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結構心配してるんです


「ハァっ!?テニス部って何気に人気あんの!?」

衝撃の事実。



17 結構心配してるんです



それはいつもの顔触れと学食で昼ご飯を食べてる時だった。
このテニス部の顔触れで昼ご飯を一緒にすることが日常茶飯事になってんのが怖いけど…今はそれどころじゃない。
なんか恐ろしい話を聞いた気がするぞ。
人気がある?
誰が?
別名オカンの木手くん率いるフリーダムテニス部が?
うっそダーン。

「何ですかその言い方は。何か文句でも?」
「いや文句は無いけどさ…」
「やーはいきが(男)を見る目がねーからな」
うっせぇ平古場

内面は確実に見ている気がするんだがな!

「やしが人気があんのは事実さぁ」
「…ふーん」

すんげぇ不満だが、カッコよく見えないことも…ない。
ムカつくが平古場くんだって、女子には金髪のイケメンに見えるんだろう。
甲斐くんも緩いけど、所謂カッコカワイイ系になるんだろうな…。
木手くんもカッコいいんだろうなそれなりに。
勿論周りの女子目線だけど。
決してうちの意見ではありません。
まずうち的には知念くんが良いんだよね!優しいから!
見た目超怖いけどね!
慧くんは丸々しててかわいいと思うし!

おっと、話がズレた。
確かに言われてみればカッコいいはカッコいいのか…。
人気があるってのは悔しいが分かる気がする。
ま、黙ってればだがな!!

「今物凄く失礼な事考えましたよね」
「かっ!考えてない考えてない考えてない!!考えてないからこれ以上ゴーヤ増やさないで!

ただでさえ1週間ゴーヤづくしDXなのに!!
甲斐くんだってテンションだだ下がりなんだから!
あの甲斐くんがテンション低いとかマジビックリだかんね!?
さすが木手くんの絶対オカン制度!
誰も逆らえない!

「人気あるのは(仕方なく)認めるとして…この中じゃ誰が1番人気あんの?」

必死にゴーヤから話を逸らす。

「俺ですけど何か?」

木手くん即答。
みんなの顔が固まってるぞ。

「そ、そうか…」
「何か不満でも?」
「ないです!」
「…しかし貴女も大役に就いたものですよ、神矢クン」
「え?た、大役…とは?」
「どっかのファンクラブがある学校のテニス部とまではいかねーけど、わったーテニス部もなかなか人気あるからなぁ。そこのマネージャーになるなんて、いなぐの目の敵にされるんどー」

め、目の敵…だと!?

「平古場クン、箸で指すの止めなさいよ。みっともない」
「あ―、わっさん」

木手くんと平古場くんが日常的な会話をしているが、うちにとってはそれどころじゃない。
女子の目の敵…!?
そ、そう言えば、周り見れば女子の視線がキツい気がする…!!
え、なんの視線?
嫉妬?
何が羨ましいんだか分からないんだがね、オカンな紅芋タルトと金髪フリーダムに挟まれてゴーヤを食べる状態が。
変われるなら喜んで変わってあげるよそこのgirls!!
テニス部の雑用とフリーダム部員の面倒をオプションにしてな!

「いつ裏庭に呼び出されても知らねーらんからな」
「はっ!?今時そんな過激派おらっしゃるの!?」
「さあな。ま、やーの言動は一々わじわじぃーするからなぁ。いつ目付けられるか知らないんど―」
「ははは、うちはおめぇの言動が一々ムカつくがな!!

この金髪め!

「まあ取り敢えず、神矢クンは自分の身は自分で守るようにしてくださいよ」
「え、セルフでっすか」
「当たり前ですよ。手の掛かる部員ばかりですから、これ以上なんて面倒見切れません」
「……」

もっとも手の掛かる部員は先程から無言でゴーヤづくしDXと向き合ってます。

「…涼しい顔してるけど、平古場くんだって手掛かる部員だかんな?」
「は?わんのどこが手掛かるって?」
勝手に勘違いしてマネージャーを連れてきたところですよ
「……」

ナイス!!
木手くん超ナイス!
返す言葉がない平古場くんを見て無性に嬉しくなった。

「へっ!ざまぁ!」
「テメッ!!」
「ちなみに神矢クン、貴女もですからね
「マジか!?」
「転校初日に廊下に立たされたり、部活の用意すらまともに出来ないのは誰ですかね?」
「……」
「…団栗の背比べさぁ」

静かに知念くんに言われた。
返す言葉がありませんでした。


そして時が流れ、午後練の前。

「あー…」
「最近テンション低いな、裕次郎」
「当たり前さー…1週間昼飯がじゅんにゴーヤって…そりゃテンションも下がるさぁ…」
「あぁ、この前の補習のヤツか…結局部活に間に合わなかったからな」
「だからってゴーヤづくしDXって…。生きた心地しないさー…」
自業自得だと思うんですがね
「うわっ!?」
「え、永四郎…いつからそこに…」
「大分前からですよ。補習の件は甲斐クンも神矢クンも普段の行いが悪いからですよ」
「…まあ神矢は転校して初っ端だったからな…仕方ねーらん」
「おや、神矢クンを庇うんですか平古場クン?」
「なっ、べ、別にそんなんじゃ…!!」
「そんなことはどうでも良いですが…その神矢クンの姿が先程から見えませんが。まさかまた補習とか言いませんよね」
「あー、何か用があるとか言ってたから、わったー先に来たんだばぁよ」
「何か急いでたな」
「早速女子に呼び出しでもされたんですかね」
「昼の話か?まさか」
「呼び出されて素直に行くほど涼音も単純じゃねーらん。その時はたぶん、わったーに責任があるって無理やり巻き込んでくるさぁ」
「…」
「有り得るな…」
「…兎に角、ありもしないことに杞憂しても無駄ですよ。早く練習に入りますよ」
「おう」
「だーるなぁ…」
「ん?やったー、ぬーしてるんばぁ?」
「お、慧くん」
「…?神矢、居ないんだばぁ?」
「神矢クン、ですか?」
「用事があるとかで、後から来るってよー」
「んー…ならやっぱわんが見たの、神矢だったのか」
「え、どこで見たんだばぁ慧くん?」
「あー、校舎でだけどな。何人かのいなぐと一緒だったさー」
「!」
「…物凄いタイミングですね」
「…ぬーぬくとぅ(何の事)だばぁ?」
「あー…そういや慧くん、あの時席には居なかったから話聞いてねーらん」
「?」
「…永四郎…」
「どうする…?」
「神矢クンがそこらの女子に負けるとは思えませんが…」
「……」
「仕方ありません。…探しますよ」
「…おう」


部室でそんな会話があったとは露知らず。
うちはトボトボと廊下を歩いていた。

「…ごめんね知念くん、なんか巻き込んで」
「ん、気にすることないさぁ」

一緒に歩いていた知念くんに謝った。
気付けばもう部活が始まってる時間だった。
間に合うようにしたつもりなのに…。
しかも知念くんまで巻き込んで。
なんか、情けない。

「はぁ…てかイタ…」

頬が痛い。
痣にならなきゃ良いけど…。

「…神矢、大丈夫か?」
「え?あ、ありがとう。どーってことないよ。自分の不注意なんだから」

心配してくれんなんて、さすが知念くん優しいわー…。

ドンっ

「おぼっ!!」
「うわっ!」

余所見してたらまたぶつかった!

「神矢……ちゃんと前見ろー」

さすがに知念くんから呆れたような声がきた。
ごめんなさい学ばなくて。

「あ、それよりすいません、ぶつかって…」
「涼音っ!」

え?

「…あ?甲斐くん?」

ビックリした、もさもさが近かった。
ぶつかったのは甲斐くんだったのか。

「何でこんなとこに…部活は、そうかまたサボリか」
「そんなことどうでも良いさぁ!」

いや良くはないよな。

「怪我は!?何ともないんばぁ!?」
「怪我?ってちょ、ぐっ、がっ」

甲斐くんがうちの両肩を掴んで凄絶に前後に揺さぶってくる!
そ、そんな乱暴に脳ミソシャッフルされたら、何ともないのが何ともあるになるだろ!

「ち、ちねっ…こ、こいつ止めっ」
「…裕次郎、取り敢えず落ち着けー」

べりっと知念くんに甲斐くんをはがしてもらう。

「えっ…知念?…あれ、やーが最初に涼音見つけたんばぁ?」
「見つけた?」

見つけたとか怪我無いかとか、なんなんだコイツさっきから?

「甲斐くん、さっきから一体なんなん…」
「裕次郎!神矢は…って!」
「居るじゃないですか」

な、なんか来た!
木手くんも平古場くんも来た!
砂糖を見つけた蟻のごとくテニス部員がぞろぞろ集まってくる!
もう部活始まってんじゃないの!?

「な、なになにどうした何があった!?」
「何があった、じゃねーらん!その怪我どうしたんだばぁ!?」
「え?」

来た途端、平古場くんに怒鳴られた。
なんかうち、いっつもこの金髪に怒鳴られてるよな。

「怪我?…あ、気付かなかった…」
「甲斐クン…観察力が欠けてますよ」
「あ、ああ…これか。まあ小さいもんだし気付く方が凄いよね。痣にならなきゃ良いけどさぁ」
「痣とかそういう問題じゃねーらん!誰にやられた!?」
「は?」

誰にやられた…とか言われても。

「誰って訳じゃないし…」
「…言えないんばぁ?」
「え…言えない…言いたくない、と言うか…」

知念くんと目が合う。
知念くんも言葉に困ってる。
まあ当たり前だよね。

「…ぬーがよ…」
「え?は?」

なんか普段以上に苛々してる平古場くん。
意味が分からない。

「わ、わったーが悪いんだばぁ?涼音がこんな目に遭ったのって」
「は?な、なにが?」

甲斐くんがいきなり良く分からないことを言い出したぞ。

「わったーテニス部に関わってるから…涼音がこんな目に合ったんだろ…?」

え?
テニス部とこの痣が関係あるなんて、いま初めて聞いたんだが。

「ちょ、ちょっと待って。なに。意味分かんない話見えない。うちが怪我したのって、テニス部のせいなの?」

そう聞いたら、なんか木手くんたちが顔見合わせた。
なんだよなんだよ。

「…昼の話であったでしょう。そのうち女子に呼び出されるかもしれないと」
「うん?あー、そういや言ってたね」
「…さっきあのデブが見たんやっし。やーが女子たちと一緒に居るところ」
「デブ…え、慧くん?」
「おー」

慧くんをデブ呼ばわりするなこの金髪。

「まあ確かに一緒にいたけど…それが?」
「呼び出されてたんじゃなかったんばぁ!?」
「はあ?呼びだされって…女の子達に?」
「今までの話の流れで、それ以外誰が居るんですか」

いやまあそうだけども。

「な、なんかめっちゃ話ゴチャゴチャしとる。みんな、えらく勘違いしてない?」
「…勘違い?」
「うちは呼び出されてなんかないし…むしろ呼び出しなんかされたら元凶のあんたらを無理やりにでも巻き込むからな!
「…やっぱりな」

何がやっぱりなんだ?

「なら、何でさっき女子と……」
「え?貰いに行っただけだよ。タルトとマフィンとマドレーヌ

ばばん!と袋に入った大量のお菓子を見せつけてやる。
見ただけでよだれが出る!超おいしそう!

「…は?」
「へへー良いっしょー。死んでもあげんからな!
「いりませんよ。…それを貰うために行ったんですか…」
「そうだよ?なんかねー、知念くんのクラスの女子がさ、家庭科で作り過ぎたって言ったの聞いてさぁ。指くわえて見てたら分けてくれるって言ってさ!」

比嘉の女子はみんな優しい心の持ち主なのだね!
涼音ちゃん感動してしまいました!

「んで、授業後貰いに行ったのさ」
「…その怪我は」
「あ、あー…えっとねー…」
「貰ってテンションあがって、教室出るときドアに顔ぶつけたんやっさー」
「ちょっ!知念くんうちの恥を曝さんといて!!」

思ったよりもりもり沢山貰えたから嬉しくて小躍りしてしまって。
そのままドアに顔面強打してしまったのさ。
さっきも甲斐くんとぶつかったけど、本当にうち前方不注意なんだよなー。

「……」
「……」
「……」
「…え?」

なにこの沈黙?

「き、木手くん眉間に皺寄り過ぎだし…平古場くん目元めっちゃひきつってるし」
「……神矢」

平古場くんのめっちゃ低ぅい声。
あっ、ヤ な 予 感。

スッパァン!!!!

あだぁああ!?ちょ、痛いってそこドアで強打したんですが!?」
「知るか!ふらー!!」
「本っ当に貴女は手間の掛かる人ですね…」

木手くんに力まれた。
てか平古場くんに平手されたほっぺたクソいてぇ!
なんでいきなり叩いてくんの!わっけわかんねぇ!

「…わったー心配してたんだばぁよ、涼音が女子に絡まれてんじゃないかって」
「は?」

心配?

「何やかんやで1番必死に探してたのは凛やし」
「ばっ!ひ、必死なんかじゃ!」
「それに木手が初めに涼音を探しに行こうってあびたんだぜー」
「…神矢クンがどこでテニス部に泥を塗るような失態をするか分かったものじゃありませんから」
「ま、兎に角、全員涼音が心配だったんやっさー」
「心配…?」

甲斐くんに言われて、木手くんと平古場くんを順繰りに見る。

「…そんなに自分たちが人気あるとでも思ったんか!自分たちが人気あって裏でマネージャーが女子からリンチにでも合うと?ウワァすげぇ自意識過剰!自分がどんだけ人気あると思ってんのウケるー!」
「……」
「……」

ギリギリギリギリ

「いだだだだだだだだ!!?」

追い討ちかけるように、ドアでぶつけて平古場くんに殴られたとこを木手くんが抓ってきた!!!
痛いどころじゃねえ!

「…ハァ…これだけ減らず口が叩けるなら殺されても死なないでしょう」
「もーやってられるか!練習行くんどー!!」

足音も荒く平古場くんは戻って行ってしまった。
木手くんも木手くんで、でっかい溜め息ついて行っちゃうし。

「…なんでやねん!」

ほっぺた死ぬほど痛いんですけどー!?

「…涼音ー」
「あ!?なに!?…うぶっ!」

2人の態度が腑に落ちず勢い良く振り向いたら、甲斐くんに頬を両手で挟まれた。
もー!なんだよどいつもこいつもぅァア!!!

「…さっきも言ったんどー?わったー、しんけんに心配してたんばぁよ」
「えっ……す、すんません…」
「あんな風に返されたら誰だって怒るさぁ」
「ご…ゴメンナサイ…」

か、甲斐くんに説教されてしまった…。

「え、えーと…なんか心配されてるとか…信じられんくて…ほ、本当にすみませんでした…調子乗りました…」
「心配されるって、友達なんだから当たり前だろ?」
「え」

友達。
…友達?

「…ありがとう…?」
「ん。分かってくれるなら良いさぁ」

甲斐くんがようやく手離してくれた。
変わりにワッサワサ頭を撫でられた。
…友達なのだろうか?
うちと、甲斐くんとか木手くん、平古場くんが。
友達…では無い気がする。
こんなにも一方的に虐げられる間柄の友達が居るのだろうか?

「よし、涼音ー知念ー!!部活行くんどー!」
「おー」
「えっ?うちこの状態で部活?
「…神矢、頬真っ赤やっし」

そりゃあドアにぶつかり平古場くんにはたかれ木手くんに抓られ甲斐くんに挟まれたんだからな。
おたふくかぜのように腫れているだろうよ。
軽はずみな言葉の代償がこれか…重過ぎる気がする。

でもまぁ…一応、木手くんと平古場くんにも謝ろうか…。
何度も言うけど、木手くん達がうちを心配してくれるなんて信じられんかったんだよなぁ。
いつも見つかったら潰される夏場に飛ぶ蚊の如く酷い扱いされんのに、心配してくれるなんてさ。
改めて考えると、すこーし嬉しかったり…するのかもしれない。


つづく



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