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  なんだこいつ


「初めまして、天女様!俺、五年ろ組の竹谷八左ヱ門と言います!」
「お、おぉう…」
「貴女の事はここに居る久々知兵助や鉢屋三郎から聞いています」
「お、おぉう…」
「えーと、確かお名前が…」
「拾石和花さんだよ」
「そうか!和花さん、この間は生物委員の伊賀崎孫兵の手伝いをして下さってありがとうございました!」
「お、おぉう…」

壊れかけのレディオならぬ壊れかけの和花のごとく同じ言葉しか口から出せなかった。
何故かって、そりゃあ目の前に五年のはちやたけざえも……竹谷八左ヱ門と豆腐小僧がいるからだ。
朝から部屋にこもり、土井先生が持ってきてくれた計算ドリル(そろばん用)を解いていて頭がパンクしかけてたから息抜きと称して食堂に食器を返しに行く&おばちゃんと談笑しに行ってたのに!
前に豆腐小僧と孫兵くんに会った二の舞にならないように、ちゃーんと時間を見計らって来たっていうのに!
安心して部屋に帰ろうとしてたら呼び止められてこのザマだ!
なんでこいつら居るんだよぉ!

…私が内心怒りに震えていると一定の返事しかしないのを不審に思ったのかはちやたけ…竹谷八左ヱ門が豆腐小僧を見た。

「…同じ返事しかしないけどこういう人なのか?」
「え?俺が話した時には普通だったんだけど」
「…そういや前に三郎が新しい天女様は河童かもしれないとか言っていたような…」
「え!?」
「いや私人間だからね!?」

とんでもない事を言い出したから慌てて割って入る。
三郎めっ!やっぱりカッパのこと話してやがったのか!

「あ、話した」

はちや…じゃなくて竹谷…ああもうめんどい、たけざえもんでいいわ。
たけざえもんが言った。

「いや話せますよ!…何でここにいるんですか…」
「ああ、今日は五年生、午前中授業が無かったんですよ」
「そ、そーなんですか…」

なんで無いんだよ!
自習とかしとけよ!学べよ忍者のたまご!

「兵助や孫兵に和花さんの話を聞いてどんな人か興味あったんです。だから丁度良い機会だと思って」

にっこりと、まあ屈託の無い笑顔でたけざえもんが笑った。
なんだよくそ、爽やかに笑うんじゃねえ!
後から来た天女なんかにキョーミ持つなっての!
…というか豆腐小僧といいたけざえもんといい、なんでこうもグイグイ来るんだ!
こいつらは警戒心というものがないのか!ポンコツか!
下級生のがよっぽど警戒しとるわ!

「どうしました?」
「はっ!」

豆腐小僧に声をかけられ我に返る。
何でもないですゥと取り繕った笑顔を向けておく。

「…わ、私なんか興味持たれるほど大した奴じゃないですよ…?」

だから帰れよ。会いにくんなよ。という思いを込めて言った。

そんな事無いですよっ!
「おぅふ」

えらい剣幕で豆腐小僧が言うから圧倒された。
な、なんなんだ。

「貴女ほど豆腐のことを理解している人はいない!」
「は…ハァ?」

突拍子もないことを言ってきた豆腐小僧に、ついハァ?とか言ってしまった。
いや、でもそう言いたくなるのもしゃーない。
ほんと何を言ってんだこいつ?

「な、何のことです?」
「ほら、和花さん仰ったじゃないですか。豆腐は雲のようだって」
「あ、ああ…」

あのテキトーに言ったことか。
ほんと今思っても変なことを言ったもんだ。

「それって、豆腐は雲のように人にとって必要不可欠なものだって意味だったんですよね!」

目を輝かせる豆腐小僧。

「…はあ?」
「三郎に言われて気付いたんです。雲は人にとって必要なもので、和花さんは豆腐がその雲のようなものだって仰った!つまり和花さんは豆腐がそれだけ素晴らしいと理解していらっしゃるということ!」
なんだこいつ

あ、やべー声に出てしまった。
でもそんな私の引いた言葉も耳に入ってこないのか豆腐小僧は目をキラキラさせてる。
ほんとなんだこいつ。
というか、なんか変に解釈されてしまったらしい。
私は大した意味も含めずに言ったのになんで豆腐が素晴らしいということになってんだ?
なにをアドバイスしたんだ三郎め!

「落ち着け兵助。和花さんが困ってんだろ」
「え?あ、ああ…ごめん」

豆腐小僧を宥めるようにたけざえもんが言った。
そう言われてようやく豆腐小僧が落ち着きを取り戻してくれた。

「というか前言っただろ、豆腐の話をしに行くわけじゃねーって」
「別にいいじゃないか!」
「いや良くねーから」
「…」

なんか勝手に話をしている2人を見てとても部屋に帰りたくなる。
なに?なんなの、ノアちゃんは六年をはべらせ、私は五年をはべらせるフラグでもあるの?ホントなんなの?
部屋に帰って部屋の周りをすべてコンクリ製にして外との交流を一切絶ちたい。
助けてセコム。
それかALSOK。助けて吉田沙●里。

「あ、すみません和花さん!本当はこんな話をしに来たんじゃなくて」
「豆腐の話を『こんな話』ってなんだよ!」
「…兵助、お前は1回黙ってろ」

たけざえもんに静止され豆腐小僧が口をへの字に曲げた。
でもちゃんと黙るのか。えらいな。

「俺、和花さんに聞きたいことがあるんです」
「は、はい?」

改めて私に向き直ったたけざえもんが言った。

「な、なんでしょう?」
「えーと…その」

言いにくいのか何故かはっきり言わないたけざえもん。

「…私は河童じゃないですよ?」

先に釘を刺しておく。
ちゃんと言っておかないとな。
こいつ生物委員会委員長代理だし、カッパとか変に未確認生物として認識されたら後々どうなることか。

「わ、分かってますよ!俺が聞きたいのはそうじゃなくて…和花さん、今は医務室の隣で養生されてるんですよね?」
「あ、ああ、まあ…もう怪我は治ったんですけどねぇ」

お陰様で、とまあ別になんかしてもらった訳じゃないけどとりあえず言っておく。

…するとたけざえもんと豆腐小僧が顔を見合わせた。

「…その怪我は、どうしてされたんですか?」
「え?」

私の顔色を伺うようなそんな表情でたけざえもんが言った。
なんでそんなこと聞くんだろうかとか思いながらも答える。

「裏山で刀持ったおじさん達に追われて、挙句切られたんですよ。ひどいもんですよね。…って」

そう言ってはっと気づく。
ま、まさかこいつら、ノアちゃんが言ってた噂を信じてる奴らなのか!?
私が下級生を誑かして痛めつけられたって思ってるのか!?
友好的な顔しといて近付いて、一気にグサー!と殺る気かこいつら!
やっぱ五年も天女様信者なのか!!
ひーこわい!やっぱ上級生こわい!

…とか思っていると。

「なんだよ、やっぱただの噂だったのか」
「豆腐のことを分かってる和花さんがそんな悪い人なわけないからな!」
「そればっかだな」

なんだかよく分からないが、自己解決でもしたのか二人揃って笑い出した。
どうやら今すぐここで刺される心配はなさそうだ。
けど話が見えん。なんで笑う。

「ああ、すみません。…その、前に少し悪い噂を聞いてしまって」

私が訝しんでるのが伝わったのか、豆腐小僧が話してくれた。

「悪い噂…すか」

やっぱり噂は広まっているらしい。
やっべっぞ。

「あ!いや、あくまで噂だけですから!」

慌てて豆腐小僧が言って、たけざえもんもその横で頷く。

「今、和花さんの話を聞いて噂が間違ってるって分かりましたし!」
「お、おぉう…そうですか…」

とりあえずは、この2人は噂はウソだと理解してくれたようだ。

…理解してくれた?

「え…あなた達はその…噂が間違ってるってなんで分かったんです?」
「「え?」」

そう聞くと2人の声が揃った。

「だって本当のことは今仰ってくれたじゃないですか」

きょとんとした顔で豆腐小僧が言う。

「いや、でも…なんと言うか、まだ会ったばっかりでろくに話したことない私の言ったことをよく信じてくれますね…あ、いや全然有難いんですけど」

噂の出どころがノアちゃんだとしても、それが六年経由だとしたら下級生は信じてしまう恐れがある。
知らない女が言ったことより六年生が言ったことのが信憑性あるもんなフツウ。
再び顔を見合わせた豆腐小僧とたけざえもん。

「…そりゃあ、孫兵の手伝いをしてくれた和花さんは噂みたいな悪い人とは思えないですし」
「嘘つくような人にも思えないですから」
「お…おお…」

な、なんだこいつら…いい子か!
裏のないような明るい笑顔で答えられて感激してしまった。

「…なんか、ありがとう」

そうお礼を言うと、2人とも笑ってくれた。

なんや、いい子達やないか。
さっきはポンコツか!とか思ってごめん。

…そう、内心気を緩めた時だった。

「あっ、いたいたー!兵助ぇ、八左ヱ門〜!」

聞いたことのある女の子の声が飛んできた。

「(…女の、子だと?)」

くのたまじゃありえない、忍たまを馴れ馴れしく名前呼びするこの感じ。
背中に汗が流れるのを感じる。
…なんかやばい気がするね☆




つづく