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  ぐうの音も出ない


怪我が治るまでは忍術学園に居ろと言って真っ直ぐ見て来る土井先生とエンジェルな乱太郎きり丸しんべヱ。

そんな見られても命が関わるから居たくないんだよ!
なんとか学園から脱する方法はないか…と思案していたら、急にコロコロと目の前に何かが転がってきた。

「…え?」

なにこれ?
と思うより早くボワン!と目の前が真っ白になる。

「ギャアっ!?」
「うわぁ!」
「げほっ、ごほっ!」

土井先生や乱太郎たちの驚いた声が聞こえる。
け、煙い、煙いよー!
部屋全体が煙に包まれ視界が真っ白になった。

…一通りむせ終わりようやくあたりの煙が引く。

「その件はワシが提案した」
「え?」

煙が捌けたあとに立っていたのは学園長先生だった。
や、やっぱりこういう登場の仕方なのね…!

「が、学園長先生!この様な登場の仕方は控えて頂きたいのですが!」
「何をしようがワシの勝手じゃー」

土井先生が言うもつーんとそっぽを向く学園長先生。
子供かい!

「…して、話を戻そう」
「は、ハイ」

一転、急に真面目な顔でこっちを見るから反射的に姿勢を正してしまう。

「ワシはこの学園の学園長、大川平次渦正じゃ」
「は、はい」
「話は乱太郎きり丸しんベヱから聞いておるが、先ず確認しておく。お主は何故か裏山の池の中から現れたと聞いたが、『へいせい』から来たのじゃな?」
「は、はい…そうです」

私が頷くと学園長先生もうむ、と頷く。

「…それと河童の類だと3人の前で言ったらしいが、お主は人間で違いないな?」
「うぇっ!?い、いやもちろん」

そ、そこを言っちゃったんだ。
そこ拾っちゃったんだ!
3人の方を見ると、
「いやぁ…あそこの池、河童が出るって噂を聞いたことがあったし…」
「もしかしたらそうなのかなーって」
と答えおった。
まじですかい。

「い、いやあれは勢いで言っただけだからね!?」

あの時は妖怪とか河童でも構わない!とか思ったけどやっぱそんなことないよね。
私ニンゲンですし!

「所で、名は何という」
「え?あ、拾石和花です…」
「成程、和花じゃな。…では和花」
「は、はい」
「先程も申した様に、お主をこの学園にしばらく置く提案をしたのはワシじゃ。理由はその土井先生が言った通り。そんな怪我を負ってまで生徒を守った和花を追い出すわけにはいかん」
「で、でも…」
「だからと言ってずっと置くわけにもいかんがの。その怪我が治るまでの間じゃ」

まだ動くのは辛いじゃろう、と言われる。
確かに動く度に痛い気もするけど、学園に居たらこのケガよりひどい目に合う気がする…。

「それに加え、治るまでの間は学園内での交流は最小限にすること。それを守りさえすれば、ここに居っても構わん」
「いや…それは理解しているつもりで…。でも、やっぱり私がここに居たら邪魔じゃ…」

そう言うと、学園長先生は目をすっと細くさせた。

「では学園を出たとして、お主はどこで何をする?」
「え?いや…それは…ど、どこかの村はずれにでも言って仕事を見つける…とか…」
「お主はこの時代の何が分かる?読み書きは出来るのか?金の勘定が出来るのか?」
「う」

そう言われるとぐうの音も出ない。
この時代のこと何も知らないし。
あ、これじゃあ仕事も探せないわ…!

「どうせ傷を負っておる間は仕事も出来ん。ならば学園に居てその間、読み書きや仕事のことを学べば良い」
「……」

学園長先生が正論を仰られている…!
返答出来ずにいると大きく頷く学園長先生。

「結論は出たようじゃな」
「うぅ…すみません…出来るだけ早く治し出て行きますので…」

肩を落として諦める。
そう言うと学園長先生は満足げに笑った。

「ならば、医務室の隣にお主の部屋を設けよう。そこでしばらく過ごすが良い」
「え、そんな…」

悪いのに、と言おうとするもなんとなく本心が見えた。
私のためだけじゃない、この学園のためでもある。
医務室に居座られたら自ずと生徒と顔を合わせることになってしまう。
それは避けたいだろうし、部屋を与えて出ないようにすれば被害はないと思ったからだろう。
正しい判断ですな!

「…すみません、有難うございます」

ここは拒まずに頭を下げる。

「学びたければ書物も好きなだけ読むといい。ここは学校じゃ、教えてくれる先生はごまんといる」
「すみません…」

出来れば外から部屋に入れる隙を無くして下さると最高なんですけどね。
どうしよう、部屋で寝てたらいきなり天井から床下から手裏剣やら苦無やらが飛んできたら。
おちおち寝れもしねえよ!

「話は片が付いたの。…詳しい話はまた後程。もう休むが良い」
「…分かりました…何から何まですみません…ありがとうございます…」

私がそういうと学園長先生は頷いて部屋をあとにした。
「では、私たちもこれで」と言い土井先生も立ち上がる。
乱太郎きり丸しんベヱを促し部屋を出て行った。
扉がしまる間際、3人がぺこりと頭を下げたのが印象的だった。



「……」

ひとり残された部屋で。

「……う、うう」

頭を抱えて丸くなる。
勢いで、勢いで話が進んじゃったけど。
私、忍術学園の中で過ごすことになってしまった…!
天女様がいて、治安がわやわやなこの忍術学園で!
いつ殺されるか分かったもんじゃないこの忍術学園で!!
やっべえ震えが止まらない!

…よし、決めた。
数日でこのケガ治してやる!
治して即座に学園を飛び出してやる!

そんな野心を胸に、私の忍術学園生活は幕を開けた。




つづく