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テスト勉強はちゃんとするべきなんです


とりあえず朝は遅刻せずに済んだ。
済んだ、のだけど。
珍しく甲斐くんが朝練に来たため、その理由を聞いた木手くんが「ならばこれから毎日神矢クンと平古場クンに起こしに行ってもらいましょうかね」という提案をしやがった。
ちくしょう。本当に仕事を増やされてしまった。



14 テスト勉強はちゃんとするべきなんです



朝練も終わって教室に移動した。
荷物を机にしまいながら隣にいる平古場くんに声をかける。

「ねー平古場くん」
「ぬーがよ」
「本当にこれから今日みたいな起こし起こされの日常を過ごすの…?」
「…永四郎がそうあびた(言った)んだからもう決まりさぁ」

うわぁ出たよ絶対オカン制度!
誰もオカンこと木手くんには逆らえない。
「絶対オカン制度」はもはや今年の流行語大賞ノミネートだよね!
そんな横暴な制度は廃止するべきだと思います!

「くそー、どんどん面倒くさい仕事増やしやがってあのコロネが!」
「キレたところで何にも変わらないだろ。文句言うの止めろウザイ
「う…!?」

ウザイだと!?
そういうことは思ってても面と向かって言うなよな!

「うざいって平古場くん、それはそっちの方が!」
「文句言ってる暇あるなら勉強したらどうなんばぁ?」
「…は?勉強?」

何のことか分からずに目を丸くする。

「ちゅー(今日)の朝イチに古文の小テストがあるんだばぁよ」
「おぅっ!?」

驚いて変な声出してしまった!
しょ、小テスト?
テストとかうちが嫌いな言葉じゃないか!

「そんなんうち聞いてないんですけど!?」
「そりゃそうだろ。ちぬー(昨日)古文の授業もなかったしな」
「ちょ、それでいきなりテストかい!古文の授業一発目がテストって!」
「ハハッ、いい気味さー」
「平古場てンめぇ!」

い、いやだめだ。
声デカくしたけどこんな金髪に構っている暇はない。
少しでも勉強せねば!

「よーしじゃあ授業始めるぞー」

先生登場。
早い、早いよ来るの…!
どんなにやる気に満ち溢れてるのさ先生…。
そしてそのまま授業開始の挨拶して、何の心の準備もしないまま先生がテスト用紙を配り始めた。
もっとチャイム鳴ってから10分くらい遅れて来てくれても構わなかったのに…。
むしろ来なくても良かったのによー!

「はっ、残念だったなー」

ざまぁみろとばかりにムカツク笑みを浮かべていた平古場くん。
笑ってんじゃねーよこの金髪が!

「ちくしょう…テストの内容もロクに知らんまま受けるのか…!」

本当の実力テストってこんな感じなんだろうね!
範囲も分からないって言うね。
困ったもんだよ!

「で、でも平古場くんだって教室入ってから1回も教科書開いたりしてないじゃん!うちとお相子だよね!?」
「どーだろうな?」
「…なにその余裕」

そうかあれか。
「私ノー勉だよー!」って言う子ほど100パー勉強してるってヤツか。
密かに家で必死に勉強してきた系か。
だから余裕なのか。
ばかやろうめ。

「そんな変なちら(顔)してないでさっさと解答用紙受け取れよ」
「あだっ!わ、分かってる分かってるよ」

横から小突かれた。
解答用紙前から回ってきてんのになんで横から小突かれなきゃなんないのかな!

「フンだ!こんな小テストくらいノー勉でクリアしてやるんだからな!」
「おー言ったな?だったら満点くらい取ってみろよ」
「取ってやるさ!取ってやんよぉ!」

満点とって平古場くんの目玉が飛び出すところを見てやろうじゃないか!

…そう意気込んだ20分後。

「……」
「誰だよ、満点取るって啖呵切ったヤツ」
知らねーな
「やーやっし!」

チクショー…。
隣同士で交換して答え合わせをしたんだけど、返ってきた小テストの用紙を見て落胆した。
落胆というか、想像できたというか…。
でも20点中2点っていうのは…さすがにちょっと…。
抜き打ちテストに弱いのは理解してたけどこれ程までとは。

「…てゆーか、何なの平古場くん」
「は?何がよ」
「平古場くんて何気に頭良いの?」

こいつ、満点取りやがった。
丸付けしてる間、後半に行けば行くほどイラついたから後半の丸は全てスマイリーになっています。
スマイリーっていうか、怒ったり泣いたり丸が百面相してます。
ロクに答案用紙チェックしてないおバカな平古場くんは気付いてない様子。
ざまぁ。

「何気じゃねーらん。こう見えてわん結構勉強出来るぜー?…まあ、英語除いてだけどな」

つまり英語は苦手と。
いや、それを差し置いても自分で勉強できるって言ってるとか!

「うーわウッゼー」
「ハッキリあびてんじゃねーらん」

なんだよ、そっちだってさっきウザイって言ったくせによぉ!

「なんだよなんだよ、テニス部バカっぽい顔して勉強出来んのかよー…甲斐くんとかアホっぽい顔してんのに勉強出来たりすんのかよー」
「いや、裕次郎は…」
「また0点とは良い度胸だな甲斐。そんなに補習がしたいのか?」
「わんだって好きで取ってる訳じゃないさぁ!補習は勘弁!」
「……」

教室の前の方で、甲斐くんが先生に怒られてた。
良かった、彼はバカのようだ。

「正確には裕次郎やっし。やーもふらーなんだからよ」
「うっさい!」

というかナチュラルに心読むなよ!





時間は過ぎて、休み時間。

「もう踏んだり蹴ったりさぁ…」
「ある意味すごいね甲斐くん。まさか午前中にある小テストでオール0点とはね…」

はあぁ、と深くため息をつく甲斐くん。
天才だと思うよ。悪い意味でね。

「何も聞かされてないうちでも2点とか3点は取れてるんだからね?」
「それでも2点ってぬーがよ」
「うっさいなぁ」

ノー勉で2点って頑張った方だよね?
チョー頑張ったよね?
うん、頑張った。
誰も褒めてくれないから自分で褒める。

「で、マジで補習って言われたんだよな」
「おー…」
「ま、自業自得さぁ。2人とも
「なんでうちまで…」

オール0点の甲斐くんのみならず、うちまで補習組に入れられた。
しかも補習はオール0点の甲斐くんとオール一桁だったうちだけ。なぜだ。

「2点と0点は変わんねーらん」
「うぐぐ…」

ちっくしょー。
全ての教科ノー勉だから仕方ないだろ!
先生たちも心が狭いわー!

「あーあ、こんなに小テストがあるんだったら昨日寄り道なんかしてんじゃなかったよ…甲斐くんも小テストあるんなら教えてくれよな!」
「したいことあったんだから仕方ねーだろー」
「この自由人が!平古場くんだって一言くらい忠告してくれたっていいじゃん!」
「嫌だ」
「何でだよ!」
「なんぎやっし」
「なんぎって…めんどくさいとかそういう意味?」
「おー良く分かったな」

ははは、褒められても嬉しくないわ。
こいつには親切心は無いんだな。
なんとなく分かってたけど!
同じクラスになってまだ2日だけど、理解した。

「やしが今更補習から逃げれる訳じゃねーらん、まあちばろーぜ涼音」

甲斐くんにしてはマトモな意見。

「…はぁ…それしかないかぁ」
「補習は放課後だろうし、永四郎に報告しねーとだろ。ま、ちばりよー」
「「ゲッ!」」

それが1番の問題じゃないか!
本当に今日は散々だよ!

「…あ、というか甲斐くん。ちゃんとお金持ってきたよ。昨日の」
「お、サンキュー。あんまり慌てなくても良かったんだけどな」

お金を受け取りながら甲斐くんがそう言うけど、お前が急かしてたんじゃねぇか。

「…ぬーがよ神矢。裕次郎に金巻き上げられてるんばぁ?」
「なんでや。何が楽しくてこんなアホに金を貢がにゃあかんの!」
「ちょ、涼音!たーがアホなんばぁ!?」
「え?甲斐くんが」
「ひでぇ!」

平古場くんは頭脳的にはアホじゃないらしいからな。
悔しいことに。

「話戻すけど、昨日寄り道した時に甲斐くんからお金借りたのさ。だから返しただけ。ね?」
「…おう。キーホルダー作ったんだぜー」

そう言って甲斐くんが鞄を示す。
ちゃら、と昨日買ったキーホルダーが鳴る。

「カッコ良いだろ?お揃いなんばぁよ」
「…お揃い?」
「おー」

なんか強制的にな。
ま、なかなか格好良く出来たからいいんだけどね。

「でも結構良くない?いい出来だと思うだよねー」
「お。涼音、はじめノリ気じゃなかったのに気に入ってるじゃん」
「まーね!」
「…」
「ぬーがよ、凛。感想とか無いんばぁ?」
「…別に、わん関係ねーし」
「なんだなんだ平古場くん。仲間外れにされて捻くれてんの?」
「あらん」

即答かよ。
こいつうちに尋常なく冷たいよな。
元から非情な人間だとは思ってましたが!

「ふーん。なら妬いてるんばぁ?」
「…は?」
「はぁ?」

うちと平古場くんが同じ反応する。
やく?焼くとは?
なんのことだか分からない。

「ぬー(何)ふらーなことあびてるんばぁ、裕次郎。たーが妬いてるって?」
「そりゃ凛がやし。わんが涼音と仲が良いことが気に食わないってちら(顔)してるさぁ」
「ちょ、髪わさわさしんといて!?」

甲斐くんが雑に撫でてくるもんだから髪がぐっしゃぐしゃになる。
あーあー、頭がボンバイエー。

「神矢がたー(誰)と仲が良かろうと悪かろうと、わんには関係無いんどー」
「なんかよく分からんけど…ま、その通りだよね。他人の交友関係なんざ知ったこっちゃないしね!むしろ知ろうとしたらプライバシーの損害で訴えるゾ!」
「……」
「…涼音…」
あれ?

冗談交じりで言ったつもりが思いっきり滑った。
2人の視線がめちゃくちゃ痛い。
場を和ませようとしただけなのに!

「ま、まあとにかく!不機嫌な平古場くんにはこれあげる!」
「…は?」
「手ぇ出しな!」
「…何するんばぁ?」

すげーうちを疑うような目で見てくる。
その目やめろ。

「なんで基本疑うのかな。別に触ったら魂抜き取るとかいう怪しい石渡すわけじゃないんだからさー」
「涼音、そんな石持ってるんばぁ!?」
「そこに食いつかないで甲斐くん」

これだからおバカは。

「はいドーゾ!これは平古場くんの分!」
「は…?」

訝しんでる平古場くんに無理やりキーホルダーを押し付けた。
昨日、甲斐くんとうちとお揃いで作ったのと同じやつだ。

「平古場くんの分も作ったんだよね」
「…わんの分も?」
「まーね。どうせならーって思ってさ」
「…」

…うん?
なんか渡したのは良いが、反応がないのだが。
何か言えや。

「なにさ、いらなかったの?」

ちくしょう、無駄な努力だったのかい。
しかもこれ、なんでか知らんがうち持ちだったんだよ。
金返せよー!

「…いや…にふぇーど」

そう言って平古場くんはキーホルダーをしまった。

「え?…受け取ってくれるの?」
「…折角くれるってあびてるんやっし。一応貰っとくさー」
「マジでか。このツンデレさんめっ!」
「かしましい!」

がつん!

「痛っ!」

平古場くんからグーが飛んできた!
毎回拳骨で殴るのは止めて欲しい。

「良かったな凛、これで仲間外れじゃないんどー」
「うるっせ!」
「良かったねー平古場くん!」
やーは口開くな!
「なんでやねん!」

相も変わらず口が悪いんだからこいつは!

でも、次の日に平古場くんの鞄に付いて光っていたキーホルダーを見たら少し嬉しくなった。
口と性格はドが付くほど悪いけど、なんやかんやでちゃんと付けてくれるとか良いとこもあるじゃないか。
嬉しくてニコニコしながら(正確にはニヤニヤ)平古場くんを見てたら顔面を殴られた。
それは無いぜ。



つづく



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