なんでだ

口に出してないし何に対してアホと言われたか分からないぞ!?

「やーの顔見てたらぬー(なに)考えてるか大体分かるさぁ」
「えぇ?そんなにうちら以心伝心になった覚えないけど」
バッ…!そーゆー意味じゃないんどー!ふらー!!」
「銛ってのは海で魚をブスっと刺して捕まえる道具のくとぅさー」
「あー、昔やってた某番組のとったどー!のやつか」

なるほど勘違いだった。
でも以外だったなぁ、髪大事にしてんのに海潜るの好きだとか。
むしろ髪傷むから良く美容院行くのか?
金の消費ハンパなくなるじゃん。
やっぱり無駄だなぁ。

「あ!ちょっと待ってなんか分かったぞ、やべぇうち天才!」
「は?ぬーよ」
「アレだろ平古場くん。その髪の色って染めるとか染めないとかじゃなくて、海に入りすぎての自然脱色された色だろ!」

海に潜るのが好きでその髪の色とかありえないし。
さすが沖縄人髪の染め方も違ういわゆる塩染めですか!
塩で染まるとか知らんけど!

「いやー潜りすぎは良くないよ平古場くん。髪の毛傷んでいつか早乙女監督みたいに髪の毛フライアウェイしちゃうゾ!」
「…」
「…うん?なんだ無視か?」

平古場くんに表情がなくなってる。
げっ、なにこれまた地雷踏んだパターン!?

「あっ、フライアウェイって意味が分からないのか!ならば教えてあげるよ。フライってのは飛ぶで」
「それぐらい分かってるさぁ!つーかっ…あぁもうこのふらー!!いっぺん死ね!

ガッツン

「あぶぅ!?」

顎殴られた!顎て!
これ普通に暴力事件だろうが!
痛さよりもいきなりすぎてビックリしてると、平古場くんは屋上から出てってしまった。
というか、ストレートに死ねとか言われたんですけど…。
な、なんだよ…。
お前が死ね。

「だ、大丈夫か涼音?なんかすっげー音してたさぁ」
「…顎割れたかと思ったよまじで。平古場くんが少しひねくれてるとか言ったけど…少しどころのレベルじゃないしねアレ。いでで…」

か、噛み合わせが悪くなったかもしれない。
歯医者代とか賄って貰えないだろうか。

「てか…甲斐くんよ。うちはまた何か悪いこと言った?全然そのつもりなかったんだけど」

平古場くんだってはじめ調子扱いてたのにいきなり怒り出して。
マジでなんなのアイツ。

「あ―、からじ…髪の話だと思うさぁ」
「髪ぃ?塩染めだとか言ったから?」
「たぶん」

え、そんなこと!?
せっま、アイツ心せっま!
マジで毎回どんだけ怒ってんのさ、機嫌伺うこっちの身にもなってもらいたい!

「凛は自分の髪気に入ってるし、ああやってふざけて言われて腹立つのも仕方ないんどー」
「ええ…」

ふざけてないし、うち真面目に言ったんだけどな。

「じゃあうちが謝らないといけないパターン?うーわ、めんど…」
「めんどくさいとか言うなって」
「う……わ、分かったよ、謝るよ…。隣の席のヤツと喧嘩してたらたまったもんじゃないしね」

早く席替えしないかなぁ。
むしろクラス替えしたい。
むしろ学校すら変えたい。

「ん、それがいいさー。わんもやったーが喧嘩してんの見てたくないんどー。涼音の怒ったちら(顔)ばっか見ててもつまらないさぁ」

うちをそんなに怒らせてる原因はあなたもあるんだからね!

「はは…笑えるように努力はしますわぁ」

心から笑える日は来るのだろうか。
来ない気もする。
笑いたかったら転校すべきなのだろうか。
絶望。

「それが良いさぁ。わん、涼音ぬ笑った顔しちゅんやっさー」

しちゅん?

「好きって意味さぁ」
「え、マジか。おぉう…あ、ありがとう」

そう言われると普通に嬉しいぞ。
そんなに笑った顔見せた覚えはないけどな。

「…うちも甲斐くんみたく笑えるかねぇ」
「わんみたいに?」
「うん。…甲斐くんの笑ってる顔もうちなんか好きだし」
「しんけん?そう言われると嬉しいさぁ!」

なんと言うか、甲斐くんの笑った顔は無邪気というか呑気というかね。
楽しそうにしてるのはいいと思うよ。知らんけど。

「さ、そろそろチャイムなるだろうし下行こーよ」
「えー?次、日本史だろ。どーせ行ってもまた眠くなるんどー。次もサボ」
「教室帰るよー」

これ以上先生からの信頼を下げてたまるか!
平古場くんの信頼を下げようとしていたのにうちの信頼ばっかガタ落ちるではないか。
うちは1人じゃ教室行けないし。
行きたいけど1人じゃ行けないし。
甲斐くんに連れてってもらうしか他ないのですよ!

「ちぇ。分かったさー」
「よしよし、分かってくれればいいのだよ」

渋々だけど甲斐くんは諦めて一緒に下に行ってくれるようだ。
よかったよかった。

「(…いやあんま良くはないわ)」

教室戻ったら嫌でも平古場くんに会わないといけないし、そしたら謝らないとダメだし。
まーたしばらく口きいてくれない気がする。
…どうしよう、一生口きいてくれなかったら。
別にいっか。



つづく



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