守りたい、あの笑顔!
「
待てええぇ!」
「ひいいいぃ!!」
「「「うわああぁ!」」」
森の中、かわいいエンジェルたちと水浸しな私と刀持ったおっちゃん数人と追いかけっこ中です!
忍者のたまごと丸腰な一般ピーポーに対して刀は反則だと思います!
「なんでこんな事にぃぃ!」
「食堂のおばちゃんに頼まれてきのこ採りに来て道に迷った挙句、あのおじさん達の食料をしんベヱが食べちゃった上に、捕まえたら売って生活費にするための動物用罠を全部おれたちが壊しちゃったからだろー!」
忍たま特有の説明口調ありがとうきり丸くん!
ていうかきのこ採りに来て迷ったのねきみたち!
「そ、それよりおねーさんっ!早いですぅ!」
「えっ!?あ、ごめん!?」
必死に走っていたらいつの間にか3人から距離が出来ていた。
山の中でしかも全身水浸しなのにやけに軽やかに走れる。
そこまで息切れもしてないし、まだ走れる気がする!
大人になって運動一切してないってのにすごいな私!
火事場の馬鹿力ってやつ!?
とか思いながらスピードを落とし、3人と横並びになって走る。
「も、もう、キリがないよぉ!」
「こ、これ以上、は、走れないぃ〜…」
「し、しんベヱがんばれ!」
「で、でも…」
あわわ、ダメだ、みんな体力の限界や!
そうだよね、しんベヱだって見るからに走るの辛そうだし!
だからって60キロオーバーを抱えて走るほどの力はないし…!
「ね、ねえ、あそこの草むら通り過ぎたらいったん隠れよう!?」
走る先に草木が生い茂っている箇所がある。
うまくいけば、あそこでおっちゃん達を撒けるかもしれない!
「そ、そんなこと出来るんですかぁ!?」
「だ、大丈夫!も…もしなんかあっても私が何とかするから!大丈夫!」
「お、お姉さん…」
3人とも泣きそうな顔になる。
くっそ、勢いで言ったけどこんなエンジェルを犠牲するなんて出来ないもんな!
出来るか分からないけどやるっきゃない!
いざとなったら囮になりゃいいんだ!
この子たちのためならなんだって出来る気がする!
草むらに入り込むと、うまい具合に地面に窪みがあった。
ここに屈めばそう簡単には見つかんない…はず!
「(…しゃがんで!)」
ガサガサっと茂みに入り込んで、3人の頭を抑えて屈む。
誰からかは分からないけど
ぐえっ!っていう声が聞こえた。
ご、ごめんね強く押し過ぎたね!
「…くそっ!見失ったか!」
「おい、どこ行きやがった!」
ガサガサとおっちゃん達も草むらに入ってきたのが音でわかる。
うわぁやべえ。
し、心臓バックバク言っております…!
暴れる心臓を抑えながら息を殺す。
横を見ると、乱太郎きり丸しんベヱは見てて可哀想なくらい震えている。
やっぱり怖いよね!私も怖いよ!
刀持ってる人に追いかけられるとか!
…その上、自分たちの生活をぶち壊してくるかもしれない天女らしき人と一緒にいるんだし。
私もこの子達にとっちゃ不安分子なんだなぁと思ってると悲しくなるわ…。
「(い、いやでもこんな姿見てらんないよ!)」
アニメのこの子たちの笑顔を思い出せ!
守りたい、あの笑顔!
それにこの子たちになんかあったら忍たまが
永遠の再放送になってしまうからな!
それはだめだ、私が断固死守せねばなるまい!
音を立てずに3人に寄り、ぎゅっと抱きしめる。
怖くないから!大丈夫だから!
いざ見つかっても私が切られるだけだから!っていう思いを込めて。
3人ともびっくりしてたけど、それぞれ私の服をぎゅうっと掴んできた。
か、可愛いじゃないの……!
っていうか私全身水浸しだった……!
つ、冷たいだろうけど我慢してえぇ!
「…ちっ、逃げ足は早かったからな…どこ行きやがった」
「向こうにゃ村に繋がる道があったはずだ。そっちに逃げたのかもしれねえ」
「逃げられる前に捕まえろ!」
ガサガサ、そしてパキパキと枝を踏み潰しておっちゃんたちが遠ざかってく音が聞こえる。
ど、どうやら行ってしまったようだ。
「……い、行っちゃった…か、な」
話し声と草をかき分け枝を踏みつぶす音が完全に聞こえなくなったのを確認してから一息つく。
そっと3人から手を離す。
安心したらどっと汗が出たわ…。
「はあぁ…良かった…」
「……」
「……」
「……」
「はっ!ど、どうした?」
私から手を離しはしたものの、3人とも動かない。
そ、そうか、いきなり私からぎゅっとやったからか!
こんな不審人物にそんなことされちゃ怖いよね!
「ご、ごめんごめんね!?怖がらせちゃったよね!? しかも冷たかったよね!」
地に頭を擦り付けんばかりに必死に謝る。
それでも何も言ってこない。
な、なんでだ…?と顔を上げた瞬間。
「「「
うわぁぁーん!!」」」
「ぉ
げっ!」
3人がえげつない勢いでタックルをかましてきた!
つい変な声を出しちゃったじゃないか!
「ちょ、なん…」
「うわぁぁん!こ、怖かったぁぁ!」
「もう絶対ダメだって思ったぁぁ!」
「ありがとうございますぅぅ!」
「おっ、うぉっ、だ、大丈夫大丈夫だから!」
揃いも揃って涙を滝のようにして泣きついてきた。
や、やっぱ怖かったんだなぁ…。
よしよしと頭を撫でると少しずつ落ち着いてきたようだ。
「ほ、ほら、もう泣くのやめなね?大丈夫だから」
ぐすぐすと鼻を鳴らしながら、小さく「はい…」って返される。
可愛すぎかて。なんだこの子ら。
…ああ、でもなんとか守れたみたいだ。
エンジェルたちと、あと自分の命も。
すごいな私。
やっぱこの世界で1人でもやってける気がするぞ。
つづく