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  初遭遇である


トリップした当初に池にはまって全身びしょ濡れになり、風邪でもひくんじゃないかと思っていたが思いのほか元気だった。
新野先生が煎じてくださった風邪薬ももちろん良かったのだけど、やっぱり若返った影響なんだろうね!
いつもなら少し体冷やすだけでどこかしら悪くなるってのにそれがない若い体。
すばらしいよね!

「(まあ、昨日思いもよらぬ来客のせいで1日中頭痛かったけどな…!)」

今日も医務室横の部屋にいる私は昨日を思い返し再び頭が痛くなるのを感じる。

極力人に関わらないようにと思ってたのにまさか生徒側からやって来るとは思わなんだ。
しかも五年。
最後は笑ってたけど「敵情視察」とはっきり言ってたしな…。
話したからって味方だとは思わないからな!
それにいつ天井裏にいるか分からないからうかうか気も抜けない。
こっちは怪我人だってのによぉ!
ほんと、この部屋はもっと忍者対策した方がいいと思う!
忍術学園で忍者対策ってのもおかしいと思うけど。

…と思っていたら扉が開かれ新野先生が顔を覗かせた。

「調子は如何ですか?」
「あ、お、お陰様で調子いいです、ありがとうございます」
「それは良かった。くれぐれも無理はしないように」

分かりましたとは答えておくが、実際は無理ができる程の自由がないのが現実なんだよな!

「今から薬草を取りに出ますので、何かあったら先生方を呼んでください。もし医務室に人が来てもお気になさらず」
「あ、はい分かりました」
「それでは」
「はい」

最後に頭を下げて新野先生は部屋から出て行かれた。

「はあ…さてと…」

また静かになった部屋で机に向かう。
土井先生が持ってきてくれた書簡で勉強を始めてはいるがいかんせん文字が読めない。
一年生が使う文字勉強用の本を借りたがそれすら分からないとか。
ちょっと悲しくなるけど早く外へ出て仕事を探すためだと言い聞かせ、勉強にとりかかった。


「(…うん?)」

あれからどれくらい経っただろうか。
難し過ぎる書簡とにらめっこをしていたら、外から騒がしい声が聞こえてきた。
がやがやと、2、3人どころじゃない人数のようだ。

うるっせーな勉強出来ねーじゃねーかと内心で悪態をつく。
口には出さないよ?
チキンだからね!

とか何とか思っていたら、声の主たちが誰か判別つくくらい近づいて来ていた。
恐らく医務室に来たようだ。

「馬鹿小平太、だからいけどんアタックは打つなと言っただろう」
「なはは!すまんすまん!」

「(ゲッ…あ、あの声は…!)」

聞こえてきた声に動きが止まる。
今の声、聞き間違いでなければサラスト立花仙蔵と暴君七松小平太ではないか…!?
ハイ六年来ましたヤバイですねー!

読んでた本を放って布団にもぐりこむ。
医務室に用があるみたいだけど、下手してこっちに来たら地獄だ!

「機嫌は良くなったか?望愛」
「うん。ごめんねみんな」

「(ん?女の子の声…?)」

食満留三郎らしき声が聞こえたあと、聞き慣れない声も聞こえた。
ノア、なんて名前の子くのたまに居ない気がするし…まずそんなハイカラな名前、この時代にあるのか?
それ以前にくのたまが忍たまと一緒にいるとかほぼ無いし。

と、いうことは…。

「(まさかの天女様、ってことですか…!)」

初遭遇である。
いや、まだ会ってないけど!
というか機嫌良くなったかって、何があったんだ?

私が内心バクバクしていると、ガラッと医務室の扉が開いた音が聞こえてきた。

「何だ、新野先生はいらっしゃらないのか」
「そうみたいだねー」
「伊作、保健委員なのに何も聞いてないのか?」
「ごめん、最近委員の仕事してないから…」
「なら仕方あるまい」

潮江文次郎の声に続き善法寺伊作の声もする。
つーか上級生がカスというのは聞いていたけど、やはり委員会まで影響が出てるようだ。
仕方なくねーよ仕事しろよ!

「保健の先生、いないんだね…」
「……もそ」
「え?なに、長次?」
「…心配そうな顔をするな」
「えへへー、ありがと!」
「なっ!長次お前!何望愛の頭撫でてんだ!」
「ま、まあまあ!留三郎落ち着いて」

そして最後に中在家長次の声も。
はーい六年揃っちゃいましたねクソがッッ!
私に存在を知らせるかのように皆さん話してくれましたね!

というか六年全員+天女様って!
死亡フラグびんびんじゃないですかーやだー!

「(というか、何だろう。夢小説ばりなちやほやっぷりだな!)」

声だけしか分からないけど、えっらい可愛い声してるもんな天女様。
たぶん見た目もえっらい可愛いんだろうな。想像だけど。

「とにかく、早く手当しないと。望愛、ケガは大丈夫?」
「うん、ちょっとびっくりしただけ!小平太すごかったよー。離れて見てたのにこっちまで飛んでくるんだもん」
「当然だ!」
「威張るな」

そして棚を開ける音がする。
恐らく薬か包帯かを探しているんだろう。

聞く限りだと、七松小平太のいけどんアタックに巻き込まれ怪我した天女様を医務室に連れて来たみたいだ。
だからって六年が揃ってくるかね。
ああ、みんな天女様が好きだから心配して来てるのか。
三郎いわく、毒牙にやられたって感じ?
でも天女様は話してる所を聞いた感じ悪い子じゃないみたいだし…。
話し方とか声を聞いてると、可愛いしほわほわしたザ女の子!って感じがする。
そりゃあ皆がほだされるのも仕方ないね。

「…はい、終わったよ」
「わ、ありがと伊作!」
「もう無理はするなよ」
「無理なんかしてないよー、でもありがとね、仙蔵」

どうやら手当は終わったらしい。
終わったんならとっとと帰って欲しい。
なにが楽しくて壁一枚隔てて逆ハー状況を聞いてなきゃいけないんだ!
帰れ帰れ!

わちゃわちゃと話しながら医務室の扉を開け、全員が出る音がした。
ああ、やっと帰るのか…。
とか思って布団から出ようとした矢先。

「あ、ねえねえ。医務室の隣に新しい天女の子が来たってホント?」
「(え?ちょ、嘘だろ)」

天女様がいきなり恐ろしい話題を出した。

「ああ、そう言えばそんな話を聞いた気がする!」
「…怪我をしているとかで、この部屋で養生しているらしい」
「そうなんだ!会ってみたいなって思ってたんだよねー」

なん…だと…!?

会ってみたいって、私と!?
遠慮してください!
放っといてください!!!

…そんな私の願いも虚しく、私の部屋の扉が勢いよく開かれる音が聞こえた。

六年生+天女様VS私。
勝てる気しねーなこれ!




つづく