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ごく稀だ、いつもじゃない。ただ本当にいきなり寂しくなるんだ 1人でいるからとか 側に誰もいないからではなく、あいつでないと埋められない何かなんだと思う。でもそういう時に限ってあいつはいない


「風呂場は電気 きれてたしいねぇよなあ」

まだまともに探してすらないのにため息が出そうだ 駄目だ思ったより重症かもしれない 早いとこ探し出さないとやばい、俺が

「キッチン 行くか」

燭台か堀川あたりがいる気がする この時間は明日の飯の下準備をしているはずだ






「あれ どうしたんだい 雅人くん」

キッチンの入り口から顔を覗かせると思った通り燭台がいた

「なんでも、ない」

見回してみても燭台くらいしかいなかった 正直あいつを探してるって言うのが癪で 言うに言えない

「彼なら、縁側で月見だよ」
「俺は何も言ってないだろ」
「雅人くんってわかりやすいよね」

クスクスと笑いながら言う燭台

「お前のそういうところ俺は嫌い」

ははっ主に嫌われちゃったら刀として終わりかな?なんて冗談めかして言う燭台。俺の探し物をいつも見つけれくれるのはこいつだ、それが凄く悔しい お見通しなこともそれをなんともなく言ってのけるのも。

「ありがと、行ってくる」
「いってらっしゃい」

縁側で月見って 自分の目の中にあるもの見て楽しいのかあいつ






「今頃雅人が捜してるんじゃないのか」
「そういうのもいいと思わないか」

「はは これは驚いた!確かに そうかもしれんがもし雅人が捜してなかったら三日月 お前どうするつもりだ?」
「ふむ それならば俺がみやびにとってその程度の存在だったというまでだ」


「自信があるのか」
「理解してるだけだ ん、そら来た」

俺の後ろを見ながら言う三日月 その視線を辿ってみると俺たちの主である雅人が柱に寄りかかりこちらを 、いや三日月を睨んでいた

「おいじじい どこ行ってたんだよ」
「そろそろだと思っていたぞ みやび」

「ん 鶴丸といたのか」
「ああ 一緒にどうだと月見に誘われてな」

ちらりと俺を見て言うとまた三日月に視線を戻した

「戻るぞ」
「いや 今日はやけに急かすのだなぁ
どうかしたのか みやび」

「 はやくしろ 三日月」

柱から離れ三日月の元へ歩き、手を差し伸べる雅人 と雅人の行動に驚き目を瞬かせながらもくすくすと笑う三日月 そしてそっと雅人の手を取った

「 あい わかった
帰るか雅人」

「ん」

繋がった手をぐっと引っ張り三日月を強引に立たせる雅人 その瞳には俺はうつっていなかった

「では またな鶴丸」
「鶴丸おやすみ」
「ああ おやすみ」

そう一言だけ言うと足早に去っていく二人 結局雅人は


「俺のことをほとんど見なかったなぁ
これはこれは 、悔しいもんだ なあ燭台」

「あんなの見せつけられたら
ほんとに勝ち目がないって思うよね」

二人が去った方とは反対側から姿を現した燭台切光忠

「競える相手でもないかもなってね
こういった驚きは嬉しくないな」

「驚きっていうのかい こういうのは」


いつまでも視線を外すことができない二人が去っていった縁側 見つめ続けても何もないはずなのに、目に焼きつく二人の背中 どうやっても離れようがない。強引に視線を外し天を仰いでみたが、そこには後悔しかなかった。

「そうか、今夜は三日月 か」

「ほら 体が冷めないうちに
僕らも床につこう」





(とっくの昔からわかってたことだが)
(体感すると辛いものだな)





20150314*



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