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朝は早く起きなきゃダメなんです


転校初日とあってか、その日の夜はぐっすり寝れた。
ベッドに入ったらアラームをかける間もなく寝た気がする。
たぶん疲れてたんだよなぁ。
転校の緊張とかじゃなくて…クラスの疲れとか部活の疲れとか…。
うん、根本の原因は同じやつだけどな!
1日でこれだけ疲れるとか、この先思いやられるってもんだよ!



13 朝は早く起きなきゃダメなんです



午前6時前。

「zzz…」

ぴんぽーん。
家のチャイムが鳴る。

「zzz…」

ぴんぽーん。
再び。

「zzz…」

ぴんぽぴんぽぴんぽぴんぽぴんぽーん

「zzz…」


―――― 間。


「zzz………」


バターンッ!!

神矢!さっさと起きろー!
「んガッ!?」

な、なんだなんだなんだ!?
討ち入りか!?奇襲か!?

「いつまで呑気に寝てるんばぁよ!」
「へっ!?え!?うおっ、おぉっ!?」

部屋の中に、というか目の前に平古場くんがいた!

「ひひっひらこばくん…!?」
「平古場くん、じゃねーんどー。やー、まだ目ぇ覚めてないんばぁ?」
「め、目は覚めとるけど…!」

なんでここに!
ここうちの部屋だし!不法侵入か!
訴えるぞ!そして勝つぞ!!

「驚いて声も出ねーのかよ」
「ふっ、普通そうだろ!朝目が覚めて目の前に同級生がおったら誰でも驚くわ!!無断で人の部屋入って来るなよ!」
「失礼な奴さぁ。無断な訳ないだろ。ちゃんとやーのあんまーに了承得たさー」
「あんまーって何だよ!」
「母親のくとぅやし」
「か、母ちゃん…!」

何で年頃の女の子の部屋に男入れるの了承するかな…!
おかしいだろ…!

「とにかく、さっさと準備しろ。やーがノロノロしてたら早く来た意味ないんどー」
「早く…って、ゲッ!5時50分!?」

時間を確認したらまだそんな時間だった!
早ッ!!
何でこんな時間に来てるんだよ!
普段なら夢の中だよ!
もう1回寝ろって言われたら余裕で寝れる自身があるぞ!

「当たり前さー。朝練があるんだからな」
「は?朝練?」

聞いてないんですが。

「昨日、永四郎があびてたの聞いてなかったんだろ」
うん。
「即答すんな!」

オカンの言葉なんて右から左に受け流すよ。

「てか、朝練…朝練かあ…マネージャーって参加しなきゃいけないもん…?」
「当たり前やし」

ですよねー。
ちくしょー、うちの幸せな睡眠時間を減らしやがって。

あれから母親のごとく急かす平古場くんに文句を言いつつ、うちは着替えて家を出た。
でも凄いよなぁ、平古場くん。
年頃の乙女の部屋になんの躊躇いもなく入ってきやがるんだからな。

「やーが乙女とか笑わせんな」
心読むなよ。つーか、平古場くんは何で勝手に人のうちに来たのさ」
「だから勝手にじゃ…」
「不法侵入云々の話じゃなくて、なんで家に来たのってこと」

本当は不法侵入のことも問い詰めたいんだけどね。
訴えたいんだけどね?心の底から。

「あー…別に、わんの家から近かっただけの話さぁ」

近いからって勝手に上がるかな!?
こいつにはどうやらデリカシーという言葉は無いようだ。
デリカシー無さ男か。
くっそ、朝早すぎて眠い。

「…ねむ」
「間抜けなちら(顔)してんじゃねーよ」
「してねーわ!」
「…ま、ちゃんと来る分だけマシだけどな」
「は?来る分?…誰か来ない輩がいるの?」
「裕次郎さー」
「ゆーじろー……え、甲斐くん?」

あのフリーダム野郎は朝練の来る来ないもフリーダムなのか!?
ずっる!

「昨日のあぬひゃー(あいつ)の寄り道に付き合って分かっただろうけどよー、自由奔放過ぎるやっし」
ほんとそれな

他人の意見には耳も貸さないからな、あのわさわさ頭。

「午後練は参加してんだけどよ、朝練はいっつもサボって遅刻ばっかなんばぁよ」
「常習犯なのか…」

副部長なのに遅刻常習犯って大丈夫なのか?
ダメだよね普通。

「まったく、風紀委員のわんの身にもなれっつの」
「風紀委員…」
「なんか文句あるんばぁ?」
ないないない!あだだだだ痛いからコメカミは止めて!!」

平古場くんにこめかみをぐりぐりされる!痛いのなんのって!
何回聞いても平古場くんが風紀委員ってのがしっくりこないのが悪いのに!

「…んじゃ、いっつも呼び行ったりしてんの?うちに乱入して来たみたいに」
「してねーらん。遅刻して来るの注意するだけさぁ」

それじゃあ聞くはずもないわな…。
注意されただけで素直に言うこと聞くようになれば、遅刻常習犯になるわけないし。

「それに朝練ある時に呼びに行く時間なんてねーっての。わんまで朝練遅れて永四郎に怒られるさー」

じゃあなぜうちの家には来たんだ、このやろう。

「…じゃ、甲斐くんはうちが呼びに行くわ。だから平古場くん部活行っていいよ」
「…は?」
「平古場くんは練習があるから遅れられないけど、マネージャーは練習ないし少しくらいいいよね?それに部員をちゃんと練習に呼ぶのはマネージャーの仕事っぽくない?」

木手くんには平古場くんから一言言ってもらえればたぶん伝わるだろうしね。
フリーダムなんて放っといても良いかもだが、やはりフラフラとやるべきこともせずにしてるのは許されん。
それ以前にうちがこんな早起きしてんのに甲斐くんだけ寝坊して朝練不参加なんて許されない。
叩き起こしてやるわ。

「…」
「ほら、これなら甲斐くんも練習来るし遅刻しないし、平古場くんも注意しなくて済むし一石三鳥じゃん?」

ついでにうちも木手くんの監視下でマネージャーの仕事をしなくても済む。
これが一番大切!

「…裕次郎の家知ってるんばぁ?」
「まぁ一応ね。昨日の帰り、わざわざ甲斐くんの家経由で帰らされたからね」

あの野郎、レディを送り届けるっていう概念はなかったようだ。
自分の家の前に着くと「んじゃまた明日なー」と言ってさっさと家に入って行ってしまった。
学校から分かりやすいルートだったから助かったものの、転校初日のうちを1人で放り出したからね?好き勝手に引きずり回した挙句に。
まあ帰れたから良いけどさ。
いや良くはないけど!

「という訳で、甲斐くん呼んでくるわー。平古場くん、遅れるかもしれないってオカ…木手くんに言っといて」
「…わんも行く」
「は?」

平古場くんはが急に言ってきた。

「え?さっき平古場くん、呼び行ったら朝練遅れるから行かないって」
「…わんの勝手やっし」

そう言ってそっぽを向いた。
相っ変わらず自由人だな。

「じゃあ…分かった。後はよろしく。起こしに行くのは任せた。遅れるってことは木手くんに伝えといてあげるわ」
「は!?なんでそうなるんだばぁ!?」
「えっ、だって平古場くんが行ってくれるんならうちは必要ないかなーと」
「わんはやーが道にでも迷うかもしれねーらんから一緒に行ってやろうってあびたんやっし!」
「それはそれは、心遣いありがとう。そんな心配も平古場くん1人で行けば必要ないから!…って、何その顔?」

平古場くんは何か言いたいのか口をパクパクさせている。
なんだ?酸欠の金魚の真似か?

「は…初めに言い出したのは神矢だろ!自分であびた(言った)ことは責任持て!」
「え、ええー!?それ平古場くんには言われたくない!…ちょっ、腕離せや!つーかどこ行くの!?」
「裕次郎の家さぁ!」
「平古場くんだけで行けばいーじゃん!」
「あらん!」
なんでだ!

うちの叫びも聞こえないのか、平古場くんはうちの腕を引っ張って歩き出しやがった。
なんでこうなるんだ!





「着いたんどー」

なんやかんやで来てしまった。
結局2人で来てしまった。
どうすんの、下手したらうちらも遅刻じゃんよ。
木手くんに吊るされるじゃんよ。
朝からあの紅芋が怒ってくるよ!

「…聞いてるんばぁ?」
「ひ、ひーへふはらほっへはひっはんほはへへふへはいはは?(き、聞いてるからほっぺたひっぱんの止めてくれないかな?)」

なにナチュラルにやってんのかな!
すぐに手を出してくる男はダメだと思います!

「…じゃ、チャイム鳴らしてみる」
「おう」

ぴんぽーん

「…」
「…」

返事はない。
というか、これマジで1人で良かったよね?
わざわざ2人で来る意味あったのか。

「…ぬーがよ」
「…ベツニー」

ジト目で平古場くんを見ていたら気付かれてしまった。
そっぽを向いて言葉を濁す。
遅刻してオカンに怒られたらすべて平古場くんのせいにしようそうしよう。

「…」
「…」
「…出ないね」
「早いからなぁ…仕方ないさー」

仕方ないっつーか、起きない方が悪いんだからね?
甲斐くんが悪いんだからね?
というか、こんな早い時間に家のチャイム鳴らされるとか良い迷惑だよホント。
甲斐家の皆様、どうもごめんなさい。

ガチャ

「お」
「あ」
「たーやいびーん……って、あ」

甲斐くん出てきた。
けど、今の今まで寝てただろこいつ。
髪が普段以上にボサボサな上にTシャツハーパンって。寝起きか!
くっそ、うちもゆっくり寝たかったよ!

「り、凛…涼音…!?」

ようやく覚醒してきたのか甲斐くんビックリしてる。

「やっぱ寝てたのか、裕次郎」
「羨ましいぞチクショー」
「ちょっ…やったー(お前ら)ぬー(何)してるんばぁ…!?」
「何って、甲斐くん迎えに来たやんねー」
「おう」
「…迎え?」
「平古場くんに聞けば、甲斐くんよく遅刻すると言うじゃないか。だから迎えに来たのさ」

うちが朝早く叩き起こされたのに甲斐くんはゆっくり寝てるなんて許さないんだからな!

「寝てたんだろ、今まで」
「…おー」
「やっぱりな。ずるいぞ甲斐くんめ。うちだってゆっくり寝たかったんだからな!」
「やーも遅刻する気かよ」

遅刻したいんじゃないよ。
朝練に出たくないだけだ。

「とにかく、さっさと準備するさー裕次郎。ちゅー(今日)はちゃんと朝練行くんどー」
「…分かったさぁ」

平古場くんの言葉に、甲斐くんは渋々と家の中に戻ってった。
なんか兄弟みたいだなこいつら。
こんな手間かかる弟いらないけどね。
こんな何考えてるか分からない兄いらないけどね。

それから待つこと5分、甲斐くんは制服姿で出て来た。早。

「お待たせー」
「んじゃ行くか。…今からなら朝練も間に合うさぁ」
「お、久しぶりに木手に怒られなくて済むなー」
「じゃあちゃんと朝練出よーよ甲斐くん」
「無理。朝は苦手なんばぁよ」
「苦手も何もあるかよ!そんな自由な考えで良いわけねーだろ!」

うん。平古場くんの言う通りだ。

「えー…あ。なら涼音!またちゅー(今日)みたいに起こしに来てくれねぇ?」
「え?」

甲斐くんの口からとんでもない提案がきた。
なにそれ、超絶面倒くさいじゃないか!

「う、うん起きて欲しいのは山々なんだけどね。うちも朝弱いし…」
「大丈夫さぁ!」
何がだ。
「涼音なら根性で起きれる!」
「うちが根性で起きれるならアンタも根性で起きようよ」

他力本願過ぎるわ!

「裕次郎、コイツには無理さぁ。やーを起こしに行く前神矢のとこ行ったけど簡単に起きるとは思えねーらん」
「ぬーやが、凛が涼音を起こしたんだばぁ?」
「あー…まぁね」

朝っぱらから不法侵入されましたね。
強烈な寝起きドッキリでしたよ。

「んじゃ、またちゅー(今日)みたいに凛が涼音起こして、2人がわん起こしに来れば良いさー!」
「なんでやねん!」
「なんでだよ!」

フリーな発言にはやっぱり平古場くんもツッコミを入れざるを得なかったようだ。
これ以上うちの仕事を増やさないでほしい!
…まだマネージャーの仕事ちゃんとしたことないんだけどね!


つづく



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