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手伝ってもらうのも必要なんです


今から部活だってさ。
今までの苦労ってまだ序の口だったんだよね…。
疲れすぎてテニス部マネージャーだってこと忘れてたよ…。
オカンの言っていた雑用が始まります。
誰か、誰か助けてください!



10 手伝ってもらうのも必要なんです



「ようやく部活かぁ…ここまで来るに長かったなぁ」
「よー涼音―」

ゴツッ

「いって!ちょ、甲斐くん!ラケットは人を小突くものじゃありません!」
「はは、わっさん」
「まったく…て、あ。ユニフォームだ」

前にも見たけどちゃんと見たの初めてだ。
ここのユニフォームはノースリーブなんだよね。
珍しくない?
他のテニス部のユニフォーム事情とか分からないけどさ。

「おう。どうやっさー。カッコいいだろ?」
あーカッコイイカッコイイ
「全っ然心こもってねーらん…」

気にするな。

「ぬーしてるんばぁ、早くコート行かねぇとまた永四郎にあびられる(怒鳴られる)んどー」
「あ、平古場くん。…ってあっつっ!!!
「うわっ!?ぬ、ぬーがよ!?」
「何だよじゃねーし!あんたこの暑いのにジャージかい!暑苦しいな!」

髪の毛の量だって多いんだから余計暑苦しいだろ!

「この前会った時も着てただろ。それにもう慣れたさー」
「慣れって…なんで長袖なんか着るの、この灼熱の太陽の下で」
「この方がわんに合ってるさぁ」
「そうか、過ごし易さよりもカッコよさか。ウゼー!!しばらく距離置こうか、平古場くん」
「距離置くも何も元からわったーの距離はエベレストのてっぺんと地上くらい埋められない距離があるから充分さぁ」

え、そこまでうちら仲悪かったっけ。

「でもすぐに日に焼けちまうからなー。やーみたいにTシャツだけだったらすぐ黒くなるぜ?」
「うげっ、やっぱ?」
「日焼け止めもあんま意味ないしな」
「マジかぁ…まあめんどくさいから塗ってもないけどね」
「やー、じゅんにいなぐかよ…」
「うっさいな!つーかいなぐってなんなんだ!
「分かんねーのに怒鳴るなよ」

バカにされてるって事は雰囲気で分かったので。

…後で知念くんに聞いたところ、いなぐってのは「女」って意味だって教えてくれた。
やっぱバカにしてたじゃねえか!





「今日は2、3年は普段通り試合形式練習を、1年は素振りと玉拾いです」
「「ハイ!!」」

コートに集まった部員を前に、オカンが腕を組んで指示を出している。

「ちなみに監督は出張かなにかで居ないそうなので。だからと言って気を抜かないでくださいよ」

なにかってなんだよ。
アバウトだなぁ。
てか監督、前の時も居なかったんだよな。
まだ会ってもないのにうちマネージャーやってるんだけど。
いいのかな…。
まあいいか。

「…ねー知念くん」
「…ぬーやっさー?」
「この部活の監督って、誰?うちまだ会ったことないんだけど」
「あー、監督…早乙女晴美って名前の監督さぁ」
「早乙女晴美……晴美」

ほお。
女の監督か。
女なのにこんなむさ苦しい男の部活をまとめるなんてだいぶ凄い人なんだろうなぁ。
なんか少し会ってみたくなった。

「…やー、勘違いしてねーらん?」
「え?」
「監督はいきが(男)やっしー」
「へ、いきが?」

なんか聞いたことある気がするけど…忘れた。
やっぱまだまだ方言は理解出来ない。

「…いきがってのは、」
「何してるんです知念クン、早くウォーミングアップに入りなさいよ」

気付いたらオカンが傍に居た。
いつの間に。

「……おー」
「ごめんね引き止めちゃって。じゃあ知念くん、がんばってー」
「んー」
「…」
「どこ行くんですか、神矢クン」
いやどこにも!?

オカンの近くから離れるべく静かに移動していたのに気付かれた。
バレないように逃げようとしたかったのに。

「君はこれからマネージャー(雑用)としての仕事を覚えて貰いますからね。ボーッとしてる暇はないですよ」

(雑用)ってなんだよ(雑用)って。
聞こえたんだからな!

「わかったよ…。で、仕事ってまず何すればいいの?」
「まずはタオルの準備をして来てください。部室に積んでありますから」
「はいはい……めんど」
早く行かないとゴーヤ食わすよ
ごめんなさい行ってきます

くっそー、まさかゴーヤがうちに効くようになるとは!!
でももう口に突っ込まれたくないし、箸で殺されかけたくもない。
だから頑張って行ってきます。





「あー、前見えねー」

オカンに脅され、取り敢えずタオルを持ってきた。
何枚かとか言われてないし、何人分必要かとか分からないからとりあえずある分全部持ってきた。
そのせいで前が見えない。

「ちくしょー…タオルあんなに置いとくなよなぁ!」
「一気に持ってくるやーが悪いんだろ」
「うっお!!」

だ、誰だ誰だ!
タオルで全然見えない!
もはや気配すら感じ取れない!

「ったく…ふらーも良いところやっし」
「え、うっわ!」

タオルを横取りされた。
けどこれで久しぶりに視界が開けた。

「…あ、なんだ平古場くんか」
「前が見えねーらんくらいタオル持ってくるヤツがいるかよ。じゅんにふらーだな、やー」

おま、どこまでバカにするの。

「この半分くらいで充分足りるさぁ」
「あ、そう…。だってオカンどのくらい必要か言ってくれなかったしさー。勘で持ってくるしかなかったんだよ!」
「だからって全部持ってくるヤツがいるかよ」
ここに居る!
「あのな。……はー…とにかく、前見えねーくらい運んでたらいつ転ぶか分からねーらん。せめて運ぶ時手伝って貰うとかしろよな…」
「だってみんな部活やってたじゃんよ。手とか借りれないしさー」

借りたらオカンに怒られそうだし。
「何練習してる部員に手伝わせてるんです。雑用はマネージャーの仕事のはずですが?」とかねちねち嫌味言ってくるに違いない。
それが1番いやだ。

「運ぶぐらい誰でも出来るっつーの。ったく、まだ知らねーくとぅ
(事)ばっかなくせに、バカみたいに無理さんけー(無理すんな)」

ぶつぶつ言いながらも平古場くん、タオル持ってってくれる。
何こいつ。

「…平古場くん?」
「何だよ」
「まさか、心配してくれてんの?」
「はあっ!?」

そう言ってみると、平古場くんは目をひん剥いて振り返ってきた。

「いやさ、文句言いながらも手伝ってくれてるし?」
「ばっ、な、何言って…」
「真っ先にこーして来てくれたの平古場くんだし。…なんだぁ結構いいとこあるじゃぶっはぁ!!

いきなりバッサー!とタオルを投げつけられた!
それと共にひらひらと地面に舞うタオル。
褒めたのになんと理不尽な!!

「な、なにすんのさ!タオルほとんど散らばっちゃったじゃん!ばかやろうオカンに怒られる!
「か、かしましい!やーが変なことあびるからやっし!!」
「え、変なこと?いや、別にそのままのことを言ったつもりなんだけど…」
「ふらー!!」

また怒鳴られた。
何でやねん!

「…っ、勝手にしてろー!」
「あ」

行っちゃった。
何あいつ。
褒めたってのになんで怒られなきゃなんないんだ。

「訳わからん」

とりあえず、タオルタオル!

「まったく、褒めてやったのになんで怒られて仕事を増やされなきゃいけないんだ…」

地面に散らばったタオルを拾う。
お、あんまり汚れてない。
はたいて畳んで出しちゃえば良いか?
いっか!
うちが使うんじゃないし!
他の探して持ってくるのも面倒だしね!
周りにオカンも居ないし、ほら誰も怒る人居なーい!
大丈夫だいじょう、

ぬーしてるんばぁ?
すいまっせんでしたああああ!!!!

周りに人全然いたじゃん!
気付かなかった!

「…どうした?」
「…あ、ち、知念くん」

振り向きざまに必死に謝ったら、そこには知念くんがいた。

「…タオル、巻き散らかしたんばぁ?」

怒られる人じゃなかったけど見られてた。
くそ、やっぱり新しいの持ってこなきゃだめか。

「あ、あぁ…ごめんね…。原因の8割は平古場くんのせいなんだけど」
「凛君が?」
「うん…。手伝ってくれたと思いきやいきなりタオルぶつけてきたのだよ。嫌がらせとしか思えないね」

仕事を増やしやがってあのクソ野郎。

「…まあ、ぬーがら(何か)あったんやっしー。…あんしーわじるなー」
「わじる…?」

わじわじぃーがイライラするだから、イライラすんなみたいなこと?

「そんなに怒るなってことさぁ」

おぉ、ほぼあってた。

「はは…ありがとう。いちいち怒ってたら体力持たない気がするしね…」

平古場くんとか甲斐くんの相手をする時は自分を抑えないとダメだと思う。
そうしないとそのうち体中の血管がすべて切れてしまう気がする。

「はー…」
「ん…わんも手伝うさぁ」

溜息をついていると、知念くんがタオルを持ってくれた。

「え…マジですか!?え、でもまたオカンが怒り来るかもしれないし、いいよいいよ!」
「ウォーミングアップも終わったし、今は他の奴らがコート入ってるから大丈夫さー」
「知念くん…!」

彼は本当に神だ。
タオルぶつけてきた金髪とは違うなぁ!


そのあと知念くんに手伝って貰ってタオルを片付けた。
オカンにはタオルぶちまけたこと黙って通そうと思ったけどやっぱり無理だった。当たり前だけど。
部活中なのにしこたま怒られました。
辛かったです。
…あと監督って男だって。
晴美って名前の男の人だって。
もうなんか、いろいろショックでした。



つづく



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